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James Taylor「Hourglass」(1997)

モンキーズのマイク・ネスミスの訃報に隠れて気付くのが遅れましたが、9日はデヴィッド・ラズレーが亡くなられました。
デヴィッド・ラズレー…、私の中では敬愛するジェームス・テイラーのバックヴォーカリストとしての印象が非常に強いですね。今回は時節柄、ジェームス・テイラーのクリスマス・アルバムをチョイスしようと思ったのですが、デヴィッド・ラズレーのコーラスが印象的な、私の大好きな曲をご紹介致したく、急遽「Hourglass」をチョイスしました。

このアルバムはリアルタイムで聴き込んでました。個人的な話で恐縮ですが、当時神戸に住んでおり、1995年の阪神大震災を経験。このアルバムを聴いていた当時は神戸も復興の兆しが見え始め、自分も仕事に明るさを見出していた頃でした。その当時に聴いていた音楽なので、妙に印象的なんですよね。
本作はハッキリ言って地味ですが、ジワジワとその温かさが分かってくるように渋いアルバムなんです。JTは本作発表当時、プロデューサーとして交流のあったドン・グロルニックが急逝したり、93年に兄のアレックス、96年に父親のアイザックが相次いで亡くなられたりと、様々な辛い経験を経たことが作風に影響していると思われます。

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当初はドン・グロルニックにプロデュースをお願いする予定だったようですが、ドンが96年に亡くなられたことからJT自身とFrank Filipettiがプロデュースしております。Frankは1985年発表の「That's Why I'm Here」でもJTと一緒にプロデュースしておりましたね。

ライナーノーツには「The Band」として以下のコアメンバーが参加。他に曲ごとにゲストミュージシャンを加えてます。
Bass:Jimmy Johnson
Drums, Percussion:Carlos Vega
Guitar:Bob Mann
Keyboards:Clifford Carter
Vocals:Arnold McCuller、David Lasley、Kate Markowitz、Valerie Carter

お気づきの通り、ここにはデヴィッド・ラズレー、並びにヴァレリー・カーターが参加していたんですね。この二人がバックでコーラスを取るJTの演奏を見てみたいと思いませんか?そしたら有りましたよ~。しかも私の大好きな③「Little More Time With You」の演奏が。
この曲は当時、ファーストシングルカットされました。グルーヴィーなシャッフルビートに、まったりとしたJTのヴォーカルが乗っかれば心地よいに決まってます。ここでの演奏、ドラムはスティーヴ・ジョーダン。他はレコ―ディングメンバーと一緒。つまりバックの4人のコーラス隊にデヴィッド(左から2人目)もヴァレリー(一番右)も参加しております!
ヴァレリー、キュートだな~。この曲のキモはやっぱりJTとコーラス隊の掛け合いですね。ちなみにスタジオ録音にはハーモニカにスティーヴィー・ワンダーが参加してます。

ドン・グロルニックはフュージョン系の音が得意なので、彼が関わったJTの作品はそういった肌触りを感じさせますが、このアルバムはフュージョンと従来のJTサウンドをうまく融合したような、非常にリラックスした、心地よいサウンドが聴けます。その象徴的な曲が①「Line 'Em Up」。
出だしの歌詞、1974年のリチャード・ニクソンを思い出す…から曲の世界観に引き込まれてしまいます。この曲、1974年のJT自身の心情を吐露したような作品なんですよね。コーラスが優しくJTを包んでいるようです。

こちらもちょっとフュージョン・ライクな⑥「Jump Up Behind Me」。
ちょっとだけフュージョンっぽいのはEWI(ウィンドシンセ)を吹いているのがマイケル・ブレッカーだから。ポリリズムを思わせる複雑なパーカッションもこの曲も魅力ですね。90年代以降のJTサウンドは、基本的にはこのテのサウンドが主流となっていきますね。

この時期はJTのクリスマス・アルバムが聴きたくなります。本作では⑨「Up From Your Life」がなんだか今の時期にピッタリのサウンドに聴こえます。
何と言ってもイントロのアルト・サックスがムードを盛り上げます。吹いているのはブランフォード・マルサリス。この曲も人生を前向きに生きることがテーマとした楽曲。

JTの実弟であるリヴィングストン・テイラーとマギー夫人との共作の⑪「Boatman」。
印象的なスティール・ギターはダン・ダグモアのプレイ。リヴらしい美しいメロディ、そして人生をボートの漕ぎ手のように例えた歌詞も味わい深い。JTが作った曲と言われても違和感ないですね。いつまで経っても変わらないJTサウンド。通常だと飽きてしまうのに、全く飽きが来ないのは、JTサウンドがエバーグリーンだからでしょうね。

この後の13曲目にHidden Trackがありますが、一応エンディングの⑫「Walking My Baby Back Home」。
こういうJTの小粋な楽曲が大好きです。間奏の口笛なんか、心暖まります。JTのことですから、ちょっとした時間でこうした曲を作っちゃうんでしょうね。

地味なアルバムなんですが、実に心暖まるアルバムなんです。それはアップした楽曲をお聞きになられたら理解出来るでしょう。阪神大震災の復興に向けた渦中にこのアルバムを聴いていたことで、より一層私にとって思い出深いものになっております。

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