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サディスティック・ミカ・バンド「黒船」(1974)

海外で評価された洋楽的、日本のロックアルバム

いわゆる「名盤」というヤツですが、この作品、なぜか長らく未聴でした(そういう方、多いのでは?)。アルバムを買ってまで聴こうとは思わなかったので。ただAmazon Music Unlimitedだと、聴ける作品は聴かなきゃ損って感じで、片っ端から聴いており、これもその中の1枚でした。
じっくりこの作品、堪能してますが、日本のこの時代背景を考えると、スゴイ作品です。正直、ぶったまげました。

サディスティック・ミカ・バンドは、当時フォーククルセダーズの加藤和彦の大ファンだった学生時代のミカが、「ギターを教えてください!」と加藤の楽屋に押し掛けたところからスタートします。その後1970年に加藤和彦とミカが結婚。翌年、この二人につのだ☆ひろ高中正義が加わり、「サイクリングブギ」でデビューを果たします。
ファーストアルバムはドラムがつのだ☆ひろから高橋幸宏へ。ベースは小原礼を迎えて制作。商業的にはヒットには至らなかったものの、ロンドンでこの作品が評判となり、それを聴いたクリス・トーマスが次作のプロデュースを申し出、本作制作に至ります。

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ファーストトラックの①「墨絵の国へ」から、もう洋楽っぽい。そもそも長い長いインストのイントロからして、ヒット性を無視し、トータルアルバムとしてのコンセプトを感じさせ、この時代の邦楽には恐らくなかった斬新な作品と思われます。このイントロから、牧歌的な優しい歌がスタート。このイントロと歌の部分は1曲目と2曲目と分けてもいいのに、ワンパッケージとして考えるべきもので、なんとなく1曲目から和みます。

ところがその和みから一転、緊張感のあるナンバーが②「何かが海をやってくる」。もちろんこれは後のトラックに繋がる「黒船」を連想させるもの。グルーヴィーなベース、弾きまくるギター、とにかくファンク指数の高いナンバーです。ここではよりスピーディーなライブバージョンを。ベースは後藤次利

④~⑥「黒船(寛永6年6月2~4日)」。これがまた洋楽テイスト溢れる変拍子を交えたファンクチューンなんですね。頭のドラムのフィルインからして、ド・ファンク!このドラムはユキヒロさんですが、私の中ではYMOのユキヒロさんのイメージしかないので、ちょっとビックリ。実は(今更ですが)超絶テクニシャンのドラマーだったんですね。演奏自体、サディスティック…恐るべしって感じです。アップした音源は「高中正義ベスト」からですが、音源自体はサディスティック・ミカ・バンドのものです。

⑧「どんたく」は不思議なナンバー。メロディは和テイストを感じさせるものの、クラビネットが使われており、演奏はファンキー。実にユニークなナンバーです。ヴォーカルはトノバン(加藤和彦)。合いの手のコーラスは小原さんでしょうか。

⑩「塀までひとっとび」はサディスティック流のロック。実にカッコいいナンバー。当時のバンドでいえば、ティンパンアレーとサディスティックが人気を二分していたと思いますが、この曲の作詞はティンパンのドラマー、林立夫さんのペンによるもの。作曲は小原さん。
小原さんの唸るベースとコラボするリズミカルなユキヒロさんのドラム。そして高中さんの縦横無尽なギターがカッコいい。後に「SUKI SUKI SUKI」というタイトルでシングルリリースされたナンバー。
アップした映像は1974年に郡山で行われたロックフェスティバルでのもの。当時の日本のバンドで、こんなテクニカルでカッコいい演奏をしていたバンドがいたなんて、驚きです。

ここまで映像をみて、まだサディスティック・ミカ・バンドのスゴさが分からないかたは是非次の映像をご覧ください。こちらは1975年10月の英国TV番組「Old Grey Whistle Test」に出演した際の映像。この時、サディスティック・ミカ・バンドはロキシーミュージックの前座としてツアー中だったもの。この前座公演でも完全にロキシーが食われてしまった話は有名ですね。   既にサードアルバムを発表した後で、メンバーはベースは小原礼から後藤次利へ。キーボードは今井裕。曲はサードアルバムから「WA-KAH/CHICO」と前述の「SUKI SUKI SUKI」。

後に桐島かれんや木村カエラを迎えて、何度か再結成されてますが、中心人物の加藤和彦さんの逝去に伴い、もうこの素晴らしいバンドの姿を見ることは出来なくなりました。
木村カエラを迎えたミカバンドの「タイムマシンにおねがい」を最後にアップしておきます。ゲストに奥田民生がギターで参加してます。こちらも貴重なカッコいい映像!こちらは2007年3月の映像。トノバン、非常に楽しそうですが、これからわずか2年後に彼は自ら命を絶ってしまいます…。


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