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Melissa Manchester「Don't Cry Out Loud」(1978)

ドゥービー・ブラザーズの11年振りの新譜が心地いい。3人となったドゥービーですが、ギタリスト3人のバンドとなったこともあり、爽快なギターバンドになってますね…。

さてさて、今回はドゥービーとは同時期に活躍していたメリサ・マンチェスターです。メリサ・マンチェスターというとコンテンポラリー系シンガーというイメージで、80年代をリアルタイムに過ごしたものとしては、彼女のヒット曲「You Should Hear How She Talks About You」が印象的。正直、MOR的なシンガーというイメージだったので、長年スルーしていたのですが、今回ご紹介するアルバムを最初に聴いたとき、かなり驚きました。とにかく「黒い」アルバムなんですよね。それもそのはず、プロデューサーはリオン・ウェア。バックも彼の人脈の豪華ミュージシャン。素晴らしいアルバムでしたので共有させて頂こうかなと。

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メリサは1977年に発表した前作「Singin’…」でリオン・ウェアの「I Wanna Be Where You Are」をカバーします。このことが縁でリオンとタッグを組んで、ソウルフルなアルバムを作ろうとしますが、アリスタレコード社長のクライヴ・デイビスはヒット曲という観点からピーター・アレンとキャロル・ベイヤー・セイガー共作の「Don't Cry Out Loud」の収録を勧めます。
そういった経緯からタイトル曲の③「Don't Cry Out Loud」だけはリオンのプロデュースではないんですね。そしてクライヴの狙い通り、この曲はシングルカットされてヒットします。

この曲のイメージでアルバムを聴くと、全く違う印象に驚くし、逆に言えば本当に聴いてほしいソウル好きなリスナーにはリーチしていなかったアルバムと云えるかもしれません。まさに私がその一人でしたので(苦笑)。

まずはオープニングの①「Shine Like You Should」に驚いてください(笑)。
イントロのソウル風味たっぷりなオーケストラ・アレンジはジーン・ペイジ。ドラムはジェームス・ギャドソン、ベースはチャック・レイニー、ギターはデヴィッド・T・ウォーカー、キーボードはリチャード・ティー、コーラスにリオン・ウェア。如何にもこのメンバーが奏でそうなサウンドですよね。でもこの曲、メリサが単独で書き上げた楽曲なんですよ。メリサって歌もめちゃめちゃ上手いですが、ソングライティング能力も高い。それにしてもこのサウンドはCTIレーベルで発表したパティ・オースティンにも似てます。メリサのヴォーカルも実にソウルフル!

リオン・ウェアとメリサの共作の④「Almost Everything」は完全にメロウなリオンの世界。
ミュージシャンは基本的には①と同じですが、ギターにデヴィッド・T・ウォーカーに加えて、リー・リトナーが参加してます。イントロのギターはリーでしょうかね。アコースティック・ピアノはその弾き方でなんとなくリチャード・ティーって分かりますね。

タイトなリズム、ソウルポップな⑤「Bad Weather」はシュープリームスのカバー。スティーヴィー・ワンダーの作品。
原曲よりもソウルフル、演奏もかなりタイト。ドラムのジェームス・ギャドソンはモータウン系を結構叩いていましたが、多分原曲のシュープリームスの作品のドラムは彼ではないような気がします。だからこそ余計にメリサのバージョンの方が豪快に聞こえますね。この弾むようなソウル・ポップ、いいですね~。しかしメリサのヴォーカルも実に黒いです。メリサほどのブルーアイドソウル系女性ヴォーカリストって、あまりいないんじゃないでしょうか。

メリサとキャロル・ベイヤー・セイガーが共作した⑦「To Make You Smile Again」もソウル・ポップな名曲。後にキャロル自身もセルフカバーしてますが、キャロルのバージョンはジャージーなアレンジです。メリサのヴォーカルはパンチがあるので、こうしたアレンジの方が合ってますね。ジェームス・ギャドソンにしては珍しくリズミカルなドラムです。リチャード・ティーとの相性でいえば、このテのドラミングはスティーヴ・ガッドが一番フィットしますが…。ジェームスのドラミングはどことなく重々しい。エンディング近くで聴けるハーモニカはトミー・モーガン。余談ですが、恐らくこのキャロルのバージョンをカバーしたと思われる西城秀樹の「To Make You Smile Again」が絶品。せっかくなのでリンク貼っておきます。

アルバム最後は⑩「Singin From My Soul」。
イントロからメロウですね~。ジーン・ペイジがアレンジしたストリングスが、これでもかと煽るスィート・ソウルなバラードです。この曲のドラムはエド・グリーン。ギターはデヴィッド・T・ウォーカーと、本作だけ参加しているジェイ・グレイドン。ジェイらしいプレイが聞き取れないので、どこで弾いているのかは分かりません。

貴重なメリサのソウル・アルバム。メリサは次作「Melissa Manchester」ではケニー・ロギンスの「Whenever I Call You Friend」をカバーするなど、AOR系に戻ってしまいます。メリサ、少しはソウル系ミュージック、やりたかったんじゃないでしょうかね。

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