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Jefferson Airplane 「Surrealistic Pillow」 (1967)

このジャケット、結構有名ですよね。60年代名盤特集ではお馴染みの作品。でも私は今まで聴いたことがなく、そもそもジェファーソン・エアプレイン自体、本作に収録されているヒット曲くらいしか知らない。80年代をリアルタイムで過ごしていたものにとっては、このバンド、マーティ・バリンが在籍していたグループ、ジェファーソン・スターシップの前身のバンド、といったイメージがあると思います。そんなイメージで本作を聴いてみると、結構新たな発見があったりして、面白いです。

バンドはポップス寄りのマーティ・バリンとフォーク寄りのポール・カントナーを中心に結成。男性2人と女性1人の混成ヴォーカルと、そこにフォーク、R&B、ロックを寄せ集めたようなサウンドで、1966年にレコードデビューを果たします。
本作はデビュー翌年に発表されたセカンドアルバム。デビューアルバムではシグニー・トリー・アンダーソンが女性ヴォーカルを務めてましたが、子育てに専念するため脱退。後釜に同じライブハウスに出演していたグレート・ソサエティからグレイス・スリックを引き抜き、本作を制作します。

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このグレイスが、新たにバンドに変化をもたらします。彼女が持ち寄った曲は3曲。その内の2曲が②「Somebody To Love」と⑩「White Rabbit」で、この2曲がバンドのイメージを決定付けてしまいます。

②「Somebody To Love」は見事にシングルヒット作となります。しっかりヒッピーなサイケ感を盛り込みつつ、力強いロックな演奏、実はサビのメロディもキャッチーと、時代の流れを読んだヒット曲をいえるかもしれません。一度聴いたら忘れられないような楽曲です。

そして⑩「White Rabbit」。White Rabbitって麻薬の隠語らしいのですが、歌詞は「不思議の国のアリス」をモチーフとしたもので、楽曲自体も「Somebody To Love」よりサイケしてます。アップした映像も見事にサイケサイケで、実にスリリング! それにグレイス、凄みがありますよね。

それにしてもこのバンド、イメージ先行でじっくり聴くと、実はイメージとは違うバンドであることが分かってきます。アルバムトップの曲、①「She Has Funny Cars」はスペンサー・ドライデンのリズミカルで軽快なドラムソロから始まる曲。ヴォーカルが入る前のギターのリフは、どことなくモンキーズのデビュー曲「恋の終列車」を連想させます(時期的には合っているし)。バックの演奏は、恐らくこの当時のバンドの中でもかなり上手いと思います。しっかりした演奏、男女混合ヴォーカルの、この当時らしいロックナンバー。

意表を付かれたのが③「My Best Friend」。この作品はデビューアルバムでドラムを叩いていたスキップ・スペンスの作品。実にフォーキーで、これこそ男女混成コーラスが冴えていて、ママス&パパスっぽい。サイケなイメージでこの曲を聴くと、ジェファーソン・エアプレインの曲??って思ってしまいますね。当時のウエストコーストロックって、ジェファーソン・エアプレイン、ママス&パパス、グレイトフル・デッド、ドアーズなんかが活躍しており、当然ながら彼らの中でも交流はあっただろうなと思われます。

私が一番驚いたのは⑨「Embryonic Journey」って曲。なんとギターインストナンバーです。ヨーマ・カウコネンの楽曲、そしてプレイもヨーマのもの。昔から弾いていた曲らしく、プロデューサーが気に入り、急遽本作に収録されたらしい。ギターの響きが心地いい、美しい曲です(サイケとは無縁…)。

アップした曲だけ聴いてみても、サイケなジェファーソン・エアプレインだけが、彼らの魅力ではない…ということがご理解頂けるかと(知らなかったのは私だけかもしれませんが…(笑))。
ちなみに80年代にマーティ・バリンがソロで大ヒットを記録したAOR系ナンバーは日本人好みの泣きのメロディの楽曲ですね。


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