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Bobby Charles 「Bobby Charles」 (1972)

犬好きには堪らないジャケットです。ボビーが池のほとりで愛犬とじゃれてる日常の風景。池に反射した姿もアングル的に素晴らしい。要するにここでの音楽は飾りっ気なしの、とても土臭い、アーシーなサウンド。ジャケット通りの音楽が拡がってます。

ボビー・チャールズって日本では知名度低いかもしれません。ビル・ヘイリーがヒットさせた「See You Later Alligator」の作者といった方がいいかもしれません。フィフティーズ・ロックンロールのライターだった訳ですが、本作でのサウンドはそれらとはまったく違う、とてもスワンプな、心の落ち着くサウンドなんですね。

ボビーは70年代早々にニューヨーク州ウッドストックに移り住み、そこで同じ住民だったザ・バンドと交流を深めます。彼等から相当の影響を受けたのかもしれません。本作はザ・バンドのリック・ダンゴジョン・サイモン、そしてボビーのプロデュース。ロビー・ロバートソンを除いたザ・バンドのメンバーや、エイモス・ギャレットデヴィッド・サンボーン等が参加。特にタイトなリヴォン・ヘルムのドラムがいいですね。

このアルバム、とにかく最初の3曲の流れが素晴らしい。アルバムトップの①「Street People」はかなりスワンピーな1曲ですが、実にカッコいい。この土臭さが堪りません。リック・ダンコの唸るようなベース。エイモス・ギャレットのいぶし銀ギター。そしてここではリヴォンのドラミングが素晴らしいのです。バスドラを突然連打したり、シンバル(チャイナシンバル??)を織り交ぜたり。あと鈴の音やカウベルなど、パーカッションも相当後ろで鳴ってますね。

②「Long Face」は一転して明るいムードの、でもやっぱり土臭い楽曲。ちょっとニューオーリンズ系の香りも。やぱりここでもリヴォンのドラムが重たいですね。オールドタイミーなピアノはガース・ハドソンでしょうか。いや、もうこれはザ・バンドの音、そのものですね。

そして3曲目が③「I Must Be In A Good Place Now」。①②とは一転、今度はいぶし銀バラードが続きます。ボビーのしぶいヴォーカルと楽曲が見事にマッチし、心に染みます。この①~③の流れが本作の魅力であり、永らく本作が名盤とされる所以なのかもしれません。

⑥「Small Town Talk」はリック・ダンコとの共作です。もちろんリックもソロアルバムで披露していますが、ボビーのバージョンの方が素朴です。ひたすらバッキングに徹しているキーボードの音色が魅力的です。春本番の今日この頃、こんなGood Time Musicに浸り、ボーッとしていたいですね。あ~、まどろんでしまいます。

⑨「I'm That Way」。軽快なスワンプ系ロックンロール。この時代のボビーならではのロックですね。ブギウギ調のピアノがニューオーリンズ系っぽい。

このアルバム、絶対に1回聴いただけで判断してはいけません。何回も何回も聴いて、そして良さが分かってくるアルバムなんです。ボビー・チャールズは寡作な方でしたが、2010年に亡くなられてます。残念ですね。


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