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クリスタルキング「クリスタルキング」(1980)

「大都会」より超絶ヴォーカルが聴けるアルバム

多分殆どの方は知らない番組と思いますが、年末に放送された「ザ・カセットテープ・ミュージック」の特番「第5回 輝く!日本カセットテープ大賞」を今頃チェックしていたのですが、そこで「最優秀ヒット曲の次の曲賞」を受賞したのがクリスタルキングの「蜃気楼」。ヒット曲の次の曲…、そのヒット曲とはもちろん「大都会」ですね。
クリスタルキングは結構好きで、彼等のデビューアルバムはCDで所有しております(サブスクでは聴けないんですね)。あまりにも懐かしくなり、そのデビューアルバムを再チェックしていたのですが、そこで是非聴いてほしい曲がありました(「大都会」ではありません)。

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クリスタルキングのスタートは1971年と結構古くて、ヴォーカルのムッシュ吉崎(あの低音パートの方)を中心に佐世保の米軍キャンプにて活動しておりました。1975年頃に我々が認識している布陣となり、1976年にレコードデビューを果たします。その曲が「カモン!ハッスル・ベイビー」。タイトルからして嫌な予感(笑)。
(出来れば聴いてほしくない(笑))

試聴しなくても分かりますよね。キャンプ・ガローレのディスコソングのカバーです。これじゃ、ツインヴォーカルの妙味も全く生かされていなし、なぜこうした曲でデビューしたのか、全く謎ですね~。当時のライナーノーツには「ファンキーソウルグループ」なんて書かれてますが、後の彼等を知っているものとしては、いや~、違うだろうって思っちゃいますけどね。この当時のメンバーは、再デビュー時のメンバーとほぼ一緒なんですよね。

そして1978年、彼等はヤマハのポプコンで入賞を果たしますが、その時のグランプリ曲が円広志の「夢想花」でした。そこで「夢想花を超えるインパクトを与えるには、田中(後半パートヴォーカル)のハイトーンヴォーカルを始めに繰り出す」というアイデアからメンバーで「大都会」を作り上げ、翌年のポプコンで見事にグランプリを獲得します。
もう聴き飽きているかもしれませんが、いつ聴いても鳥肌が立つ②「大都会」をどうぞ。
この映像では田中さんがちょっと音程を外すシーンも見られます(ちなみに二人で歌う映像はいろいろあって殆どYouTubeに上がっていないので、こちらもリンク切れになるかもしれません)。

田中昌之さんのヴォーカル、凄いですね。でも実は聴いてほしい曲というのは、「大都会」より超絶凄い田中さんのヴォーカルが聴ける⑪「An End」という曲なんです。最初はギターインストかと思いますが、しばらく経つと様子が変わってきます。是非聴いてみて下さい。
なにが凄いか分かりましたか?ギターのインストかと思ったら、途中から田中さんのヴォーカルに変わっているんですよね。まるでギターソロのようなハイトーン。正直、こんなヴォーカルは聴いたことがありません(イアン・ギランに近いかも)。恐らくステージでもギターの山下三智夫さんと、こうしたバトルはやっていたものと思われます。それをドラマティックに見事に仕上げてますね。もちろんこの曲は田中さんのヴォーカルが凄すぎるのですが、バンドとしての凄さも感じます。

クリスタルキングというバンドは山下三智夫さんという素晴らしいライター&ギタリストの存在も見逃せません。「大都会」は彼が作曲したものなんです。ちなみに私がクリスタルキングで一番大好きな曲が「セシル」という曲です。これは1982年のシングル曲で、作曲された山下三智夫さんが優しいヴォーカルを聞かせてくれます。彼のご性格もそういう方のようですね。この曲の田中さんのバックコーラスも凄いです。

あとキーボードの今給黎博美さんもセンスあるプレイをするし、今給黎さんも結構いい曲を書いてます。本作では⑧「センチメンタル」がなかなかの佳曲。この曲の演奏シーンをアップしておきます。

シングル「大都会」のB面だった⑦「時流」。
作詞:阿里そのみ、作曲:安部恭弘。そう、デビュー前の安部恭弘さんが作った名曲です。この曲が好きだというファンは結構多いですね。この歌詞、その後の二人のヴォーカリスト、ムッシュ吉崎さんと田中さんの関係を思うと、非常に感慨深いものがあります。

その二人の関係…。多くは語りませんが、判例事例として記事がアップされていたので、リンクだけ貼っておきます。

結局、クリスタルキングとは田中さんであり、山下さんであり今給黎さんであり、中村さんであった。それがムッシュ吉崎さん一人となり、他人がクリスタルキングと名乗ることへの抵抗。リーダーなのにリーダーになりきれなかったことへの葛藤。非常に人間臭いドラマがこのバンドにはあったわけなんですね。

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