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Bill Labounty「This Night Won't Last Forever」(1978)

ビル・ラバウンティ…、もうご存じの方も少なくなったかもしれません。
1990年、彼の代表曲でもある「This Night Won't Last Forever」が、突然フジテレビのトレンディドラマ「すてきな片思い」(主演:中山美穂)に使われたことから、このアルバムは一般層にまで普及してしまい、そのブームが過ぎ去ってしまうと共に、本作は中古市場へ出回ることとなってしまいました。当時、ブックオフの安売りコーナーには本作が出回ってましたね。
その内容の素晴らしさとは関係なく値崩れを起してしまった感があります。
本来はAORの名盤だったわけで、私は今もたまに本作を聴いてリラックスしてます。

①「This Night Won't Last Forever」はやっぱりビルの代表作でしょう。ただこれをAORと呼ぶには、個人的にはちょっと違和感を感じますね。ビルの声はエルトン・ジョンのようにも聞こえ、この曲なんかはちょっと土臭いポップスのようにも感じます。これに続く②「Room205」にしてもイントロのオルガンなんか、ちょっとゴスペルタッチで、アーシーな感覚ですね。ポール・デイヴィスに近いような気もします。

私としてはちょっとボードヴィル的でノスタルジックな③「In 25 Words Or Less」あたりから、このアルバムの良さを感じてしまいます。小粋なポップスといった感じで、彼の非凡な才能を感じさせる1曲です。

④「Open Your Eyes」はドラムにジム・ゴードン、ベースにリー・スカラー、ギターにディーン・パークス、そしてキーボードにラリー・ネクテルといった豪華なミュージシャン等が参加。特にジムのベタッとしたドラムに力強いラリーのキーボードが、①と同様にちょっとアーシーなポップスといった感じにさせているような気がします。

⑨「A Tear Can Tell」はムーディーなAOR。しなやかでスィートなギターはリー・リトナーとレイ・パーカー・Jr。このアルバムはこうしたAOR的なアプローチとダンヒル的なポップス(ラリー・ネクテルの影響か??)が同居した素敵なアルバムですね。

本作中一番のお気に入りは⑩「I Hope You'll Be Very Unhappy Without You」。
どこかニック・デカロのサウンドを連想させるしなやかなポップスです。⑨と同様、ギターはリーとレイ。ドラムはジェフ・ポーカロ。やっぱりジェフのドラムは切れ味が鋭いですね。

やっぱり安売りコーナーに放置されるには惜しいアルバムですよ。素晴らしいミュージシャンの演奏も堪能出来るし、何よりビルの楽曲が素晴らしい。
ビルはその後もマイペースでアルバムを発表。近年では2014年に発表された「Into Something Blue」が素晴らしい。ここでもラリー・カールトンが参加。どうもビルとラリーはご近所さんらしいですね。

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