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Adrian Gurvitz「Sweet Vendetta」(1979)

久しぶりに本格的なAORアルバムの登場です。
エイドリアン・ガービッツのスウィートなファーストソロアルバム。AORアルバムの名盤紹介本には必ずといっていいほど、このアルバムは紹介されてます。ですから前から気になっていたアルバム。

エイドリアン・ガービッツの経歴については、私、全く認識しておりませんでした。金澤さんのライナーノーツによると、1967年にThe Gunというバンドでデビューを果たし、その後兄とともにThree Man Armyを結成。同グループ解散後、1974年、あのクリームのジンジャー・ベイカーとThe Baker Gurvitz Armyを結成。デビュー以来、どちらかというとハードロック系の音楽をやっていた方のようです。

そのエイドリアン、どういった心境の変化か、この素晴らしいAOR系のアルバムを発表したのです。

ディスコブームを反映したようなノリの①「Untouchable and Free」。
軽いノリのドラムはエド・グリーン。ここで聴かれるシンセはいかにも70年代終わりから80年代前半にかけてのもので、それもそのはず、シンセはTOTOのスティーヴ・ポーカロ、ストリングアレンジにはデヴィッド・ペイチ。ブラスはジェリー・ヘイ(いかにもジェリー・ヘイっぽい)。ギターはリトル・フィートのフレッド・タケット。う~ん、まさにボズの「Silk Degrees」と同じ面子ですね。

このアルバムの本質はやっぱり②「The Wonder of It All」ですね。実にメロウでスウィートなギターです(このギターもフレッド)。タイトなドラムはもちろんジェフ・ポーカロ。これぞ「ザ・AOR」!!!

①にさらにフィリーソウル的要素を加えたのが④「Love Space」。
決して声質が太くないヴォーカルのエイドリアン。逆に線の細さがファルセットヴォイスには効果的。気持ち悪いほどファルセットしてます(笑)。
イントロのギターソロはエイドリアン自身。さすがリードギタリストだけあって、上手いものです。ハードロックのギタリストだったとは全く判別できないスウィートなギター。どちらかというとジャズ・ギターの香りがしますね。

独特のグルーヴ感が堪らない⑤「The Way I Feel」。
ジェフ(ドラム)&デヴィッド・ハンゲイト(ベース)のTOTOコンビがリズム隊。ここでの聴き所は何といってもエイドリアンの間奏&エンディングでの弾きまくるギターソロと激しく呼応するリズム隊。決してディストーションをかけない自然なギター音が心地いいです。

⑦「I Just Wanna Get Inside Your Head」を聴くと毎回思い出してしまいます。それはボビー・コールドウェルのファーストアルバムです。
このアルバム、フィリーソウルやディスコ、TOTO系といったワーディングが連想されますが、特にこの曲はイントロからボビーのあのサウンドを彷彿させます。ボビーは実にソウルフルなヴォーカリストですので、エイドリアンとはタイプが違いますが、ひょっとしたらエイドリアンもソウルフルなヴォーカルでしたら、また違った味わいのあるアルバムになっていたかもしれませんね。

実に味わい深いAORの名盤ですね。
エイドリアン、この後1982年に「Classic」という楽曲をヒットさせます。この曲、典型的な80年代ロック的な香りのするバラードで、一瞬フォリナーの「4」あたりの楽曲??と思ってしまいました。


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