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Average White Band「Shine」(1980)

今回は、往年のファンからは邪道な作品と云われている名盤をご紹介します。

アヴェレイジ・ホワイト・バンド…、白人の本格的なファンクバンドとして有名ですね。「AWB」とか「Cut The Cake」とか、ソウルファンクの名盤の多いバンドです。そして今回ご紹介するアルバムは、AORの名盤としても紹介されることの多いアルバムです。ただし、プロデューサーにデヴィッド・フォスターを迎えたAOR色の濃いアルバムなんです。

デヴィッド・フォスターといえば、この当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの名プロデューサー。彼が携わった作品はフォスター色が全面に出てしまうくらい、サウンド・プロダクションにも影響してしまうプロデューサー。往年のソウルファンからすれば、商業的なアプローチをしてしまったことを残念に思ったと思いますが、AORって、その源流はソウルなわけだし、AWBがこの流れに乗るっていうのは、ごく自然なことかと思います。

私は根っからのAOR好きなので、本作の①~⑤の流れって大好きなんです。凄いパワーを秘めた曲の配置かと。まずは①「Our Time Has Come」からフォスター色に染まったAORナンバー。でもこの曲はメンバーのアラン・ゴリーとヘイミッシュ・スチュアートの共作。シーウィンド・ホーンズが加わったアレンジはフォスターならでは。トップナンバーに相応しい、アップテンポなナンバーです。

完全に「After The Love Is Gone」の流れを汲む②「For You, For Love」。
曲のテンポ、展開、ホーンアレンジ、どれもがEW&Fのアノ曲そっくり。こういうところがイヤだという方も多いかもしれません。でもAORファンからしたら、このテの楽曲すべてに弱いのです(苦笑)。いい曲ですよね~。メンバーのロジャー・ボールと、後にシカゴに加入したビル・チャンプリンの共作。予想通りなんですが、「After The Love Is Gone」はフォスター、ジェイ・グレイドン、そしてビル・チャンプリンの共作です。

ソウルクラシックにもなっている③「Let's Go Round Again」はアラン・ゴリー作。ちょっと時代遅れになりつつあったかもしれませんが、ディスコチューンです。

これまたソウルクラシックな④「What'cha Gonna Do for Me」は、この翌年、1981年にチャカ・カーンがヒットさせた楽曲。そしてAORファンならお馴染みのネッド・ドヒニーとヘイミッシュ・スチュアートとの共作。ネッドも結局はセルフカバーアルバムでこの曲を披露することになるのですが。
ここでのイントロのドラムフィル、スネアの絶妙なロールから入るプレイが実にカッコいい。AWBの結成当時のドラマーのロビー・マッキントッシュもいいドラマーでしたが、彼の急死後、加入したスティーヴ・フェローンがそれ以上に素晴らしいグルーヴ感を持ったドラマーでした。この曲でも彼のグルーヴ感が存分に発揮されてます。

そしてA面最後の⑤「Into The Night」は往年のAWBファンも納得する強烈なファンクチューン。ロジャー、アラン、ヘイミッシュ共作のインストです。ゴリゴリのベースと間奏のロジャーのサックスソロが素晴らしい。このテの音は当時の日本のフュージョンシーンでも流行りました。スクエアなんかも、こんな音、やってましたね。

アルバムタイトルトラックもご紹介しておきます。それがエンディングの⑨「Shine」。ネッドとアラン、ヘイミッシュの共作。こちらもフォスターのアレンジ色が濃いAORナンバー。
ネッド・ドヒニーって、本国アメリカでは自身のアルバムはそれほどヒットしなかったんですが、ウエストコースト系のアーチストにしては珍しくかなりのソウル好きでした。自身のセカンドとか幻のサードとか、かなりソウルフルな名盤。その裏には、AWBのようなソウルフルなバンドとの交流があったんですね。

ここまでご紹介して申し上げておくのを忘れましたが、AWBって英国のバンドなんですよね。本作なんかはデヴィッド・フォスターやネッド・ドヒニーとの交流が濃厚な作品なので、てっきりウェストコースト系のバンドかと思ったのですが。あとゴリゴリのファンクをやっていたEW&Fがフォスターと接近して「September」なんていうAORクラシックナンバーを生んだことと、本作でのAWBの進化は全くの偶然ではなく、世の流れだったんでしょうね。

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