はっぴいえんど 「はっぴいえんど」 (1970)
永らくこの日本のロック史の幕開けとなる重要なアルバムを無視し続けてきましたが、10数年前にご縁があり、アルバムを購入。それから自分の定番アルバムになっております。
多くの方々がご存じのはっぴいえんど。もちろんメンバーは細野晴臣、松本隆、大瀧詠一、鈴木茂の後の日本のロック・歌謡界を支え続けていった4人です。
1969年6月、わずか3ヶ月で小坂忠率いるエイプリル・フールを細野と松本が脱退することを決意。同年10月に大滝と鈴木が合流し、バレンタイン・ブルーを結成。それがのちのはっぴいえんどとなります。
そして衝撃のデビューアルバムは1970年8月に発表されます。ただし当時はそれほど売れなかったようですね。ちょっと風変わりなバンドとして見られていたようです。
1960年代後半の海外のロックは、サイケデリック・ロック、アートロックといったエッジの効いている音楽がブームとなる一方で、スワンプ系の土臭い音楽も認知されてきておりました。
はっぴいえんどはそういった音楽、つまりバッファロー・スプリングフィールドやザ・バンド、モビー・グレープといったバンドからの影響が垣間見られる、当時の日本の歌謡界とは全く異質の音楽をクリエイトしていきました。それは曲だけではありませんでした。松本隆の紡ぎだす詞は「和心」が滲み出た、これもまた斬新なものでした。
その特徴がよく現れた①「春よ来い」。
いきなりニール・ヤングばりの熱いギターが聴けます。恐らく今の方々はこの1曲目で好き嫌いが大きく分かれるでしょうね。
演奏はバッファローの影がチラチラしますが、なんといっても注目はその歌詞。
♪ お正月と云えば 炬燵を囲んで お雑煮を食べながら 歌留多をしていたものです ♪
う~ん、なんとも独特な歌詞です。
随所に現れる鐘の音。歌詞に「除夜の鐘」が出てくるので、それと紐つけたアレンジなんでしょうね。春よ来い!と歌う大滝さんのヴォーカルもいいですね~。
ブルージーな②「かくれんぼ」。ここでは細野さんのベースが最高に渋いですね~。この淡々と進む曲と叙情的な歌詞、それを支えるベースが一体となった渋いトラックです。こんな曲は1970年の日本で作られていたこと自体驚くべきことだと思います。
フォーキーでカントリータッチの③「しんしんしん」は私のお気に入りです。またタムを駆使し、ハイハットをうまくアクセントとした松本さんのドラミングは斬新です。正直「春よ来い」の激しいアートロックをやっている同じバンドの演奏とは思えない、優しい演奏ですね。音楽の幅の広いところが、はっぴいえんどの魅力なんでしょう。
④「飛べない空」はモロにバッファローの「折れた矢」を連想させます。
テープの逆回転を用いたり、曲調がなんとなく似ていたり・・・。でもオリジナリティはしっかり持ってますね。
曲のイントロのカウントって、普通「ワンツースリーフォー」ですが、⑥「あやか市のどうぶつえん」では「ひーふーみーよー」です(笑)。これもかっこいいですね~。曲調はロックですけど、歌詞がユニークです。
⑨「朝」は地味ですけどすごくフォーキーで何かひっかかります。
のちにセカンドでは今もCMソングとなっている超名曲「風をあつめて」を発表しますが、その前夜の、まだこなれていない彼等を見る気がします。
まだまだ荒削りですが、非常に独創的な音と詞に驚いてしまう名盤ですね。そして彼等は超名盤「風街ろまん」を発表していくのです。
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