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The City「Now That Everything's Been Said」(1968)

キャロル・キングの瑞々しいバンド時代の良質な作品

バースの「名うてのバード兄弟」というアルバムが大好きなんですが、それを聴くと、ついつい本作も聴きたくなります。それはもちろん本作にバーズがカバーした②「I Wasn't Born To Follow」が収録されているから。バーズがカントリー仕立てにしたのに対して、オリジナルのシティはもっとアーシーな土臭い感じで、一瞬同曲とは思えない作りなんですよね。

本作はソロでキャロル・キングが大ブレイクする前の、ダニー・コーチマー、チャールズ・ラーキーと組んだバンドの唯一のアルバムです。名作!

まずロジャー・ニコルスやアソシエイションがカバーした①「Snow Queen」から名曲です。ワルツ調の不思議な雰囲気の曲。シンプルな演奏なのに非常に奥行きがあって、深閑とした世界が拡がりますね。意外とドラムのジム・ゴードンがこの曲の神秘さを盛り上げているような気がします。

私のお気に入りは④「Paradise Alley」。キャロル・キングらしい覚えやすく、ちょっと切ないメロディライン。バックで怪しく絡むダニーのギターも好きです。

⑤「Man Without A Dream」は言わずと知れたモンキーズがカバーした名曲。個人的にはこの曲に関してはモンキーズに軍配を上げたいです。シティのヴァージョンも②と同様、アーシーな感じがいいのですが、モンキーズのアレンジは見事にソフトロック化しており、この曲の持つメロディの良さを十分引き出してます。この曲の収録されたモンキーズのアルバムレビューもご参照下さい。

⑥「Victim Of Circumstance」はなぜか違和感を覚えるんですよね。この曲は妙に60年代ポップスのメロディ・アレンジ・サウンドです。もちろん全曲60年代の収録ですが、他は曲やアレンジが秀逸で、時代の流れを感じさせません。でもこの⑥は妙に「60年代」の香りを漂わせます。もちろんチャールズの唸るベースとか、大好きな曲ですが。

⑪「That Old Sweet Roll (Hi-De-Ho)」はブラスロックの雄、BS&Tのカバーがあまりにも有名ですね。私もイントロの ♪ Hi de ho~ ♪ を聴いて、直ぐにソウルッフルなデヴィッド・クレイトン=トーマス(BS&Tのヴォーカル)の熱唱を思い浮かべてしまい、キャロルの危ういヴォーカルに苦笑してしまいました。これも名曲ですね。

最後を飾るのは⑫「All My Time」。これも名曲です。♪ All My Time~ ♪ のサビ、美しいです。これって誰かカバーしていたでしょうか?意外と知られてない名曲のような気がします。

キャロルキングはこの後1枚ソロを発表し、1971年にあの名作「Tapestry」を発表し、ビッグスターとなっていきます。本作がなぜ売れなかったのか?
発表当時はこうした素朴なサウンドが敬遠されていたのかもしれません。時代を先取りしていたのでしょう。でもここにもポップスの素晴らしさが感じられます。


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