The Monkees「The Birds, the Bees & the Monkees」(1968)
忌野清志郎氏を追悼する意味で、モンキーズのカバーである「デイドリームビリーバー」が巷では流れることがよくあります。この曲が持つ普遍性を忌野清志郎氏はよく分かっていたんだなあと思います。
この原曲が発表されたのが1968年。実は私が生まれた年でもあります。つまり53年前(!)の作品なんですよね。そしてこの曲が収録されたアルバムが「The Birds, the Bees & the Monkees」。モンキーズ、通算5枚目のアルバムです。作られたバンド、モンキーズのことを聴かず嫌いである方も多いと思いますが、是非この素敵なアルバムを聴いて頂ければ幸いです。
1966年9月から全米で始まったTV番組モンキーズショーも、1968年3月には終了となり、プロモーション機能を失ったモンキーズの人気にも陰りが出始めてきます。このアルバムは、モンキーズにとって、初めてアルバムチャートのトップを逃した作品となってしまったのです。それでもこのアルバムの内容が素晴らしいものであることには変わりありませんが。
楽器の弾けないヴォーカルのディビー・ジョーンズがスティーヴ・ピッツと作った①「Dream World」は、ショーティ・ロジャースの甘いアレンジが冴え渡る佳曲。1曲目にこうした直球勝負のポップスが来るのは嬉しいですね。何気にベースが効いてます。ベースは名手Max Bennett。
カントリーロックの祖、マイク・ネスミスがサイケに挑戦した②「Auntie's Municipal Court」は骨太なモンキーズ流ロックですが、エンディングではサイケがかったサウンド処理が施されてます。ヴォーカルはマイクではなく、ミッキー・ドレンツ。前作でもサイケ的なマイクの楽曲をミッキーが歌ってました。こうした楽曲はミッキーの声が合いますね。ハリー・ニルソンがキーボードで参加。
キャロル・ベイヤー作の③「We Were Made For Each Other」も①と同様にデイビーの甘いヴォーカルが堪能できる素晴らしいバラードです。エンディングの転調部分なんか最高ですね。私はよくこの曲に合わせて歌ったものです。今でも諳んじて歌えます(笑)。当時、この曲を聴くためにこのLPを引っ張り出してましたね。
ドラムはアール・パーマー、ギターにはジェームス・バートンが参加してます。なんて贅沢な組み合わせでしょう。
ある意味このアルバムはマイクの変わった一面が楽しめるアルバムです。②もそうですが、④「Tapioca Tundra」はマイク作のラテンフレーヴァーたっぷりのロックです。イントロのスローな展開、口笛のメロディ、ヴォーカルのイコラージュ、かなりマイクのセンスが反映された楽曲で、ノリのいい曲です。
私の所有していたLPは次の曲がこれまたマイクのジャズロック「Writing Wrongs」でしたが、正規盤は5曲目が「Daydream Believer」です。LPを聞きかじっていた頃、いつも不気味に聴こえる「Writing Wrongs」は飛ばし、B面に裏返しにしていたものです。
⑤「Daydream Believer」は今更何の説明も要らないでしょう。私個人の初めて買ったシングルレコードでもあります。以前この曲に関する記事を書いているので、エキサイトブログでご参照頂ければ幸いです。
このイントロ、背の低いデイビーらしい冒頭の台詞は以下の通り。
7A
What number is this, Chip?
"7A!!!"
O.K.,
Don't mean it,
Don't get excited, man,
It's 'cause I'm short, I know...
Chip、っていうのはプロデューサーのチップ・ダグラスのことで、この曲ではベースも弾いてます。マイクはギター、ピーターがピアノ。この曲のみメンバーが全員参加して録音しているんですね。出だしのピーターのピアノを聴いただけで、何かジーンと来ます。
当時私が大好きだった⑦「I'll Be Back up on My Feet」。サンバ調のリズムを取り入れた明るいポップス。デイビーの発声はクリアですが、ミッキーは早口で歌いづらいんですよね^^。中学時代にコレもよく歌ってましたが、全然曲についていけませんでした。
わざとモノラル、かつオールドスタイルのスクラッチを入れたりして、ノスタルジックな曲に仕上げている⑩「Magnolia Simms」。これもマイク作。彼のセンスは冴え渡ってますね。
本作にはもう1曲、シングルヒットした曲が収録されてます。それが⑪「Valleri」。初期モンキーズを支えたボイス&ハート作。楽曲もいかにも初期モンキーズの香り漂うポップス。このアルバムにはちょっと違和感のある楽曲です。個人的にはあまり好きではないのですが・・・。
冒頭のラテン的なギターソロ、モンキーズが日本に来日公演した際に、マイクが見事に弾いていたらしいです。作られたバンドのモンキーズですが、少なくともマイクとピーターはミュージシャンでしたからね。
さて本作、こうして見てみると、ピーターの出番がないんですよね。彼も何曲か、自作の曲を持ち寄ったらしいのですが採用には至らなかったらしいです。本作発表後、ピーターは脱退するのですが、こんな仕打ちをされてしまったら、それもしょうがないかなと思います。
ちなみにピーターですが、スティーヴン・スティルスやネッド・ドヒニー、果てはジミ・ヘンドリックスまで、幅広い交流がありました。モンキーズ脱退後のピーターはアサイラム前夜のコミュニティに入り浸っていたようですね。TVショーそのままの人柄だったのでしょう。また楽器の演奏能力もレベルは高かったと推察されます。
また本作はマイクの才能が光輝いてますね。カントリー色は薄れてますが、やっぱりマイクは偉大だと思います。「Daydream Believer」以外にも佳曲が収録されてますので、是非機会があれば聴いてみて下さい。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?