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John Hall「Power」(1979)

「西のドゥービー・ブラザーズに対して東のオーリアンズ」、当時はそんな言われ方もされていたようですが、ウエストコーストサウンド風なオーリアンズが結構好きなんですよね。リーダーのジョン・ホール、彼のソロアルバムはそれほど聴き込んでなかったので、今回、彼のソロでは一番有名なアルバム「Power」をチェック。想像通り、いや想像以上に自分の好みでした。

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ジャニス・ジョップリンの「Half Moon」の作者として注目を集めたジョン・ホール。当時からセッション・ギタリストとしても知られた存在で、オーリアンズ結成前(1972年デビュー)からソロアルバムを発表しておりました。オーリアンズでの活躍は皆さん、ご存じの通りですが、結局ジョン・ホールは1977年にグループを脱退。1978年にセカンドソロ「John Hall」を発表。本作はその翌年に発表されたサードソロです。

本作発表前の1978年11月、ジョン・ホールはニューヨークに建設予定だった原子力発電所の建設反対に賛同を得て貰うべく、ジャクソン・ブラウンボニー・レイットを訪ね、同意を取り付けてます。そして立ち上げた団体が「MUSE」。これは原子力以外の安全エネルギーを推進するミュージシャン同盟で、1979年9月にMUSEが主催したコンサートは多くのミュージシャンが参加しました。こうした活動と並行して本作は制作されていった訳です。

そしてその時のコンサートのテーマソングとなったのが②「Power」。タイトルからすると力強い曲のイメージですが、実は全く逆で、メロディは実にハートウォーム。しかしながら詞は反核をテーマとしたもの。
アップしたのはまさにそのコンサートの映像。ジョンと一緒に歌っているのはカーリー・サイモン。ジャクソン・ブラウンもリードを取ってます。グラハム・ナッシュの姿も見られます。こんな優しいメロディの楽曲なのに、観客のノリが凄い。まさに音楽のパワー…を感じさせる映像です。またこの当時のミュージシャンの心意気を感じるし、こうしたことを企画したジョンの行動力にも脱帽…。これが後にジョンを政治の世界へ引き込んでいくんですね。

アルバム自体は、トップの①「Home At Last」がウエストコースト系ロックっぽくていいですね。
サビが日本人好みの、ちょっとほろ苦さを感じさせるもの。本作中、私の一番のお気に入りのナンバーです。日本でも、こんなメロディの楽曲があったような気がするのですが思い出せません。それくらい聴きやすい楽曲ですね。ジョンの間奏でのギターソロ、曲中で鳴っているギター、エンディングにかけてのギターソロ、どれもが素晴らしい。バックのミュージシャンは殆どが若手ミュージシャン。

超ファンクチューンの④「So」。こちらは残念ながら音源のアップはないようです。
この曲のベースはトニー・レヴィン。サビのベースが強烈です。ブンブン唸ってますね。本作は多彩な楽曲が詰まったアルバム。聴き所満載です。

⑥「Firefly Lover」はジョンのヴォーカルが穏やかなミディアムテンポのナンバー。
コーラスがどことなくオーリアンズっぽく、ちょっとメロウなR&B的要素もあったりして。

軽快なインストと超有名楽曲のセルフカバーの⑦「Arms/ Half Moon」。
ジョン・ホールのキレ味鋭いギターが楽しめるインストナンバーの「Arms」。間奏のギターソロはスライドギターでしょうか。この曲、素晴らしいフュージョンナンバーに聴こえますね。スタッフのようなニューヨーカー的というより、どこか土臭く感じるのはジョンの音楽性故でしょうかね。これに続く「Half Moon」はお馴染みのナンバー。こちらもストラトキャスターの音色がクリアに楽しめるナンバー。カッコいいですね。
(こちらも動画はないようです)

その後、皆さんご存知のようにジョンは地元の議員から政治活動をスタート、2006年11月に行われたアメリカ中間選挙では、ニューヨーク州の19区から民主党より下院議員に立候補し見事当選、2011年まで下院議員を務めていました。今は悠々自適な生活。
YouTubeをウォッチしていたら、なんと2021年5月13日にジョンが新曲「Alone Too Long」をアップされてました。テレワーク風な映像、未だに現役だったんですね。R&B色の濃いなかなかの楽曲です。



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