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The Beach Boys「All Summer Long」(1964)

世間はゴールデン・ウィークに突入しておりますね。私は1日は出勤、2日は在勤でしたが、特に1日の職場の日本橋は、普段はサラリーマンしかいないのに、この日ばかりはランチの名店は軒並み観光客で大混雑。人が元のように動き始めていることを実感します。

動き始めていると云えば、いよいよカーラ・ボノフの来日が決定したらしい。しかもリヴィングストン・テイラーとの共演。これも楽しみです。

さて、世間はGWですが、我が家は愛犬がまだ本格的な遠出が出来ないので、特段の予定はなし。なので1本追加で胸躍るリゾート向きなアルバムをご紹介しておきます。といっても少し時期が早いビーチボーイズなのですが(笑)。

ブリティッシュ・インヴェイジョンの波が米国に押し寄せてきた中で、米国を代表するビーチボーイズが、その波に回答する形で繰り出された会心の1枚。ビーチボーイズ6枚目のアルバム。プロデュースはブライアン・ウィルソン。このアルバムの制作中に、ウィルソン兄弟(ブライアン、デニス、カール)の父親でもあったマネージャーのマレー・ウィルソンを解雇し、音楽的にも完全にブライアンは独立することに成功しました。

このアルバムは素晴らしいオープニング・ナンバーからスタートします。それが全米No.1を記録した①「I Get Around」です。
意表を突くアカペラ、マイクの低いヴォーカルに続くメンバーのコーラス、そして最後にファルセットを効かせたブライアンのコーラス、この組み合わせが初期ビーチボーイズの最大の特徴で、特にこの曲はマイクの鼻にかかったヴォーカルと安易で能天気な歌詞(笑)に、ブライアンの天才的なメロディとリズムワークが組み合わさった名曲です。
あまり目立ちませんが、この曲の変化に富んだリズムワークは、豊かなコーラスとコントラストを織り成し、実に楽曲を生き生きとさせてます。天才ブライアンが音とリズムを組み合わせ、具現化したものであり、素晴らしい1曲ですね。

③「Hushabye」は1959年のドゥーワップグループのThe Mysticsのヒットナンバーのカバーですが、ビーチボーイズはいきなり冒頭からファルセットを効かせたコーラスから切り込んできます。
これも洪水のようにコーラスが押し寄せてきますね。原曲と聴き比べてみても、その違いは歴然。完全にビーチボーイズの曲にしてしまってます。ちなみにこの曲でもリズムが効果的に用いられてます。そしてエンディングもアカペラで締める…恐るべしブライアン。

駆け落ちをテーマとした⑤「We'll Run Away」はブライアンとゲイリー・アッシャーの作品。マイクにはこういう詞は書けないでしょう(笑)。
ブライアンが歌うロッカバラードの名作。どうしても駆け落ちせざるを得ない心境を切々と歌い上げるブライアン…、何度も申しますが、こうしたイノセントな曲はマイクは歌えません。

ギターとベースだけの単音を4回奏でるイントロが印象的な⑦「Wendy」もブライアンとマイクの共作。
サウンド構成はブライアン主導で行われたもの。間奏のオルガンや迫力あるコーラス、グルーヴ感あるベースがスリリングな展開に効果的です。

私の大好きな1曲、山下達郎もカバーした超名曲の⑨「Girls on the Beach」。
ビーチボーイズはロック史上最高のコーラスグループと思ってますが、この曲を聴いて頂ければそれが理解出来ることでしょう。
ブライアンはこの曲のサビをデニスに歌わせます。どのパートがデニスが歌っているのか分かりますか? 

 ♪ the sun in her hair / the warmth of the air ♪

この部分なんですが、荒っぽいデニスがここを歌うことで、より一層女心を擽る効果が生まれているような気がします。アップした映像では1分14秒辺りですね。ちなみにこの映像、ブライアンが泳いでいるシーンとか、メンバーがサーフィンしているシーンとか、結構貴重な映像が含まれてますね。

マイクとブライアンがヴォーカルを分け合う⑫「Don't Back Down」。
この時代の典型的なビーチボーイズのロックンロールでこのアルバムは幕を閉じます。サビをファルセットで歌うブライアンが受け継ぐパターンはビーチボーイズの十八番ですね。ここでのコーラスはロックしていてカッコいい。

如何だったでしょうか。この後、ビーチボーイズは数枚、企画アルバムを発表後、「TODAY!」を発表。そして「Summer Days」「Pet Sounds」へとサウンドを極めていきます。
夏まで待ちきれないならこの作品を聴いて、気分だけでも夏を感じるのもいいかもしれませんね。


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