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The Rascals「Once Upon A Dream」(1968)

本作から「Young」を取ったラスカルズの4枚目のアルバム。音楽の系統は違えど、ビーチボーイズの「ペットサウンズ」から影響を受けたと思われるアレンジや構成…。過去3作とは違う、R&Bやジャズに加えてサイケの要素も加味された音楽の玉手箱のようなアルバムです。

ラスカルズはフェリックス・キャヴァリエのワンマン・バンドのように思われますが、まだこの時期はフェリクスとエディ・ブリガッティのツートップ、個性の違う2枚看板がラスカルズの持ち味でした。実際、メンバーのジーン・コーニッシュが1曲提供していますが、他全曲がフェリックス・エディの共作となっております。

前作「Groovin’」からゲストミュージシャンを器用しておりますが、本作も前作に引き続きチャック・レイニー(B)、エディの実兄のデヴィッド・ブリガッティ(Vo)、ヒューバート・ロウズ(Flu)が参加。他ロン・カーター(B)、キング・カーティス(Sax)等が参加しております。

梅雨の時期になるとオンエアされる②「Rainy Day」。
イントロにはエディの台詞…、雷のSE…、オーケストラを使った仰々しいアレンジ。ペットサウンズ風な感じがいいですね。
初期のバンド・サウンドとは一線を画す、新たなラスカルズという感じ。エディの名唄が光る1曲です。

フェリックス流R&Bの③「Please Love Me」。
ジーンの切り込んでくるようなギターは結構好きですね。あと間奏のフルートなんかはサイケを感じさせます。
こちらは珍しいMVがありましたので、そちらをアップしておきます。途中映像も乱れるし、音も悪いのですが、動くラスカルズが見れるということでお許し下さい。音が悪いにも関わらず、ベースがきっちり聞こえるのは流石チャック・レイニーって感じです。

本作からのシングルヒットの④「It's Wonderful」。
イントロのメリーゴーラウンドで流れるようなSEは本作特有のもの。曲間にいろいろなSEが挟み込まれてます。そのちょっとのどかなSEからのスピーディなサビの展開が実にカッコいい。ヴォーカルはエディとデヴィッド。ちなみにデヴィッドは5人目のラスカルとも呼ばれていた方。
曲そのものはラスカルズが得意としていた往年のR&Bですが、イントロや間奏、エンディングが本作の特徴を表わしてます。特にエンディングはサイケ感覚溢れる感じで、時代を感じさせます。最後のマーチングドラムのパートは、スピーディな曲調とは対照的な牧歌的なアレンジでメリハリが効いてますね。

ちょっとムード歌謡的なエディの独壇場の⑥「My Hawaii」。
バンド要素は感じられませんが、ディノのドラムはウォール・オブ・サウンド、つまりハル・ブレインのドラムっぽい。こんな曲も収録されているところが本作らしい。

フェリックスはこの当時、ヨガや瞑想に凝っておりましたが、その影響が窺えるナンバーが⑩「Sattva」。
イントロからインド音楽の色彩満載なジョージ・ハリスンの世界(笑)。シタールはフェリックス、タンブラはエディの演奏。
但し曲が進むにつれて、いつものラスカルズ流のポップスが。随所にインド音楽風なアレンジが施されてますが、ジョージは作るインド音楽よりも聴きやすいですね。

エンディングらしい⑪「Finale: Once Upon a Dream」。
この曲のみリード・ヴォーカルはゲスト扱いのデヴィッドが務めてます。
ここでも間奏ではSEが挿入されていたり、オーケストラが効果的に使われていたり、アレンジが凝ってます。本作のブックレットには、フェリックスが寄せた文章に「夢は天から我々に送られてくるメッセージである。…人類の夢は、地球の平和と人への善意、その夢にこのアルバムを捧げる」との記載があります。当時瞑想に凝っていたフェリックスらしい言葉ですが、この曲にはそんな想いが詰まっているように感じます。
山下達郎さんは「僕の中の少年」へのコメントに「ラスカルズの「夢見る若者」やビーチボーイズの「ペット・サウンズ」のようなエンディングが変ちくりんなアルバム、ああいう感じにしたかった」と記してます。確かにこの曲のエンディングはそんな感じですね(笑)。

曲単体で聴くとあまり纏まりがないのですが、それをSEとかいろいろなアレンジで繋ぐことで、トータルアルバムの色彩が感じられ、かつフェリックスが本作に寄せたメッセージは全編にも通じることだということが何となく分かってきます。
ラスカルズも奥が深いですね…。


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