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Rod Stewart「Atlantic Crossing」(1975)

ロッド・スチュアートが骨太ロッカーとして、一番光り輝いていた時期の素晴らしい1枚。
「Atlantic Crossing」の題名通り、ジャケはロッドが大西洋を一跨ぎする洒落たイラスト。ビルはニューヨークでしょうか?
英国ロッカーのロッドはそれまでマーキュリーレコードから5枚のソロを発表しておりましたが、本作ではプロデューサーにトム・ダウドを迎え、メンフィス・サウンドを大胆に取り入れたサウンドを展開します。
メンフィスサウンドといえばブッカー・T.&ザ・MG'S。メンバーだったスティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダン、アル・ジャクソンがこのアルバムには参加しております。その面子とロッドという組み合わせを聞いただけでも、このアルバムの素晴らしさが理解できると思います。

このアルバム、A面が「Fast Harf」、B面が「Slow Half」と題され、両サイドのイメージを分けております。

その「Fast Half」のトップを飾るのが①「Three Time Loser」。
ロッドのオリジナル曲ですが、ねちっこいギターはかなり土臭い香りがします。ドラムもドシッとした感じがいいですね。このアルバムのドラマーはアル・ジャクソン、マッスル・ショールズのロジャー・ホーキンス、エルトン・ジョン・バンドのナイジェル・オルソン等が参加してます。ドラマーだけでもスゴイメンバーが参加しているんですね。

②「Alright for an Hour」はロッドとジェシ・エド・デイヴィスとの共作。
ロッドとジェシの組み合わせというのも面白いですね。当然このギターはジェシでしょう。ジェシといえばスワンプ系を代表するギタリスト。彼のソロアルバム「Ululu」も素晴らしい内容です。ここではちょっとレゲエ感覚も取り入れたようなディープ感が素晴らしいです。

ロッドのオリジナル③「All in the Name of Rock 'n' Roll」、これがまた素晴らしい。
実に豪快なメンフィスソウルのロックンロールです。間奏から例のメンフィスホーンズが入ってくるのですが、いや~、実に豪快。このメンフィス感覚のロックがロッドはやりたかったのでしょうね。

そして一転「Slow Half」へ。当時のロッドはこっちを売りにしていたかもしれません。
⑥「I Don't Want to Talk About It」はニール・ヤングのバンドに在籍していたDanny Whittenのペンによるもの。
Dannyは1972年に29歳の若さでドラック過により亡くなってしまいました。そういった背景を踏まえてこの曲を聴くと非常に味わいがあります。アップしたライヴ映像では、観客と大合唱するシーンが見られますが、この曲、当時から人気の高い1曲だったのでしょうね。

⑧「This Old Heart of Mine (Is Weak for You)」のイントロを聞いたとき、どこかで聴いたことがあるなあと思ったら、ロッド自身が1989年に再びカバーしてヒットさせた曲でした。しかもこの1989年のPVを見て初めて気付いたのですが、このデュエットしている人物こそがアイズレー・ブラザーズのヴォーカリスト、Ronald Isleyではないですか!!! 
もともとこの曲は1966年のアイズレーのヒット曲なのですが、それをロッドが本作でカバー。そして数十年後にオリジナルアーチストとデュエットなんて・・・。
ちなみに作者はモータウンのソングライターチームとして御馴染み、Holland-Dozier-Hollandですね。

エンディングトラックはあまりにも有名な⑩「Sailing」。
この曲の持つイメージとメンフィス系サウンドは180度違うように感じます。今でこそロッドのバラードというとこの曲が代表的ですが、このアルバムのなかのこの曲というのは、ちょっと浮いているような感じもしますね。①~⑨までうまく纏まっているので、この曲がシングルカットされるためのボーナストラックのような、そんな錯覚も覚えます。もちろん名曲ですが。

ロッドはこの後、これまた秀作のA Night on the Townを発表。さらに次作「Foot loose & Fancy free」とあわせて3枚で3部作と呼ぶ方もいらっしゃるようです。この当時のロッド、かっこよかった。

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