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James Taylor「Never Die Young」(1988)

4月6日のジェームス・テイラーの一夜限りの来日公演…、これが予想通り、いや想像以上の良さで、まだまだ余韻に浸っている状況です。
彼の人間性が非常に伝わってくるような、そして幸せに包み込まれるような、そんなライヴでした。JTみたいな誰からも好かれるような人間でありたい(絶対なれないけど)、そんな想いを強くしました。

こちらのブログでは、JTのアルバムはかなり網羅しておりますが、まだ数枚ご紹介出来ていないアルバムがあり、しかもその内の1枚は、今回のライヴでは2曲も演奏されてました。ライヴの翌朝、1時間半くらいで書き上げたライヴレポートでも、やっぱりかなり印象的だったので、その曲に言及しております。そんな素敵なアルバムを今回はご紹介致します。

そのアルバムが1988年発表のJT12枚目のスタジオアルバムの「Never Die Young」。このジャケットが個人的にあまり気に入らず、全くスルーしておりました。

プロデューサーはジャズ・ピアニストのドン・グロルニック。実はドンは既に1974年発表のJT5枚目のアルバム「Walking Man」から参加しているミュージシャンです。但しプロデューサーとしての参加は本作が初めて。次作「New Moon Shine」でもプロデューサーを務めるのですが、1996年に46歳の若さで亡くなってしまいます。
ドンの緻密なプロデュース・ワークに基づいたフュージョン・ライクなサウンドは、今のJTサウンドの要になっているような気がします。それくらいJTサウンドにとっての重要人物ですね。

さて、本作1曲目からアルバム・タイトル・ナンバーが置かれてます。それが①「Never Die Young」。
この曲は今回のライヴでも歌われてました。「若くして死ぬことはない」といった意味でしょうか。演奏終了後にボソッと「Too Late for me(笑)」って言って、会場を笑わせてましたね。
本作にはザ・セクションのメンバーはリーランド・スカラー(B)しか参加しておらず、カルロス・ヴェガ(Ds)、ボブ・マン(G)、ドン(Key)といった布陣が中心メンバーです。この曲でも間奏のギターソロは、かなりフュージョンっぽい音ですね。

ちょっとカントリータッチな④「Runaway Boy」。
スティール・ギターはダン・ダグモア。当時、既にJTの時代は終わりつつあり、新譜についてもあまり話題に出ることはなかったと思います。そんな中にあっても、JTは自分の音楽を確りやり続けていたわけです。30年以上経った今でも、こうして普通に聞けるエバーグリーンな楽曲が彼の魅力のひとつでもありますね。

サード・シングルの⑦「Sweet Potato Pie」は後にレイ・チャールズもカバーした楽曲。イントロが一瞬ボズ・スギャックスの「Breakdown Dead Ahead」を思わせるようなR&Bフィーリングたっぷりなノリ。でも曲はJT節全開です。

この曲、かなりブラックフィーリング溢れるものに共感されたのか、後にレイ・チャールズがカバーし、JTがデュエットしたものが発表されてます。原曲に近いアレンジですが、これもまたかなりいいので、ご参考までに下にアップしておきます。

6日のライヴで演奏されたもう1曲が⑥「Sun on the Moon」です。
一部の最後に演奏された楽曲。ずっとギターを抱えていたJT(曲毎にギターを持ち替えていた)が、ギターを抱えずにいたので、おや?と思ったら「この後、20分の休憩を入れるよ」みたいなことを言いだし、JTとコーラス隊3人、計4人がステージ前に一直線に並んだかと思ったら、この華やかな曲をやり出しました。正直、この曲はノーマークで、知らない曲だったのですが、やっぱりこのゴスペル的なノリは良かったですよ。
アップした映像は22年前のライヴですが、ほぼこのような演奏でした。ライヴではスティーヴ・ガッドのドラムがやたらとリズミカルで迫力ありました。この映像ではヴァレリー・カーターがコーラスやってますね。その左は今回のツアーにも参加しているケイト・マルコヴィッツです。

ちょっとブラジリアン・テイストな⑩「First of May」は新境地でしょう。
リー・リトナー的なサウンドもドン・グロニックのお陰かもしれません。
この曲、2018年のライヴ映像がありました。ドラムは今回のツアー同行者でもあるスティーヴ・ガッド。間奏ではガッドらしいプレイも。コーラス隊もジミー・ジョンソン(B)も一緒ですね。従来のJTサウンドとはちょっと違う、すごくフュージョンっぽい楽曲だと思いませんか。

この頃のJTのアルバムは、あまり良くないかなという先入観があったのですが、全くそんなことなかったですね。
この頃から、既に今のサウンドのベースが築かれていたわけで、これほどどの時代でもエバーグリーンな音楽が作り出せる方もいないと改めて感じました。

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