見出し画像

Peggy Lipton「Peggy Lipton」(1968)

今回はマイナーでレアなアルバムのご紹介です。
ペギー・リプトンを知る人もあまりいらっしゃらないかもしれません。
あのポール・マッカートニーのガールフレンドだったこともある女優さんですね。それよりもクィンシー・ジョーンズの奥さん…といった方がいいかもしれません。
そのペギーが22歳のときに唯一発表したアルバムが本作。単なるアイドル女優が発表したムード音楽と思いきや、これがまた実に秀逸なポップス・アルバムでした。

オード・レーベルからの発表です。ということはプロデューサーはルー・アドラー。ルーはダンヒル・レーベルを設立した人物で、1967年にダンヒルをABCへ売却し、その後にオードを設立。キャロル・キング等と契約しました。この時期、キャロルが在籍していたグループ、ザ・シティもオードから同時期にアルバムを発表しておりました。このアルバムはそのシティのアルバム「Now That Everything's Been Said」と対を為すものかもしれません。

画像1

ダンヒルからの流れを継承し、バック・ミュージシャンはレッキング・クルーの面々。ドラムのハル・ブレインが「Music Director [Rhythm Section]」とクレジットされているので、ハルがヘッド・アレンジを務めたのでしょうね。他、ジョー・オズボーン(B)、ラリー・ネクテル(Key)、マイケル・ディージー(G)のレッキング・クルー組。そしてキャロル・キング、チャールズ・ラーキー(B)、ジム・ゴードン(Ds)のシティ組、コーラスにダーレン・ラブが在籍していたブロッサムズ、ストリングス・アレンジはマーティ・ペイチと凄腕ミュージシャンが多数参加しております。

こんな豪華布陣でどんなサウンドが飛び出すのだろうと思ったら、オープニングから見事なソフトロックの①「Let Me Pass By」が素晴らしい。
マーティ・ペイチのストリングスが実に優しいですね。ちょっと甘口なイージーリスニング系ですが、バックのドラムはしっかりハル・ブレインしてます。
個人的にはこういう音楽も大好きです。そして驚くべきことにこの曲、ペギー自身の自作曲なんですよね。このアルバムでは他に3曲、計4曲の自作曲を収録してますので、このまま売り出していれば、ペギーは本格派シンガーソングライターになっていたかもしれません。彼女のヴォーカルもスィートな感じが素敵ですね。

キャロル・キング作のあまりにも有名な楽曲の②「Natural Woman」。
同時期にアレサ・フランクリンもカバーしておりました。ペギーのバージョンは、ブロッサムズのコーラスがR&B色を濃くしているものの、マーティ・ペイジのストリングスが上品に響き、ペギーのヴォーカルも豪快というよりも華麗な雰囲気を醸し出しており、キャロルのポップスにピッタリのように感じます。

このアルバムは先に申した通り、ペギーの自作曲が4曲、キャロルの作品が5曲(ジェリー・ゴフィンとの共作3曲、トニー・スターンとの共作2曲)、そしてなんとローラ・ニーロの作品が2曲収録されてます。この当時のキャロルとローラといったら、新進気鋭のシンガーソングライター。しかもこの二人の作品に絞ったことで、アルバムにも統一感が生まれたように思われます。
⑤「Stoney End」はローラ・ニーロ自身が発表していた作品。それをペギーがうまくカバーしてます。
この曲、好きなんですよね。秀逸なポップスです。イントロからジョー・オズボーンと分かるベース、そしてドカドカうるさいハル・ブレインのドラム。このリズム・トラックもカッコいい。ちなみにコーラスで参加していたブロッサムズもこの曲をカバーしていました。しかもこのペギーのトラックを借用して(笑)。同じルー・アドラーのプロデュースなので、別にいいんでしょうけど。

こちらもローラ・ニーロ作の⑦「Hands Off The Man (Flim Flam Man)」。
ローラも自ら歌ってますが、後にバーブラ・ストライザンドがカバーした楽曲。こちらも素晴らしいソフトロックの名曲です。ペギーの歌い方は、キャロルというよりもローラに近いような気がします。

⑧「It Might As Well Rain Until September」は1962年のキャロル自身が歌ったヒット曲。SSW期より前、キャロル自身がレコ―ディングした作品の中で、唯一ヒットした曲がこの曲。こちらをペギーが感情をこめて歌い上げます。
一瞬、イントロのサックスがムード歌謡っぽく聞こえますが、メロディはキャロルらしいポップス。このベースもジョー・オズボーンですね。こちらも随所にハル・ブレインらしいドラムのフィルインが聞けます。

ダウンロード

なかなか素晴らしいポップスアルバムだと思いませんか。これだけのアルバムを残しておきながら、結局ペギーは生涯でアルバムは本作しか発表しておりません。オファーは間違いなくあったと思うんですけどね。
その後ペギーはポールとの熱愛のあとはキース・ムーンやエルビス・プレスリーと恋仲となりましたが、1974年にクィンシー・ジョーンズと電撃結婚。上の写真は次女で女優のラシア・ジョーンズとのツーショット。そんなペギーも2019年に72歳の若さで亡くなっております。

最後に、せっかくなので動くペギーの映像もアップしておきます。1969年3月に放送された「ハリウッド・パレス」にペギーが出演した際の映像です。シングルとして発表された「Just A Little Lovin」とホスト役のサミー・ディヴィス・Jrとのデュエットの「Little Green Apples」を披露してます。ペギー、美しい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?