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Jimmy Webb「El Mirage」(1977)

巨匠ジョージ・マーティンと組んだジミー・ウェッブ、5枚目のアルバム

ジミー・ウェッブは主に60年代にソングライターとして活躍。フィフス・ディメンションとのコラボは有名ですね。名曲「Up,Up And Away」を聴いていると、ジミーってスゴイ洗練された人なんだなあと思ってしまいます。
そしてそのイメージで彼の歌声を聴くと、かなりギャップがあることに驚かされます。

まずはプロデューサーが巨匠ジョージ・マーティンであることにびっくり。さぞかし派手なアルバムなのだろうと思ったら、①「The Highwayman」から渋い。しかもジミーの声、結構土臭いですね。悪く言えば野暮ったい(スミマセン)。でも個人的にはこういうヴォーカル、好きですね。
曲後半はホーンが加わり、ちょっと曲の繊細さを台無しにしている感も無きにしもあらず。

②「If You See Me Getting Smaller I'm Leaving」にはケニー・ロギンスがコーラスで参加してます。味わい深い曲です。

本作中、一番のお気に入りは③「Mixed-Up Guy」。アルバム中、一番AOR&POPしてますね。間奏のホーン・アレンジを聴いて、ポール・マッカートニーの「Silly Love Songs」を連想するのは私だけでしょうか? 
この曲、イントロのベースが最高にいかしてますね。ベースは恐らくラリー・ネクテルでしょう。あのダンヒル・リズム・セクションのキーボードであった人物です。彼は優れたベーシストでもあり、バーズの初期の作品にはベースで参加していたりしてます。このベースは非常にジョー・オズボーンのようで、ジョーを常に間近で見ていたラリーならではのベース・プレイです。
そしてこのドスンと来るスネアはジム・ゴードンでしょうね。
この曲は「Mixed-Up Girl」として1969年にThelma Houstonがカバーしてました。その時のプロデューサーはジミー本人。ハル・ブレイン、マイク・ディージー、ラリー・ネクテル、ジョー・オズボーン、シド・シャープ等が参加してます。やはりラリーとジョーですね。

ちょっと愛らしい⑥「Sugarbird」。心地よいパーカッションはハーヴィー・メイソンです。
間奏のバッハ風アレンジはいかにもジョージ・マーティンらしいですね。一瞬ビートルズの「In My Life」を連想してしまいました。

⑧「P.F. Sloan」も大好きです。

♪ I have been seeking P.F.Sloan
     But no one knows where he has gone ♪

この曲をジミーが作ったのが1970年。アソシエイションがカバーしてましたが、プロテスト・ソングを唄っていた盟友P.F.Sloanの苦労を知っていたジミーならではの歌ですね。
出だしの歌詞から引き寄せられます。

♪ Nixon came and came to stay
      They've taken all his sins away ♪

1969年7月30日に当時のニクソン米国大統領は南ベトナムへ予定外の訪問を敢行。グエン・バン・チュー大統領等と和平会談を行います。恐らくそのことを指しているものと思われます。
(ちなみにベトナム戦争はこのあとも続き、終結したのはその4年後の1973年です)

ちょうど上の歌詞後半から味のあるバンジョーが絡んできます。Herb Pedersenの名演奏ですね。
この曲、聴くたびに♪ No No No No No ~ ♪とサビを合唱してしまいます。なんだかジミーの人情味溢れるヴォーカルが涙を誘いますね~。名曲です。

意外にも野暮な感じのするジミー・ウェッブ。楽曲の良さがしみじみと伝わってくる名盤。かなりいいです。

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