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大貫妙子「MIGNONNE」(1978)

台風一過後、気持ちの良い天気が続いてますね。ということで、今回は気持ちの良いアルバム、かつ前の週のピーター・ゴールウェイ繋がりで大貫妙子さんをチョイスしました。
最近海外からの再評価が著しい大貫妙子の初期作品。特に「SUNSHOWER」と共に「MIGNONNE(ミニヨン)」はその代表作品ですね。今回は1978年発表の大貫妙子のサードアルバム「MIGNONNE」のご紹介。
ただし彼女自身はあまり本作にはいい思いはないらしく、本作をあまり聴き返していないとのこと。1,2枚目と自由に作ってきたものの、RCA移籍第1弾となる本作では本格的にプロデューサー(小倉エージ)をつけて制作。売れるために、聴き手に伝わりやすく、かなり歌詞やメロディを書き直したらしい。ところがその過程で、曲を書いた当初からの気持ちから段々と離れていってしまい、また結果、本作はそれほど売れなかった…。彼女は真剣に音楽を辞めようと思ったようですね。そんなに自信喪失されていたなんて、今の彼女からは想像も出来ません。本作はあまりにも素晴らしい作品だし…。

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本作は、その時の彼女の仲間、腕利ミュージシャンが素晴らしい演奏を聞かせてくれてます。またその演奏に負けない素晴らしい楽曲とヴォーカルがここにはあります。

オープニングはシングルカットされた①「じゃじゃ馬娘」。イントロからかなりソウルフルなサウンド。ストリングスなんかもソウルからの影響を感じさせます。普通は「じゃじゃ馬娘」をご紹介すべきですが、ポップスが大好きな私としては、やっぱり②「横顔」でホッとします。
シュガーベイブ時代からの大貫さん流ポップスの典型例でしょう。ギターは鈴木茂杉本喜代志。杉本さんはのちにマーカス・ミラーとも共演するような著名なジャズギタリスト。間奏のアコギは杉本さんでしょうかね。まったりするポップスです。

「横顔」同様にドリーミーなポップスの④「空をとべたら」。
イントロの印相的なカッティングギターは鈴木茂、自由に動いているベースは後藤次利、アコギは吉川忠英。今日のような爽やかな朝にピッタリなAOR調の楽曲。間奏のフルート、アコギソロも心地いいですね。

当時の最先端をいくシティ・ミュージックな⑥「言いだせなくて」。私のお気に入りのナンバーです。
海外からのシティ・ミュージック(ヨット・ロック)としての再評価という観点から云うと、この曲が一番その評価に相応しい楽曲かもしれません。ギターに松原正樹、ベースは細野晴臣、ドラムは村上秀一、アレンジ&キーボードは坂本龍一という超豪華布陣。やっぱりソウルからの影響も垣間見られるアレンジが、この曲に合ってます。

なかなかスリリングなイントロの⑦「4:00 P.M.」。
こちらもシティ・ミュージック的なアプローチが光ってます。ジェイク・H・コンセプションの吹くフルートとか、坂本龍一が奏でるシンセソロとか、聴き所もいろいろあります。あとやっぱり、モソモソ動く細野晴臣のベースがいいですね~。

あまりにも名曲な⑧「突然の贈り物」。YouTubeにはピアノだけをバックに独唱する大貫妙子の素晴らしい映像もあります。曲の良さが引き立ちますね。

ただ、ここは是非スタジオ音源も聴いて頂きたい。
いぶし銀なギターは松木恒秀。ベースは細野晴臣、ドラムは渡嘉敷祐一、アレンジ&キーボードは坂本龍一。3分30秒過ぎからのジャージーな松木さんのギターソロが素晴らしい。竹内まりやさんや大村憲司さんのカバーも素晴らしいが、やはり大貫さんの透明感のあるヴォーカルが圧倒的に感動的です。

「突然の贈り物」ような曲もいいですが、個人的には⑨「海と少年」ようなポップスも大好きです。
特徴的なコーラスはシンガーズ・スリー(伊集加代子、和田夏代子、鈴木宏子)。跳ねるようなリズム隊は細野&高橋ユキヒロ、そしてもちろんキーボートは坂本龍一のYMO組。ユキヒロさんのタイトでグルーヴィーなドラムが心地いいのです。ギターは松原正樹&鈴木茂。間奏のギターソロはどちらでしょう?鈴木茂さんかな。
大貫妙子さん、この軽快なメロディ、ユーミンに勝るとも劣らない素晴らしいメロディメーカーですね。

エンディングの⑩「あこがれ」も人気の高いナンバー。
ワルツ調のバラードで、どことなくユーミンっぽいメロディです。このメロディも素晴らしいですが、私が特に気に入っているのは高中正義の弾く情熱的なギターソロ。高中さんはこの1曲だけに参加してますが、それだけに熱いギターを聞かせてくれます。エンディング、最後の最後まで鳴っている魂のギターソロ…絶品です。

こんな名盤なのに自信を失ってしまった大貫さん。後に大貫さんは小倉エージさんの当時の想いを聞かされます。
以下小倉さんのお言葉です。「ミニヨン」でいちばんのテーマとしたのは、アメリカ産のポップス寄りのアルバムをつくるのではなく、基本的にはシンガー=ソング・ライターとして普遍的な日本のポップスとしての曲、それを表現するシンガーとしての大貫妙子を誕生させることでした…。
今、海外で本作が再評価されている事実を踏まえると、この小倉エージさんの想いは、海外に十分伝わっているのではないでしょうか。


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