Peter Allen「I Could Have Been a Sailor」(1979)
まだまだ暑い日がずっと続きそうですね…。
暑さを吹き飛ばす意味でのハードロック、爽やかなフュージョン等々もいいですが、ここは本命のAORをチョイス。本格的なロックファンからは総スカンを喰らいそうなピーター・アレンを採り上げます。
ピーター・アレンは有能なシンガー・ソングライターで、作曲家としても著名な方。キャロル・ベイヤー・セイガーとのコラボ作品は特に有名で、中でもクリストファー・クロスの「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」は大ヒットしました。この曲も実はクリストファー・クロス、バート・バカラック、キャロル・ベイヤー・セイガーと共にピーターが作家陣に名を連ねていたんですよね。あと日本でも有名なところでは、竹内まりやの「Fly Away」も、もともとは彼が歌った曲でした。個人的に彼が作る楽曲すべてが大好きですなんですよね。
ピーターは1992年、エイズによる合併症のために亡くなっておりますが、後に彼の生涯を描いたミュージカル「The Boy From Oz」が世界各地で上演。日本でもV6の坂本昌行がピーター役を演じ、大ヒットしております。このミュージカルでもピーターの楽曲が流れておりましたので、意外と皆さん知っている曲もあるかもしれませんね。
本作はピーター・アレンの5枚目のスタジオ・アルバムで、珠玉の10曲が収録されております。
まずはオープニング、かつアルバムタイトルトラックの①「I Could Have Been a Sailor」。安定した生活を選んだ男が、冒険をしていたも良かったのかもしれない…と夢想する歌詞、そしてそれを想起させるようなジャケットが素晴らしい。立派な部屋から海を見ながら佇むピーター…、これは彼自身の心からの言葉かもしれません。人生を半ばまで過ぎ、そう感じる方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
仰々しいアレンジですがメロディも素晴らしい。印象深い骨太なベースはウィル・リー。ドラムはリック・マロッタ。ピアノはピーター自身。デヴィッド・スピノザ(G)、リチャード・ティー(Key)、ブルース・ロバーツ(Cho)と豪華布陣。
当時流行っていたディスコサウンドを取り入れた②「Don't Wish Too Hard」。多分こういう曲はロック・ファンからは敬遠されると思われますが、私的には大好きな1曲。とくにこの軽快なメロディにピッタリなグルーヴィーなベースがカッコいい。こちらはエイブラハム・ラボリエムのプレイ。ドラムはエド・グリーン。間奏のリズム・プレイも心躍らされます。こちらはミュージカルでも使われてましたし、キャロル・ベイヤー・セイガーもカバーしておりました。
素晴らしいバラードの③「Two Boys」。
こちらは本作のプロデューサーでもあるマーヴィン・ハムリッシュのピアノをバックに、ピーターが朗々と歌い上げる映像がありました。
スタジオ録音では「I Could Have Been a Sailor」と同じバックメンバーで収録されたもので、こちらもいいのですが、アップした映像もいいんですよね。マーヴィンは映画音楽の大家ですが、ジャズピアニスト的な要素もお持ちの方なんですね。
本作中の白眉が④「Angels With Dirty Faces」。
私はこのアルバムは最初、クレジットを見ずに聴いていたのですが、この曲のギターはギターソロですぐに分かりました。この特徴的なトーン、スティーリー・ダンの「Peg」のギターソロに似ていませんか?
そう、やっぱりジェイ・グレイドンでした。曲の途中からジェイらしいギターが登場し、以降、エンディングのソロまで、この曲はジェイのギターを聴かせるための1曲と捉えてます。曲が終わりそうになり、また始まるようなアレンジも素晴らしいし、この曲の歌詞も気になります。NYで恋をし、ブロードウェイで歌っていたけど、今はすべてを忘れてLAにいるといった内容なのでしょうか。曲名は昔の映画のタイトルだし、それがどう繋がるのか、よく分かりません。ピーター・アレンの詞って結構洒落ているものが多いだけに気になります。
ちなみにこのドラムはスティーヴ・シェイファーという方。本当はジェフ・ポーカロが叩くと、更に引き締まった演奏になったと想像します。
⑤「Don't Cry Out Loud」はメリサ・マンチェスターのカバーで有名ですね。こういうMOR的な楽曲は私もそれほど好きじゃないんですが、これはやっぱり曲がいい。途中、We Are The Worldのようなメロディが出てきますが、こちらが先ですからね。ちなみにこちらのバックの演奏は④と同じメンバーです。特にコーラスにジョーイ・スキャベリーがいることにビックリ。ジョーイは後にウィリアム・カット主演のTVドラマ「アメリカン・ヒーロー」のテーマソングを歌い、大ヒットを記録した方ですね。
気付いたら1曲目から5曲目まで、続けてご紹介しておりました。すみません。ということで最後にエンディングの⑩「Paris at 21」をご紹介しておきます。こちらはドラマチックな展開の7分近いナンバー。それでも曲の長さを感じさせないアレンジ、特に中盤以降の盛り上がりは圧巻。ピーター・アレンのセンスが発揮されたナンバーです。
最後に私の大好きな「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」を、ピーターとクリストファー・クロスのデュエットでどうぞ。この映像を見る限り、やはりこの曲はピーター主導で作られたんじゃないかなと思いました。やっぱりいい曲ですし、ピーター・アレンは優れたソングライターでした。
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