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Steve Eaton「Steve Eaton」(1980)

今回は渋めです。スティーヴ・イートンのセカンドがひっそりと再発売されておりました。もちろん配信も開始されてます。

彼の1974年発表のファースト「Hey Mr. Dreamer」は素晴らしい内容で、私の大好きなアルバムです。こちらは既にご紹介済ですが、この名盤、当時のレーベルから確りしたサポートは得られず、商業的に失敗に終わってしまいます。

スティーヴは失意のうちに故郷のアイダホに戻り、じっくり曲作りに励みます。R&Bにも接近、そして作り上げたのが本作です。この誉れ高きAORの名盤はいつか聴いてみたいと思っていたもので、今般、ようやくじっくりと堪能。期待通りのサウンドに大満足の内容でした。

実は本作のプロデューサーはスティーヴ自身とフランク・マーシャル。フランク・マーシャルと聞いてピンと来た方は映画通の方ですね。そう、フランク・マーシャルとは、あの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「インディ・ジョーンズ」の超大物映画プロデューサー。フランクはザ・バンドの映画「ラストワルツ」のライン・プロデューサーを務めたり、近年はビージーズの映画も手掛けるほどの音楽好き。そんなフランクが、当時スティーヴの音楽を人伝に聴き、「次作は自分も参画したい」と自ら申し出たという驚きの経緯。参加ミュージシャンのマット・マーシャル(B)、フィル・マーシャル(G)は彼の兄弟。

それからファーストにも参加していたリーランド・スカラー(B)。彼がLAミュージシャン(スティーヴ・ルカサー、マイク・ベアード、ジェイ・ウィンディング、スティーヴ・フォアマン)を連れてきたとのこと。想像通り、リーランドって人間的にもいい人ですね~。このLAミュージシャンがスティーヴの楽曲の良さを引き出し、AOR仕立ての本作発表に至りました。

フランク、リーランドという業界の重鎮が積極的に関わった本作が不芳な内容のわけがないですね。全く期待を裏切りません。
まずは素晴らしいオープニングナンバーを。気分一新、1日のスタートに聴きたい素敵なAORソングの①「Got Me Moanin'」。2分30秒強の短い曲ですが、当時の典型的なAORサウンドです。キャッチーなメロディと軽快なリズム、気分がウキウキしてきます。印象的なクラビネットはジム・コックスのプレイ。

2曲目は一転、フォーキーなナンバーの②「Rakin' Leaves In The Wind」が登場。ファーストアルバムに収録されていそうなナンバーで、切ないメロディが胸に染みます。これもいい曲ですね。味わい深い…。スティーヴのヴォーカルも暖かみを感じさせます。
本来は「Got Me Moanin'」のような曲よりも、こちらがスティーヴの持ち味なんでしょうね。

マーク・ジョーダンのファーストやセカンドに収録されていそうな③「All In Love Say "I"」。こちらも当時流行っていたAORですね。恐らく元々はフォーキーな味わい深いものが原曲だったと思われますが、それを軽快なカッティング・ギターに載せて、軽いブルー・アイド・ソウルな味付け、そしてアップテンポなアレンジで、素敵なAORソングに見事に仕立て上げております。これもいいですね。

ジャージーで4ビートジャズ風な⑤「Where Do I Fit In」はマイケル・フランクスを彷彿させます。
こちらは2018年の弾き語り映像をどうぞ。すごく素敵な演奏、そして味わいあるスティーヴのヴォーカルが楽しめます。発表から40年近く経っても、こうして歌い続けているスティーヴ、いいですね…。

⑦「Without You」はフュージョン・タッチな爽やかなナンバー。
この曲のみスティーヴ・ルカサー(G)、マイク・ベアード(Ds)、ジェイ・ウィンディング(Key)等が参加。確かにギターソロは他の曲よりもハードなトーンで、言われてみればルークっぽい。曲自体は非常に心地よいナンバーで、スティーヴのヴォーカルも非常に軽い感じで歌ってますね。よく聴くとリーランドのベース・ラインが非常にいい味出してます。

個人的には⑨「Friendly Stealer」のような派手さはないけど、キャッチーなナンバーが大好きです。
歌詞の内容はよく分かりませんが、ちょっと洒落たラブソングなんだろうなあと想像出来ます。スティーヴ・イートンってこういうキャッチーなナンバーから、フォーキーで胸に染みる曲まで、ホントにいい曲作る方ですね。

スティーヴ・イートンは非常に寡作な方ですが、今も現役。地元、アイダホで地道に活動されております。



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