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The Beach Boys「The Beach Boys」(1985)

またまた蒸し暑くなってきましたので、やっぱりビーチボーイズ。
ただ熱心なビーチボーイズファンの私でも、このアルバムは素通りしてました。ここからのビッグヒット曲の「Getcha Back」はリアルタイムで聴いていたのですが…。
2012年にビーチボーイズは奇跡的に全曲新曲のアルバムを発表しておりますが、ウィルソン兄弟がいるビーチボーイズとしては最後のオリジナルアルバムとなってしまった本作。内容も微妙なんですが、いくつか驚くこともある作品なんですよね。

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ビーチボーイズで唯一のサーファーだったデニス・ウィルソンが皮肉も水死してしまったのが1983年。そして再びビーチボーイズは一致団結を図り、このアルバムを仕上げたのです。
ただしブライアン・ウィルソンはまだセラピストのユージン・ランディに頼る生活をしており、相変わらずブライアンの作品にはユージンの名前が共作者としてクレジットされてます。それでも「Getcha Back」のイントロのファルセット・ヴォイスを駆使したコーラスを聴いた多くのファンは涙したことでしょう。
ちなみにプロデュースはスティーヴ・レヴィン。当時カルチャークラブで名を上げた新進気鋭のプロデューサーです。80年代サウンドの時代に乗ろうとしたビーチボーイズ・・・、涙ぐましいです。

何と言っても5年振りのオリジナル・アルバム。そしてビーチボーイズ節顕在の①「Getcha Back」。この曲はマイク・ラヴとテリー・メルチャーの共作ですが、一説にはブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」からインスパイアされた作った曲とも云われてます(確かに似てます)。
やっぱりビーチボーイズのコーラスはスゴイ。一説には当時スティーヴは5人それぞれにマイクを立てて収録しようとしたところ、ビーチボーイズはそれを断り、1本のマイクで収録したとの逸話も残されてます。

このアルバムでの最初の驚きは、何とあのゲイリー・ムーアが2曲、参加していること。これはプロデューサーのスティーヴがゲイリーをプロデュースしていたことからだと思われますが、それにしても意表を付く人選です。④「Maybe I Don't Know」がその意外な1曲ですが、作者はカール。
カールはこの5年の間に2枚のソロアルバムを発表しており、この楽曲はそういったカールのソロアルバムに収録されるべきものだったのかもしれません。とにかくゲイリーのギターが浮きまくってます(笑)。

昔からのファンには嬉しい⑥「California Calling」は完全に「サーフィンUSA」を連想させる作り。アルとブライアンの共作。

そして問題の1曲が⑦「Passing Friends」。
何か問題かって、この作品の作者、なんとボーイ・ジョージロイ・ヘイなんです。エイティーズ・ファンなら御馴染みですね、カルチャー・クラブのメンバーです。これもスティーヴ繋がりですが、ボーイ・ジョージの売名行為なのか、ビーチボーイズがカルチャークラブにあやかったのか・・・。全くもって理解不能です。
一体ビーチボーイズはどこへ行こうとしているのか、冷静な判断が出来ない状況であったのでしょうか。
ちなみに楽曲は・・・、凡庸なポップスですね。カールが歌ってますが。

最後の驚きは⑩「I Do Love You」の作者、スティーヴィー・ワンダーです。
カールはR&Bが好きだったようなので、このスティーヴィーからのプレゼントは狂喜乱舞したことでしょう。
もうイントロのハーモニカからスティーヴィーの世界が拡がります。作品自体は素晴らしいものですし、やっぱりカールは歌が上手い。
洗練されたポップスとでも言いましょうか・・・、でもやっぱりスティーヴィー・ワンダーの曲ですね。ビーチボーイズがやる必然性はあったのでしょうか。

このアルバム、実質的にはビーチボーイズ最後のオリジナルアルバムとなってしまいました。その最後の楽曲が⑪「It's Just Matter Of Time」(CDには⑫「Male Ego」が収録されてますが、これは当時はシングルB面だった曲で、ボートラ)。ブライアンの楽曲で、リードヴォーカルはブライアンとマイク。ノスタルジックな3連系のロッカバラードです。ビーチボーイズらしい1曲で、結構好きですね。

1998年、カール・ウィルソンが亡くなります。ブライアンが廃人同然だったなかで、音楽的な支柱となったのがカール。「天使の歌声」とも称されたカール。カールが亡くなった時点で、もうビーチボーイズは存在し得ない。それはブライアンがいちばんよく分かっているのだと思います。
(そしてその後、2012年、ブライアン・ウィルソンがいるビーチボーイズとして、全曲新曲のアルバムを発表しますが…)

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