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Leo Sayer「Thunder In My Heart」(1977)

先々週ジェフ・ポーカロの伝記の日本語訳版が発売され、すぐに購入しました。
ディスクユニオンが発売した「ジェフ・ポーカロ イッツ・アバウト・タイム」って本ですが、Amazonの書評は私が最初に評価しております(笑)。
よく考えたら、敬愛するジェフ・ポーカロがどういう環境で、どうやってドラムを覚え、スティーリー・ダンでのプレイをするまでの経緯、TOTO結成の経緯等々、あまりよく分かっていなかったことに今更ながら気付かされました。またこの本には、各ミュージシャンが如何に、人としてのジェフ・ポーカロが大好きだったのか、余すことなく書かれてます。AORファンにとってはマスト本であり、いろいろな気付きがあると思いますよ。

ところでこの本には多くのミュージシャンが、ジェフに対する思いを語ってますが、ちょっと意外だったのがレオ・セイヤーとの深い関係。ということで今回はレオ・セイヤーのアルバムをご紹介致します(ちなみにジャクソン・ブラウンが語る、ジェフの「Pretender」でのプレイの件も印象的でした)。

レオ・セイヤーは英国のシンガーソングライターで、1976年に初めて米国LAで4枚目のアルバム「Endless Flight」を制作します。プロデューサーはリチャード・ペリー。リチャードが所有している「スタジオ55」で録音されました(後にTOTOもこのスタジオでデビューアルバムを録音することになります)。リチャードはレオをヴォーカリストとして売り出そうとしたらしく、最初は一切自作の曲を採り上げるつもりはなかったようです。レオもそんなリチャードの姿勢に好意的でなかったのですが、リチャードが連れてきたミュージシャン(ジェフ、ラリー・カールトン、リーランド・スカラー、レイ・パーカー・Jr等々)を見て、納得したそうです。

そこでレオは初めてジェフと出会い、すぐに意気投合…。このアルバムではジェフは2曲だけ、他はスティーヴ・ガッド、エド・グリーン等が叩いてますが、同じくリチャード・ペリーがプロデュースした次作「Thunder In My Heart」ではなんと全曲をジェフが叩いてます。そして「Endless Flight」と「Thunder In My Heart」、全体的に明らかにサウンドがタイトに変貌しておりますが、それは申すまでもなく、ジェフが全曲叩いているからなんですね(前置き長すぎてすみません)。

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このアルバムの参加ミュージシャンが凄い。ジェフ・ポーカロ(Ds)を筆頭に、エイブ・ラボリエル(B)、デヴィッド・ハンゲイト(B)、ラリー・カールトン(G)、レイ・パーカー・Jr(G)、フレッド・タケット(G)、リー・リトナー(G)、ジェイ・グレイドン(G)、マイケル・オマーティアン(Key)、トム・スノウ(P)、デヴィッド・ペイチ(Org)…。英国ミュージシャンのレオ・セイヤーのバックにウエスト・コースト・オール・スターズですね。

あとちょっと気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、ここにはTOTO結成前夜の、ジェフ、デヴィッド・ペイチ、デヴィッド・ハンゲイト、そしてボビー・キンボールまで参加しており、これら面子全員が揃った作品が1曲だけ収録されてます
それが⑩「We Can Start All Over Again」というレオ、ブルース・ロバーツ、トム・スノウ共作曲。ギターはリー・リトナーとレイ・パーカー・Jr。アレンジはジーン・ペイジ。
コーラスにボビーのヴォーカルが…。ジーン・ペイジらしいストリングス・アレンジ。ジェフ&デヴィッドのタイトなリズム隊がこの素敵なAORにピッタリ。そしてそれ以上にレオ・セイヤーのヴォーカルがかなりいい!なんだかTOTOのヴォーカルっぽくないですか…。
実は冒頭のジェフ・ポーカロ本にはこの当時のレオ・セイヤーの話として、TOTOのリードヴォーカルに誘われた件が載っております。この頃、レオはジェフとペイチと頻繁にツルんでいたみたいで、彼等から誘われ、スタジオ55で試しに「Hold On The Line」を歌ったらしい。ただ結局レオはこの話を断り、SSフールズにいたボビー・キンボールにお鉢が周ったという経緯。レオはこの本で「ここが僕の分岐点だった…」と半分悔やむような感じで語ってます(笑)。レオ・セイヤーとTOTOってそんなに近しい関係だったとは、知らなかったです。

かなりファンキーチューンの②「Easy To Love」。こちらはアルバート・ハモンドとレオの共作。
すぐに気づきますよね。TOTOっぽいって。アレンジがデヴィッド・ペイチですから。そしてこの曲、ボズ・スギャックスの「Jojo」に似てますよね。最高にファンキーな1曲。ここでもジェフのドラムが絶妙なグルーヴ感を醸し出してます。そして絶妙なバックビート感が素晴らしい…。

これもイントロが何かの曲に似ている③「Leave Well Enough Alone」。
私にはドナルド・フェイゲンの「New Frontier」に聞こえてしょうがない。トム・スノウとケリー・チャプターの共作。ジェフ&デヴィッドのリズム隊。ピアノとシンセはトム・スノウ。

こちらもトム・スノウが登場。トムとレオの共作の⑤「It's Over」。
めちゃめちゃヘビーなドラムです。力強いトム・スノウのピアノが印象的。レオのハイトーン・ヴォイスが冴えわたります。ここでのレオのヴォーカルなんかはTOTOに合っているなあって思わせます。

レオとマイケル・オマーティアンの共作の⑥「Fool For Your Love」は軽快なシャッフル・ナンバー。
ジェフ自身はシャッフルは苦手と語っていたようです。でもやっぱりジェフの十八番はグルーヴィーなシャッフル・ビートですよね。この曲もまたボズ・スギャックスの「Lido Shuffle」を思わせる軽快なナンバー。レオ・セイヤーのヴォーカルも生き生きしてます。レオってポップス・シンガーとばかり思っていたのですが、ロックしてますね~。

またまたシャッフル・ビートの⑨「Everything I've Got」はレオとジョン・ヴァスティーノの共作。
アレンジはジム・ホーン。そのジムのサックス・ソロの後、ジェフが印象的なタム打ちを披露します。ここでのパートは全体的に何度も登場しますが、タム打ちはここでしか披露していないんですよね。女性コーラスもボズ・スギャックスの楽曲に出てくるようなアレンジ。

どうですか~、レオ・セイヤー。かなりTOTOっぽいんですが、その傾向は本作に顕著です。それはやはり全曲でジェフが叩いているからなんですよね。
それにしてもレオ・セイヤーって今更ながらいい曲書くし、ヴォーカリストとしても魅力的です。ちょっと他の作品もじっくり聴いてみようかな。

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