Rod Stewart「Never a Dull Moment」(1972)
ロン・ウッドからストーンズと来たら、ロッド・スチュアートのアルバムを聴かないわけにはいかないでしょう。
折しもレコード・コレクターズ10月号の「1972年の音楽地図」特集を、飽きもせず熟読しておりました。
レココレのこのテの特集は賛否両論ありますが、今回の特にアメリカ・イギリスで紹介されていたアルバムは名盤揃いで、意外と参考になりました。そして1972年のアルバムは自分好みが多いこと、アメリカ嗜好の私でも、特に1972年はブリティッシュ・ロックが好みであることが改めて分かりました。
ご参考までにイギリスで紹介されたいたアルバムはHumble Pie「Smokin'」、Deep Purple「Machine Head」、Jeff Beck Group「Jeff Beck Group」、Rolling Stones「Exile On Main St.」、T.Rex「The Slider」、Yes「Close On The Edge」、Gilbert O'Sullivan「Back To Front」…、大好きなアルバムばかりです。
前置きが長過ぎました(苦笑)。この1972年のイギリスにもちろんロッドの作品も紹介されてます。それが「Never a Dull Moment」です。ロッドのソロ作の中ではちょっと地味な存在かもしれません。私もこのレココレで知るまで、まともに聴いたことがなかったアルバムですが、これがなかなか渋くていいんですよね。
本作はロッドの4作目のソロアルバム。前作「Every Picture Tells a Story」に続いて全英No.1を獲得したアルバムです。プロデュースはロッド自身。
この当時、ロッドはフェイセズとの二足の草鞋を履いた状態で、フェイセズも前年に「A Nod is as Good as a Wink... to a Blind Horse」を発表し、成功を収めてました。ロッド自身、脂の乗り切った状態だったということですね。
本作はフェイセズのメンバーを中心に制作。但しケニー・ジョーンズは1曲しか叩いておらず、他はミック・ウォーラーが叩いてます。
そのケニーが叩いて、他ロン、ロニー、イアンのフェイセズ組が揃ったナンバーがオープニングの①「True Blue」。ロッドとロンの共作。
これがまた実にカッコいい。歌詞はロックスターに対して皮肉を込めたもの。
♪ Never gonna own a race-horse
Or a fast back mid-engine Porsche
Don't think I'll own a private jet ♪
スタジオ録音のエンディングにかけてはスポーツカーの爆音が轟きます。
この曲、フェイセズのステージでも演奏されていたようで、その時の映像がありましたので、そちらをアップしておきますが、これがカッコいいんですよね。途中、ロッドがロンとロニーを呼び(2分過ぎ)、1本のマイクで3人が歌うシーン、2分50秒過ぎからギアチェンジしてスピードアップするシーン、いいですね~。
ボブ・ディラン作の③「Mama You Been on My Mind」。
この曲はディランが1964年に書いたものですが、結局ディランのバージョンはお蔵入りし、その代わりに多くのアーチストに歌われております(ディランのバージョンが発表されたのは1991年です)。ここでのロッドは、ゴードン・ハントリーのスティールギターをフューチャーした、かなりカントリー風なアレンジで聞かせてくれます。味わい深い…。
ロッドとロンの共作の④「Italian Girls」。
これもまたフェイセズの世界。アコースティックな響きが聴こえつつも、グルーヴ感あるロックンロール。エンディングではマンドリンも…。これらは、この当時のロッドの持ち味でもありますね。
ロッドのヴォーカリストとしての幅を広げたであろう、ジミ・ヘンドリックスのカバーの⑤「Angel」。
こうした曲も歌いこなしてしまうロッド…、流石です。こちらもフェイセズとしての演奏映像がありました。ただ、なぜかロニーが等身大のボードで置かれている(笑)。当日、体調でも悪かったのでしょうか。ロッド&ロンが2人顔を揃えて歌うシーンを見るにつけ、この2人は絶妙なコンビだったんだなあと痛感します。
ロッドとマーティン・クイッテントンの共作の⑦「You Wear It Well」。
一聴してキッスの「Hard Luck Woman」を連想させますね~。ピーター・クリスもハスキー・ヴォイスでしたが、あの曲も原型はこの辺りの楽曲にあったんでしょうね。
エンディングはロッドが尊敬してやまないサム・クックのカバーの⑨「Twisting the Night Away」。
ロンのスライド気味のギターソロがカッコいい。ロニーのベースも唸りを上げてますね。原曲はシャッフルのリズムが心地いいR&Bの名曲ですが、ここでは若干シャッフル感を抑制したロック色の濃いアレンジに仕立ててます。
この後、ロッドは1974年に5枚目のアルバム「Smiler」を発表し、年内にフェイセズの解散を発表します。ロッドのソロとしての成功と並行したフェイセズの活動は、当然長続きしなったわけですね。でも本作は特にロッドとロンが強力なパートナーであったことがよく分かる1枚だと思います。
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