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Boz Scaggs「Boz Scaggs」(1969)

21日、ボズ・スキャッグスの来日公演、東京ドームシティホールに参戦して来ました。ボズ自身、なんと22回目の来日公演。6月には80歳となるボズですから、これがもう最後の来日公演になるかなとの思い参戦致しました。

実際に見たボズは長身でとても姿勢が良く、ファルセットも効かせたソウルフルなヴォーカルは、とても79歳には見えず、驚きでした。そして予想通り演奏スタイルはブルースを基調とした大人の演奏で、このステージのハイライトはあとでご紹介する中盤で披露した「Loan Me a Dime」だったのではないかと感じました。
またジャージーでブルージーな演奏は、東京ドームシティホール(約3千人収容)のような小振りなホールにピッタリで、願わくばブルーノートみたいなところで聴いてみたかったとも、思いましたね(実は現地に行くまで東京ドームと勘違いしておりました)。

アンコールを交えたラスト5曲「Lido Shuffle」「What Can I Say」「Lowdown」「We're All Alone」「Breakdown Dead Ahead」まで圧巻のステージ。ウィリー・ウィークス&テディ・キャンベルのリズム隊も素晴らしかった(実はウィリーは軽井沢在住でしたね)。ボズは曲毎にギターを替えてましたが、唯一ギターを抱えずに歌った「We're All Alone」は絶品。あのソウルフルな声で歌われたら堪りません。「Slow Dancer」も良かったなあ。最後の「Breakdown Dead Ahead」では完全にハードロックなボズでした。

ちなみにこの日の観客の年齢層は私以上Boz未満といったところ。つまり私は若手の部類の属しておりました(笑)。予想通り私より年上の女性も多く、観客のノリも大人でした…。あと19日の初日公演は撮影規制が緩かったようですが、この日は非常に厳しい規制でした。なのでステージ上の写真は撮れず。

今回来日公演Xでポストされる方の多くは、こちらの正面玄関に貼ってあったポスターをアップされてましたね。

ということで今回は「Loan Me a Dime」を含む実質的なデビューアルバム「Boz Scaggs」をご紹介致します。

70年代末のAOR期から徐々にブルースへ原点回帰していっているボズですが、個人的には2013年発表の「Menphis」が結構好きだったりします。
もともとボズはメンフィス・ソウルに憧れ、この(実質的な)デビューアルバムをマッスル・ショールズで録音、アトランティックから発表されてます。AORが大好きだった当時は、私はこのアルバムが苦手で殆ど聴いたこともなかったのですが、「Menphis」を聴き込むにつれ、これは「Boz Scaggs」も味わい深いのでは…と思い、以降事ある毎にこちらも聴いております。

参加ミュージシャンはロジャー・ホーキンス(Ds)、デヴィッド・フッド(B)、バリー・ベケット(Key)、ジミー・ジョンソン(G)等々のマッスル・ショールズ組とデュアン・オールマン(G)。そう、あのデュアン・オールマンです。彼は本作発表当時はオールマン・ブラザーズ・バンドを結成しておりましたが、元々デュアンはマッスル・ショールズのセッション・ミュージシャンとして活動していた時期もあります。その流れで、この共演が実演したものと思われます。

まずは今回の来日公演で披露された楽曲からご紹介致します。それがFenton Robinsonが1967年に発表した⑧「Loan Me A Dime」という楽曲。
もともとボズのオリジナルとしてクレジットされていたものが、原作者から訴えられ、正式に原作者がクレジットされたもの。確かにオリジナルは2分30秒弱なのに、ボズのバージョンは12分30秒以上あり、ボズ流の解釈している印象。原曲をもっとスローにブルージーに、そして熱いギターが繰り広げられます。正直こういう曲は苦手ですが、これはライヴで聴くと鳥肌モノです。ボズも思い入れが強い曲なんでしょうね。
今回の公演ではこの曲をどう感じたかで評価は大きく分かれたのではないかと感じました。やはり根っからのブルースマンだったボズ。それがこの「Loan Me a Dime」の演奏でよく分かりました。熱いヴォーカルにギター、AORの原点もここにあると感じます。ちょっと前のライヴ映像をアップしますが、これはライヴで聴くべきだと思いませんか。

このアルバム、AORのボズじゃないですよね(笑)。そもそもこのアルバム、1曲目からメンフィス・ソウル全開。それがボズとバリーの共作の①「I’m Easy」。
ボズのヴォーカルに絡んでくるギターはデュアンでしょうか。ロジャー・ホーキンスのドラムもタメが効いていてカッコいい。ちょっとチープなホーンとか、ソウルフルな女性コーラスとか、あの時代のメンフィス・ソウルですね~。デヴィッド・フッドのベースも最高です。
ついついウィリー・ウィークスのベースを思い出しちゃいました。この曲なんかは、今のボズのステージで演奏しても違和感ないですね。つまりやっぱりボズは原点回帰しており、私が大好きな「Heart Of Mine」辺りのサウンドはボズにとってはイレギュラーなものだったのかもしれません。実際「Heart Of Mine」は今回のステージでは演奏されてませんしね。

意表を突くカントリーナンバーの④「Now You're Gone」。
途中からフィドルも登場してくる完全なカントリー。当時のボズはこうした楽曲も自ら作り、演奏していたんですね。

イントロから一瞬ZEPの「天国への階段」を連想させるコード進行が…。こちらはデュアンのスライドギターが堪能出来る⑤「Finding Her」。
ワルツ調の楽曲の中、デュアンのスライドが華麗に宙を舞っているように聞こえます。ボズのヴォーカルも滑らかで、どこか官能的。デュアンのスライドギターと合ってますね。

ちょっとハワイアン・カントリーな⑦「Waiting for a Train」はアレンジがユニーク。
この曲が面白い点はボズがヨーデル風に歌っていること。今のボズからはちょっと想像出来ないですね。またデュアンのドブロ・ギターも素晴らしい。ボズがハワイアン・カントリーをやっていたなんて知らなかったです。気のせいか、歌い方がモンキーズのマイク・ネスミスに似てますね。

今も「Loan Me a Dime」を愛しているボズ。このアルバムも、この曲の良さが理解出来れば素晴らしい作品に思えてくるのではないでしょうか。
それにしても結局デビュー当時の音楽に戻ったボズは、立ち姿、声ともに(少し言い過ぎですが)当時のまま。何の気兼ねもなく、感情の趣くまま、エモーショナルに歌い、ギターを弾く姿に感動してしまいました。


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