見出し画像

ゴダイゴ「Dead End」(1977)

ゴダイゴってどういうイメージをお持ちでしょうか?
やはり親しみやすいメロディ、大衆音楽を英語でやっているバンド…、みたいなイメージでしょうか。でも初期のゴダイゴはエッジの効いたロックバンドでした。その真骨頂が発揮されたアルバムが、本作「Dead End」です。彼等のセカンドアルバムで「西遊記」がブレイクしたのは本作発表の1年後ですね。

画像1

ゴダイゴのファーストアルバム「新創世記」は、もともとはタケカワユキヒデのソロアルバムとして制作がスタートし、そこに「ミッキー吉野グループ」のメンバーが参加、そこでゴダイゴ結成の話となり、このアルバムがゴダイゴのファーストアルバムとなりました。その後、ドラムにトミー・スナイダーが加入し、一般的に知られるゴダイゴのメンバーが形成。本作が制作されます。そういった意味では、本作が実質的なデビューアルバムとも言えます。

本作を一聴して云えるのは、変化球が多く、ロック色の濃いアルバム。このアルバムからシングルカットされた曲はないことからも分かる通り、それぞれの楽曲をアルバムの中の1曲として聴くべきもので、商業的な楽曲ではないものの、ハイクオリティな楽曲が並んでおります。

まずはオープニングらしいナンバーの①「時の落とし子(Millions Of Years)」。
作詞は奈良橋陽子とトミー、作曲はタケカワユキヒデ、アレンジはミッキー吉野。演奏はストリングスのみで、一瞬タケカワユキヒデのソロアルバム…と錯覚を覚えてしまいます。タケカワユキヒデが紡ぎだすメロディが美しい。個人的にはタケカワユキヒデって日本のポール・マッカートニーじゃないか、と思ってます。

美しいナンバーに続くのが、R&B調の②「In The City」。
こちらは作詞が奈良橋&トミーと①と同じですが、作曲はミッキー吉野。リード・ヴォーカルはトミー。一説にはトミーが書いた詞に、プロデューサーのジョニー野村が(奥さんの)奈良橋陽子の歌詞に一部修正したらしい。トミーとしても不満だったでしょうね。楽曲は浅野孝巳が弾くギターがファンキーで、グルーヴ感を煽ってますね。ここで使われているギターはローランドと共同開発したギターシンセのようで、かなり特徴のある音を出してます。この曲、イントロがビートルズの「You Can't Do That」に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。

プログレ風でもあり、ポップでもある④「Dead End~Love Flowers Prophecy」は人気の高いナンバー。アップしたのは当時の貴重な映像。しかも「レッツゴーヤング」出演時のもの。「レッツゴーヤング」ってアイドルが出演する番組ってイメージがあったのですが、当時の尖がったロックをやっていたゴダイゴが出演していたとは…驚きです。しかも楽曲はかなり変化球(笑)。1978年1月出演ということは、ビッグヒットした「ガンダーラ」がこの年の10月に発表されていることを考えると、まだまだゴダイゴもマイナーだった筈。それにしても女性3人のコーラス隊は要らないだろうと思うのですが。

ミッキー吉野とタケカワユキヒデの各々の曲を繋げた⑥「Panic~Images」。
二人の個性の違いが楽しめます。Panicの方はサイケなイントロにちょっとビックリ。このイントロからいきなりハードロック調に。そしてこの激しいギターリフの後、突然ピースフルなImagesが何の前ぶれもなく始まります。この動と静の組み合わせ…、不思議ですね。この2曲の組み合わせ、後にミッキー吉野は「パニック状態に陥った時、いろいろなイメージがフラッシュバックされる、走馬灯のように…、それを表現したかった…」ようなことを語ってます。本アルバムのタイトル「Dead End」を象徴するような楽曲かもしれません。

恐らく⑨「血塗られた街((Crime is) The Sign of the Times)」のイントロを聴いて、これがゴダイゴの演奏であることが分かる方って殆どいらっしゃらないかと思います。
ゴダイゴの楽曲の中でも最もハードロックしているナンバー。変拍子は入っているし、ドラムソロは入っているし、とにかくアバンギャルドな1曲。後に国際児童年協賛歌である「ビューティフル・ネーム」を演奏することとなるバンドとは思えない演奏です。アイデアの宝庫、ミッキー吉野らしい楽曲。

エンディングの⑩「御国」は素晴らしいバラードです。

ミッキー吉野の作品をタケカワユキヒデとトミー・スナイダーが歌い上げてます。メロトロンを用いて、かなりスペイシーなアレンジに仕上げてますね。エンディングにかけてのミッキー吉野のシンセも素晴らしい。2006年の東大寺で行われた再結成ライブで、この曲は間に「釈迦の歌」を挟み込んで歌われてますが、4分30秒過ぎからのサビの演奏、そして6分10秒過ぎからの浅野孝巳のギターソロが泣かせます。浅野さんは昨年5月に亡くなられてますね。浅野さん、有難う。

翌年、これで売れなければ解散しようと背水の陣で発表した「ガンダーラ」が空前の大ヒットを記録。以降、作曲:タケカワユキヒデ、編曲:ミッキー吉野が基本となり、ゴダイゴはポール・マッカートニー風なタケカワ路線を歩むことに。ただ、エッジの効いた初期ゴダイゴが大好きというファンは結構いらっしゃいますね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?