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Paul McCartney & Wings「Back to the Egg」(1979)

今回ご紹介するウィングスのラストアルバム、どれだけの方が認識されているでしょうか(笑)。かく言う私も全く、ホントに存在すら忘れるくらいにスルーしておりました。この1979年って年が微妙だからなんでしょうか。ディスコブームから80年代へ、特に英国ミュージック(ニューロマンティック、NWOBHM等)がブームとなる前夜、ポールの音楽も中途半端なのでは…と勝手な先入観があったので。でもジックリ聴いてみて、結構新鮮な驚きでした。

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ビートルズのメンバーで誰が一番好きか、と聞かれれば、私は断然ポール。彼のメロディアスな曲(例えばI WillとかMary Had A Little Lambとか)も好きですが、やっぱりロックするポール、シャウトするポールが大好き。特にウィングスでは007のテーマとか、Rock Show、Jet…。そして本作は「原点回帰」、ロックするポールが蘇っております
プロデュースはクリス・トーマス。いかにも彼らしいプロデュースワーク。ちなみにクリスと不倫関係に陥ったのがサディスティックス・ミカ・バンドのミカ。ミカは1980年の(あまり思い出したくない)ポールの麻薬所持事件の際に、ウィングスと一緒に来日しておりました。

本作の最初のシングルが②「Getting Closer」。これが実にカッコいいヘビーでストレートなロック。いや~、この1979年にこんなカッコいいロックをやっていたんですね~。なんでウィングス、自然消滅しちゃったんでしょう。

上の映像、音からお分かりのように、新生ウィングスは相当バンドサウンドを意識していたような気がします。本作では新たにローレンス・ジューバー(G)、スティーヴ・ホリー(Ds)を迎え、ポール、リンダ、デニー・レインの布陣で臨んでます。
ここでお気付きの方もいらっしゃると思いますが、スティーブ・ホリー…、当時、英国の著名なスタジオミュージシャンで、あのベストヒットUSAのテーマソングで有名なVapour Trailsでドラムを叩いていた、あのスティーブなんですね(Vapour Trailsってウエストコースト系でなく、英国のバンドです)。

本作中、唯一のデニー・レイン作の楽曲が⑤「Again and Again and Again」。このイントロ、一瞬CCRバージョンのプラウド・メアリーに似てます。スワンプ系の楽曲かと思ったら、そうでもないんですが。デニーは60年代、ムーディー・ブルースで活躍した人物で、ウィングス結成当時からのメンバー。

地味なんですが意外とお気に入りのナンバーが⑦「Arrow Through Me」。こんな地味なナンバーがシングルカットされていたんですね。当時、日本で流行っていたAOR系の音。フェンダー系の優しいエレピの音が心地いいです。

恐らく100%の方々が、本作の目玉は⑧「Rockestra Theme」と⑬「So Glad to See You Here」と答えるでしょうね。1979年、カンボジア難民救済コンサートにて披露された楽曲が「Rockestra Theme」。この曲と同時にレコーディングされたナンバーが「So Glad to See You Here」なんですね。
この2曲レコーディング、及びコンサートに招聘されたミュージシャンがピート・タウンゼントデヴィッド・ギルモアジョン・ポール・ジョーンズロニー・レインゲイリー・ブルッカ―ケニー・ジョーンズジョン・ボーナム(!)…etc. 
ウィングスのメンバーやホーン隊も含めて総勢22名の構成だったとか。ケニー・ジョーンズとジョン・ボーナム、そしてスティーヴ・ホリーのトリプルドラムって、スゴイですよね~。貴重な映像をアップしておきます。2曲共、ストレートなロックです。誰が誰なのか、探すのも一考かと。(上の映像ではジョン・ボーナムの姿が見当たりません。左上で叩いているのがジョンでしょうか。それにしてもなぜジョンを映さないのでしょうかね。)

本作はストレートなロックアルバム…と言いながら、アルバムエンディングの曲は実に洒落てます。それが⑭「Baby's Request」。これが40年代ジャズ風なスタンダード・ナンバー風の味付け。いいんですよね、コレが。ポールは余程この曲が気に入っていたのか、後に本作をリメイクします。

聴き込めば聴き込むほど味の出てくるアルバムが本作。ご紹介出来なかった他の曲も、結構良かったりします。本作のリマスター盤にはボートラには「Wonderful Christmastime」等が収録されてます。今では超有名なクリスマスソングとなりました。単純なメロディの中にポールの非凡な能力を感じさせるナンバー。全く時期外れで恐縮ですが、そちらもアップしておきます(苦笑)。


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