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The Monkees「Present」(1969)

一般的には1968年12月にピーター・トークが脱退した後の3人組のモンキーズのアルバム(つまり本作)は全く無視されてしまっていると思われますが、これがまたなかなか味のあるアルバムなんです。
バンドとして、まとまりのアルバムでは全くありませんが、3人の個性が際立った、特にマイク・ネスミス・ファン(というのがどれくらいいらっしゃるのか分かりませんが)必聴のアルバムですね。

モンキーズ・ショーのTV終了が1968年3月。翌月発表した5枚目のオリジナルアルバム「The Birds,The Bees and The Monkees」は、彼等としては初めてチャート1位を逃してしまいます。このアルバムもクオリティは非常に高いと思うのですが、TVの影響は大きかったのでしょうね。
その後映画「Head」の制作、アルバム「Instant Replay」の発表等、意欲的な作品を発表していくのですが、TVによって作られたアイドルグループは、一旦人気が下降線を辿ると決して浮上してこないのが世の常です。

結成当時のモンキーズのメンバーで、本当のミュージシャンはマイク・ネスミスとピーター・トークだった訳ですが、そのピーターも前述の通り脱退。ここで残された3人は自分の好きなようにアルバムを制作していきます。またこの当時、アイク&ティナ・ターナーのバックバンドだったサム&グッドタイマーズとコンサートを行うこともしております。下の写真はそのときのものですが、3人のモンキーズとR&Bのコラボって、ちょっと面白そうですね。

さて本作ですが、3人のメンバーのソロアルバムと割り切って聴いたほうがいいでしょう。ディビーはメロディの美しい楽曲、ミッキーは風変わりな作風、そしてマイクはカントリーロック、もちろん聴き所はマイク中心なのですが。

①「Little Girl」はミッキーの単独作曲作品。静かな美しい曲で、名手ルイ・シェルトンのギターが冴え渡ってます。エレキの囁くようなソロが美しい。彼はモンキーズの「Valleri」でも素晴らしいギターを披露してます。ミッキーの、というかルイのギターに耳を傾けるべき楽曲です。

一転、これが同じアルバムか?? というくらいムードがガラッと変わり、軽快なブルーグラスが・・・。この曲が60年代のカントリーロックの重要な楽曲のひとつである②「Good Clean Fun」。ここまでフィドルとバンジョーをフューチャーしたロックは当時あまりなかったでしょう。もちろんバースの「Sweetheart of the Rodeo」という名作が過去にありますが、あちらはかなりカントリー寄り。この「Good Clean Fun」はかなりポップですし、実際シングルカットもされてます。
素晴らしい楽曲なので、是非聴いてみて下さい。私の大好きな1曲です。

ディビーの美しいヴォーカルが堪能出来る③「If I Knew」。ディビーとビル・チャドウィックの共作。かなり洗練された曲ですね。美しいアコギはビル本人。スローでボッサなドラムは意外にもハル・ブレインです。

マイクオリジナルの⑤「Never Tell a Woman Yes」は典型的なカントリーロック。ダンヒル・リズムセクションの2人、ジョー・オズボーンのランニングベースが心地よいし、ハル・ブレインの遊び心溢れるリズムカルなドラムもいいですね~。マイクとジョー&ハルの共演は意外と少ないかもしれません。

本作最大のハイライト作品は⑧「Listen to the Band」でしょうね。マイクの独壇場の作品。クオリティという面では、もうこれ以上のものはないという位の名作。ブラスをフューチャーしたロック。間奏の効果的なフェードアウト・フェードイン、エンディングの歓声など、随所に素晴らしいアレンジが光ります。もちろんプロデュース&アレンジもマイク自身。
後にマイクは、自身のバンド、ファーストナショナルバンドでもカントリー風にセルフカバーしております。

サイケなライブ映像をアップしておきます。サイケなライブ映像は1968年のTV「33 1/3 Revolutions Per Monkee」のもの。音が小さいのが難点ですが、段々サイケしていく怖い(??)映像です。

久しぶりにこのアルバムを聴き返しましたが、味わい深いですね。ただこのアルバム、既に廃盤で入手困難なようです。80年のモンキーズ・リバイバルブームの際も、本作と次作の「チェンジ」だけはLP再発されませんでしたし。
本作、マイクの不満が爆発するように、彼の素晴らしさが発揮されたアルバムです。ちなみにマイクは本作発表後、莫大な違約金を払ってモンキーズを脱退します。もう本当に得るものはなかったのでしょうね。

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