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Styx「Cornerstone」(1979)

産業ロックはお嫌いですか?
負のイメージすらある呼び方だし、私自身はこの音楽の括り方には非常に違和感を覚えるのですが、ここで括られているであろう音楽は大好きです。なんといってもリアルタイムに熱心に聴いていたもので…。

今回登場するスティクスはその産業ロックの代表的なバンドのひとつで、賛否両論ある「Mr.Roboto」なんかは酒の肴には打ってつけの題材ともなり得る(笑)楽曲ですね。個人的にはその作品以降のスティクスには全く興味がないのですが、それより前、1981年発表の「Paradise Theatre」より前のアルバムにはまだまだ関心あります。

本作は大ヒットした「Paradise Theatre」の前の、1979年発表のアルバム。産業ロックというよりも、この時代のアルバムは、アメリカン・ハード・プログレという括り方の方が正しいかもしれません。

スティクスはデニス・デ・ヤングが中心メンバーですが、実はフリートウッド・マックと同じで、元々は1963年にベース&ドラムのパノッツォ兄弟が結成したもの。そこにデニスが加入し、1970年にジェイムス・ヤングが加わることでスティクスとして正式にデビュー。1976年にトミー・ショウが加わり、全盛期の布陣となります。
本作はトミーが加わり3枚目、スティクスとしては通算9枚目のアルバムです。デニスとトミーの楽曲のクオリティが抜群にいいんですよね。

まずはオープニングのデニスとトミーの共作の①「Lights」。
リードヴォーカルがトミーなので、トミーが中心となり書かれたナンバーだと思われます。コーラスがキャッチーで親しみやすいメロディはスティクスらしい。間奏はちょっとプログレ・ハードっぽいアレンジ。

デニス作の②「Why Me」も「Lights」と同様にプログレ・ハード的なポップナンバー。
こちらはデニスらしいシンセが効いてる好ナンバー。サックスとギターのハモリが非常にユニークですね。サックスはスティクスの他のアルバムでも交流のあるスティーヴ・エイセン。

イントロのデニスが弾くフェンダーがメロウなスティクスを代表する名曲③「Babe」。この大ヒット曲のためにスティクスはポップ路線に大きく舵を切ってしまったと云えるかもしれません。80年代に流行った産業ロックへの架け橋的な楽曲かもしれませんね。ですからこの曲はあまり好きではないという方も多いかもしれません。ただ間奏のトミーが弾くギターソロのバックの分厚いコーラスとか、本来スティクスが兼ね備えていた美しいメロディとか、やはりスティクスの最良の部分が現れた名曲かなと思います。

③「Babe」がデニスの個性が発揮された曲なら、⑤「Boat On The River」はトミーの本領が発揮された佳曲ですね。
ちょっと従来のスティクスのイメージを覆すようなアコースティックでメランコリックなナンバー。トミーってこんな器用な方なのか…と思っちゃいました。トミーが巧みに弾くマンドリンが、超マイナー調な哀愁漂うメロディを引き立ててます。アップしたPV、最初デニスが居ないなあと思ったら、途中からアコーディオンを弾きながら登場(笑)。トミーのマンドリンソロもいいですね~。
このアルバムは様々なスティクスの個性が詰まってます。すべて①②のような曲でも飽きてしまうし、「Babe」や「Boat On The River」は単独でもいい曲ですが、このアルバムに収録されることで、更に曲の個性が際立っているような気がします。

①と同様にデニスとトミーの共作の⑥「Borrowed Time」はハードなスティクスが堪能出来るナンバー。
導入部分のシンセパートはデニスらしい作風ですが、ギター中心のパートはトミーが作ったのかな。ギターのリフが実にカッコいいですね。そしてここでも分厚いコーラスがキャッチー。トミーのギターソロはどことなくクィーンのブライアン・メイを彷彿させます。トミーは本当はもっと弾きまくりたかったのかもしれません。

最後にご紹介するのはデニスの甘すぎるバラードの⑦「First Time」。
ここまで泣きのバラードをやられると勘弁してくれ…と思う方もいらっしゃるかもしれませんね(笑)。でもポップス好きの私としては「Babe」より好きかもしれません。「Borrowed Time」でもトミーのギターソロはブライアン・メイ風と書きましたが、ここでもついついそんな思いが募ります。この甘すぎるメロディに被さってくるコーラスと泣きのギターソロ。実にいいですね~。

本作はデニスとトミーの個性がうまく重なり合った名作ですが、この後、徐々にデニス色が強くなっていき、想像通りデニスとトミーの間で確執が生じ、バンドは分裂。一時期、全盛期メンバーで復活するも、最終的には再びデニスとトミーが衝突。現在もスティクスは活動中ですが、今はトミーやジェイムスがバンドを牽引しております。

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