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John Hall「Action」(1970)

ジャクソン・ブラウンの来日公演、大好評のようでしたね。多くのブロガーさんがレポートされておりました。コロナ明け、外タレが多く来日するようになってきたので、これから徐々にこうしたレポートが増えていくことを期待しております。

さて、今回は以前から気になっていたアルバムのご紹介です。それはオーリアンズ結成前のジョン・ホールのデビューアルバム…。
ジョン・ホールというとオーリアンズのリーダーであり、その音楽イメージからカラッとしたロックを連想されると思います。但しそういうイメージで本作を聴くと、大いにガッカリされるかもしれません。当時はジョン・ホールはギタリストとして知られた存在でしたし、何と言ってもジャニス・ジョップリンの「Harf Moon」の作者として有名でした。
そんなジョンが満を持して発表したのが本作。正直、かなり幅広い音楽をやっており、纏まりに欠ける内容ではありますが、それぞれの曲はかなりクオリティが高い印象です。

プロデューサーはハーヴィー・ブルックス。ハーヴィーはマイルス・デイビスやジミ・ヘンドリックス、ボブ・ディラン等と共演してきた有名なベーシストで、もちろん本作でもベースを弾いてます。ドラムは後にオーリアンズのメンバーとなるウェルズ・ケリー。ポール・ハリス(Key)やジョン・セバスチャン(Harmonica)も参加しております。曲によってはバンド・サウンドが確立されているようなものもあり、この体験がジョンをオーリアンズ結成に向かわせたと思われます。

オープニングはそのバンド・サウンドが効いた①「Nu Toone」。
サイケ感覚すら感じさせるスリリングなサウンド。まさにジャニス・ジョップリンがやりそうなサウンドです。エッジの効いたギターにクールなオルガン、疾走するドラム、バンドアレンジも冴えてますね。間奏のギターソロからエンディングにかけてのバンドの疾走感、実にカッコいい。

もうひとつのジョンの顔であるグッドタイム・ミュージックな③「Where Would I Be」。
ラヴィン・スプーンフル、フィフス・アベニュー・バンド、これらの系譜に連なる音楽ですね。ここでのハーモニカはジョン・セバスチャン。本作には①のようなロック、あとにご紹介するブルース、そして本作のようなフォーキーな曲、どれもがジョン・ホールの個性です。

このアルバムの作品はジョンの自作曲中心ですが、なぜか3曲もトム・パチェーコという方の作品が収録されてます。トムはこの時代から活動していたSSWで、今も現役のようです。ジョンとの関係は分かりませんが、ジョンはトムの楽曲がよほど気に入っていたんでしょうね。その3曲の内の1曲が⑤「True Love」。ワルツ調のフォーキーな楽曲。カントリーとも呼べるかもしれません。こうした音楽は後のオーリアンズへの繋がりを感じさせます。

ジョンの速弾きが聞ける⑦「Action」。これもオープニングの「Nu Toone」に通じるナンバーですが、こちらの方がジョンがギターを弾きまくってます。特に間奏からの中盤、曲が一転するパートからのエンディングにかけては縦横無尽に弾きまくってます。ジョン・ホールってこんなにガンガンにギターを弾く人だったんだ…、今更ながらビックリ。ジョンがギターの名手であることは認識していたのですが、この曲を聞いて改めてそう感じた次第。それからこの曲のバンド・アレンジも素晴らしい。

本作には②「Look In My Eyes」や⑨「Park Lane Blues」といったブルースナンバーが収められてますが、その中でもインストナンバーの⑩「Scuffle」が秀逸。
これら3曲の作曲者はすべてジョン、ウェルズ、ハーヴィー、ポールの4人のクレジットです。バンドでリハしながら作り上げていったんでしょうね。かっちりしたバンドサウンドの上で、ジョンが伸びやかにギターを弾いております。英国のギタリストは速弾きが多いのに対して、米国のギタリストはいぶし銀的な技を披露するタイプが多いような気がします。ジョンは明らかに後者ですね。

ジョンの卓越したギタープレイが堪能出来る小品の⑪「Going To The Valley」。僅か1分強のギターインストです。流れるようなアルペジオのプレイ。メロディのいいし、こういう音楽って大好きなんですよね。

1972年2月、ジョンはオーリアンズを結成し、翌年にファーストアルバム「Orleans」を発表します。この作品とセカンドはヒットに至らなかったものの、アサイラムに移籍後、ようやく商業的にも成功を収めていきます。
そしてジョンは後に政治家に転身。WikiでJohn Hallを覗くと、ミュージシャンではなく、政治家として掲載されてますね。政治家を引退後、再び音楽活動を再開し、今もまだ現役。2021年に発表した新作も、相変わらずグッドタイム・ミュージックを聞かせてくれてます。

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