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The Byrds「Dr. Byrds & Mr. Hyde」(1969)

バーズのデビューは1965年、フォークロック調にアレンジしたディランの「Mr. Tambourine Man」がいきなり大ヒットを記録し、その後、数枚のフォークロックアルバムを発表します。そしてメンバーにグラム・パーソンズを引き入れ、1968年にカントリーアルバム「Sweetheart of the Rodeo」を発表します。ちなみにグラムはあっという間にバーズを脱退し、同じくバーズを脱退したクリス・ヒルマンと共にフライング・ブリトー・ブラザーズを結成します。このバンドに在籍していたバーニー・レドンは後にイーグルスを結成…。この当時のウエストコーストの人脈は結構興味深いものがありますね。

さて、グラムに置いてけぼりにされたバーズは、クラレンス・ホワイトという強力なギタリストをメンバーとし、ロジャー・マッギンジーン・パーソンズジョン・ヨークの4人で7枚目のアルバムを製作。それが「Dr. Byrds & Mr. Hyde」です。

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このアルバム、ひょっとしたらバーズ全作品の中でも、商業的には一番の失敗作だったかもしれません。でも個人的には大好きなアルバムで、前作の極めてカントリー寄りなサウンドが、もうちょっとロック寄りにしたような、いいバランスに落ち着いたアルバムと捉えてます。そしてなんといっても伝説のギタリスト、クラレンス・ホワイトのプレイが堪能出来るアルバムなんです。
クラレンスは60年代前半から、ブルーグラスのギタリストとして頭角を現し、その技量からスタジオミュージシャンとしても引っ張りだこな存在となっていきました。もちろんバーズ正式加入以前から、バーズにも関わりがあったのですね。彼のフラット・ピッキング・プレイはブルーグラス出身だけに神業的なプレイでした。

さて、バーズのアルバムにはお決まり様にボブ・ディランのカバーが収録されており、本作もディランの楽曲①「This Wheel's on Fire」からスタートです。正確にはディランとザ・バンドのリック・ダンゴとの共作。ザ・バンドのデビューアルバムにも収録されていたナンバーです。バーズはかなりサイケに、かつ力強いロック寄りの演奏をしてます。これは明らかにクラレンスのギターに因るところが大きいですね。

②「Old Blue」はクラレンスとジーンが考案したストリングベンダー・ギター(スティール・ギターの音色を通常のギターで再現させるもの)をフューチャーした作品。トラディショナルソングをロジャー・マッギンがアレンジしたもの。せっかくなのでライブ映像をアップしておきます。ステージ左側のギタリストがクラレンス。ベースはジョンからスキップ・バッテンに代わってます。この当時のメンバーが一番演奏能力が高く、ライブ演奏も白熱したものだったと思われますし、アップした映像もいいですね。

軽快なカントリーロックのインストナンバーの⑤「Nashville West」は、バーズ加入前、クラレンスとジーンが在籍していたバンド、ナッシュヴィル・ウエスト時代のナンバー。ここでもクラレンスの名演が聞けます。

⑥「Drug Store Truck Drivin' Man」はグラム・パーソンズとロジャーの共作。グラムがバーズを脱退する前、1968年5月に書かれたもので、前作に収録されていても違和感のないカントリーソング。曲調がワルツで、スティールギターが郷愁を誘います。

本作がカントリーとロックをうまく融合させたようなアルバムであることはよくご理解頂けたかと思います。⑦「King Apathy III」は曲自体、ロックとカントリーを繋げてしまったような曲。最初のパートはロックですが、Bメロではカントリー調に転調してしまいます。ロックパートの後ろで、クラレンスが結構すごい早弾きしてます。フラット・ピッキングをエレキで弾きこなしている感じですね。

アルバムのエンディングトラックはメドレー形式の⑩「Medley- My Back Pages-B.J. Blues-Baby What You Want Me to Do」。最初の楽曲はもちろん自身4枚目のアルバムにも収録されたディラン作の「My Back Pages」。日本では真心ブラザーズがカバーしたバージョンが有名ですね。ロジャーのこの楽曲に対する強い思い入れを感じます。以前のバージョンではフォークロック調に仕上げてましたが、ここでは次に繋がる楽曲がブルースなので、それに呼応、ヘビーに仕上げてますね。続く「B.J.Blues」はメンバー全員の共作。そしてジミー・リードの「Baby What You Want Me to Do」へ。熱烈なクラレンスのギターソロが聴けます。このブルースは誰の趣味だったんでしょうね。

バーズはこの後、映画「イージー・ライダー」のサントラを発表。その後のアルバムでは、更にロック色を強めていくことになります。ちなみにクラレンスはバーズ解散後、精力的にセッション、ソロ活動を開始しますが、1973年7月、交通事故で亡くなってしまいます。

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