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渡辺美里「Flower Bed」(1989)

先日、高校時代に聴いていた音楽について考えていたのですが、当時は邦楽も結構聴いていたんですよね。特に好きだったのが渡辺美里。デビューアルバム「eyes」から本当によく聴いてました。

そんな渡辺美里の数あるアルバムのなかで、一番よく聴いていたのが1989年に発表された「Flower bed」という彼女の5枚目のアルバムです。恐らく彼女のパワフルなヴォーカルが一番フィットしたJ-POPの名盤じゃないかなと思ってます。

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このアルバムの発表直後、1989年7月26日、渡辺美里は今では伝説となった西武球場コンサートを行います。あの雷雨で中止となったコンサートです。

もう恐らく⑦「パイナップル・ロマンス」を歌っている頃には、彼女自身はこのコンサートが中止となることが分かっていたのでしょう。アップした映像でも豪雨であることが分かると思います。
⑦「パイナップル・ロマンス」はギターの佐橋佳幸氏が作った曲で、彼らしいエッジの効いたシャープな1曲。ちなみに佐橋氏は都立松原高校出身で渡辺美里の先輩にあたります。そうそう、今では松たか子の旦那さんといった方がいいかもしれません。
閑話休題、とにかくこの楽曲での彼女のパフォーマンス、特にギターソロ以降の彼女の迫力、鬼気迫るものがあります。曲の途中ではそれが演出であるが如く、雷が鳴り響きます。
この映像にはしっかりと中止を伝えるシーンも収録されてます。曲が終わると、男性が事務的に中止を伝え、それを受けて彼女が涙ながらに思いを伝えます。

そしてこの後、私の大好きな大江千里さん作曲の⑪「すき」を歌います。このコンサートにおける「すき」には、彼女のいろいろな思いが込められています。
私は当時からこの大江千里らしい楽曲が大好きでしたが、このライヴにおける「すき」が一番ベストかと思われます。なぜなら上の映像では10分31秒あたり、ちょうど間奏が終わる絶妙のタイミングで、稲妻が走るのです。恐らく会場を明るく照らしたことでしょう。そして会場が大きくどよめきます。これ以上の演出はないでしょうね。美里さんもそこで動揺することなく、そのまま歌い倒します。プロフェッショナルですね~。

この楽曲も終わり、彼女は叫びます・・・。

「青春のバカヤロー、雨のバカ!」

この会場にいらっしゃった方は、雨天中止という残念な結果になったものの、恐らくそれ以上の素晴らしいものを感じたのではないでしょうか。
そしてこの後彼女は「My Revolution」を感動的なアカペラで歌うのでした。

アルバムに話を戻しましょう。このアルバム、従来の彼女のアルバムとはちょっと違ったテイストを感じます。何曲かの楽曲において、実に洋楽的な香りを感じさせるんですよね。実際レコーディングはニューヨークやロスで行われており、ジェフ・ポーカロヴィ二ー・カリウタ等が参加してます。そしてポイントはタワー・オブ・パワーのホーンでしょうね。

①「NEWS」でのシンコペーションを駆使した強烈なファンク、すごく緊張感漂うニューヨークテイストな⑨「冷たいミルク」、ゴスペルタッチの⑩「White Days」、どれもが従来の渡辺美里の楽曲にはない、非常に魅力的な楽曲です。

②「やるじゃん女の子」はアルバム中、唯一の渡辺美里:作詞作曲の楽曲。でもこれもメロディといい、アレンジといいなかなか秀逸な作品です。

個人的には④「跳べ模型ヒコーキ」の切ないメロディが大好きです。作曲は岡村靖幸。渡辺美里の楽曲のなかでも隠れた名曲ではないでしょうか。

あと⑥「彼女が髪を切った理由」も大好きなんですよね。イントロのハーモニカ・・・、哀愁漂います。この楽曲もどこか洋楽的な雰囲気がすると思いませんか?
タワーのホーンもgood!! いや~、これは名曲だと思います。

どうですか、このアルバム。今ではオフでバーゲンセール状態ですが、実に勿体ない話です。個人的には当時の想い出が詰まったアルバムだし、クオリティもかなり高く、このアルバムが彼女のベスト作品だと思ってます。

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