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Laura Allan「Laura Allan」(1978)

AOR系アーチストは結構聴いてますが、この「裏ヴァレリー・カーター」と呼ばれているローラ・アランはすっかり聴き洩れておりました。恐らくこのジャケットのせいかと思うのですが、どうも聴く気が失せてしまうジャケットです。ジャケットがもっとセンスのあるものであれば、このアルバム、並びにローラ・アランの知名度は相当上がっていたかと思います。なぜならこのアルバム、かなり中身も素晴らしいからです。

ローラ・アランは1970年にデヴィッド・クロスビーと出会い、彼に認められ、クロスビーのファーストソロ「If I Could Only Remember My Name」にチターで参加してます。そうです、ローラはチターやダルシマー、カリンバといった民族楽器を操る方でもあったんですよね。
そんなローラが遅ればせながら、1978年に発表したデビューアルバムが本作です。あ、しかも当時の邦題が「LAギャル」(苦笑)。LAはロスとローラのイニシャルのダブルミーニングです。

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プロデュースはチャック・プロトキン。ブルース・スプリングスティーンとの仕事でも有名なプロデューサーですね。参加ミュージシャンがかなり豪華です。
ワディ・ワクテル(G)、ボブ・クラウブ/エイブラハム・ラボリエル/リー・スカラー/チャック・レイニー(B)、ジム・ケルトナー/ジェフ・ポーカロ/リック・マロッタ(Ds)、ジェイ・ウィンディング/ビル・エリオット/ビル・ペイン(kyd)、アーニー・ワッツ(sax)、ビル・チャンプリン/ウェンディ・ウォルドマン/デヴィッド・ラズリー/ヴァレリー・カーター(Vo)等・・・。メンツを見てもお分かりの通りのサウンド。同年に発表されたヴァレリー・カーターの「Wild Child」のようなサウンドですね。

このアルバム、1曲目から引き込まれます。その魅惑のオープニングナンバーが①「Opening Up To You」。

自身が弾くダルシマーがフォーキーですが、バックの演奏がクールでメロウ。そのバランスが非常に心地いいのです。このサウンド、どことなくこれも同年に発表された(恐らく誰も知らないと思いますが)デイン・ドナヒューの「Dane Donohue」に似ています。そう思うのは私だけかもしれませんが。メロウなエレピはジェイ・ウィンディングのプレイ。確かデインの楽曲も彼が弾いています。コーラスにはビル・チャンプリンも参加。実はビルとローラは、ビルが率いていたバンド、サンズ・オブ・チャンプリンで、楽曲を共作してます。それが「Hold On」って曲。これがまた結構いい曲なんですよね。余談ついでにYouTubeのURLを貼っておきます。

こちらも自身が弾くカリンバの音色が美しい②「Slip and slide」。
これ、ローラのヴォーカルが非常に美しいと思いませんか。透き通るようなカリンバの音色とローラ、そしてコーラスのヴァレリー・カーターのヴォーカルが溜息が出るほど美しい。

メロウなバラードの③「Come As You Are」。
バックの演奏がカチッとしているのはジェフ・ポーカロが叩いているから。ベースはチャック・レイニーウェンディ・ウォルドマンがコーラスで参加してます。こちらもローラ自身の作品。素晴らしい作品ですよね。才能溢れる方だったのだろうと思います。

ゴスペルタッチな⑤「One Way Ticket」はプロデューサーのチャック・プロトキンの作品。
この迫力あるリズム隊は当然③と同様にジェフ&チャックのコンビ。コーラスはビル・チャンプリン。ギターはワディ・ワクテル。このアルバムは曲ごとにいろいろなミュージシャンが起用されてますが、ギターはワディのみが参加。この曲でも渋いギターを披露してます。それにしてもローラはいろいろな楽曲を歌いこなしますね。こうしたパンチのある楽曲も上手い!尚、この曲と次曲(カバー)以外はすべてローラの作品。

この曲のみカバーですが、実にロックしている⑥「So Fine」。
原曲はThe FiestasというR&Bグループの1959年のヒット曲。ロギンス&メッシーナもこの曲を忠実にカバーしてますが、ローラは全く別の曲のようにタイトなロックにアレンジしてます。ギターを中心に組み立てられているので、ワディがかっこよく料理したのでしょうか。

せっかくなので最後はフォーキー&メロウな⑧「Promises」を。
メロディとローラの美しい声が心に沁みますね。マンドリンはデヴィッド・グリスマン。ハーモニカはトミー・モーガン

ローラ・アランって他の作品はあまりにも知られておりません。実はそれには理由があって、1980年に発表されたセカンド「Reflections」はニューエイジミュージックだからです。今でいうアンビエント・ミュージック。上の「Promises」みたいな楽曲が彼女の持ち味かと思ったら、実は他にもやりたい音楽があったんですね。その振れ幅があまりにも大きく、誰も付いていけなかったんじゃないでしょうかね。

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ジャケが環境音楽風です。ちなみに「Reflections」は全4曲!せっかくなので1曲聴いて驚いてください(笑)。ローラはチターを弾いてます。

さすがの私もこのアルバム、通して聴くとこは出来ませんでした(苦笑)。ローラは民族楽器の素晴らしさを表現したかったのでしょうね。その後、1996年にファーストの路線に戻った「Hold On Your Dreams」を発表。2000年にはロック調の「Telegraph」を発表しますが、2008年に55歳という若さで癌で亡くなられております。ヴァレリー・カーター同様に、才能豊かな方だっただけに寡作で早逝されてしまったことが悔やまれますね。

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