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Leslie Smith「Heartache」(1982)

すこし気持ちの良い朝なので、久しぶりのAOR作品のご紹介です。
本作はブラコンAOR3部作の1つで、私が後追いで聞いた当時、長らくCD化されていなかった最後の名作と云われておりました。

私は元々黒人白人混合バンドのクラッキンが大好きなのですが、そのリード・シンガーだったのがレスリー・スミス。その彼のソロアルバムが悪い筈がないと思っていましたが、こうして聴いてみると、やっぱりイイですね。

クラッキンの作品というと1977年のMaking Of A Dream、「Crakin'」、1978年のSpecial Touchの3枚が有名ですが、残念ながらこれらは商業的に陽の目を見ることなく、クラッキンは自然消滅してしまいます。

クラッキンのメンバーで、のちに超売れっ子プロデューサーチームとなっていくピーター・バネッタ&リック・チューダコフもこの当時はそれほどの知名度もなく、バンドの自然消滅からの流れでレスリーのソロをバックアップしていくことになります。もちろん他にもブライアン・レイ(今ではポール・マッカートニー・バンドのギタリストとして大活躍してますね)、アーノ・ルーカスレスター・アブラムスのクラッキンメンバーが本作に参加。
素敵なAORサウンドを聞かせてくれます。

1曲目から極上のAORサウンドです。ブレンダ・ラッセルの作品として著名な①「It's something」。共作者はデイヴィッド・フォスター。レスターのヴォーカルは、粘着質の濃いソウルフル系ではなく、どちらかというとサラッと聞かせる爽やかな伸びのある声なので、こうした曲にはピッタリ。

本作からのシングルナンバーが③「Before The Night Is Over」。デュエットしている女性シンガーはローリング・ストーンズとの共演でも有名なメリー・クレイトン。彼女のヴォーカルはなんとなくティナ・ターナーを思わせます。ここで曲のイメージを握っているのがハーモニカとパーカッション。実に心地いいグルーヴ感を生み出してます。

本作中、私が一番気に入っているナンバーが⑤「Dream On」。
AORには欠かせない3連系のミディアムテンポのナンバー。この曲を聴きながら、青空の中、ドライブしたくなるようなナンバーですね。

⑥「Nothin' You Can Do About It」はAORファンには御馴染みのナンバーで、エアプレイのカバーです。
他の方もご指摘されていますが、エアプレイのバージョンにそっくりです。ギタープレイもなんだかジェイ・グレイドンっぽいし、レスリーのヴォーカルもトミーにそっくり。これじゃ、ホントのカバー。出来ればクラッキン流の「Nothin' You Can Do About It」を聴きたかったような気もします(それともエアプレイはクラッキンと類似したサウンドだったということでしょうかね)。

AORファンには御馴染みといえば、⑦「Love's a Heartache」も外せません。この曲の作者はネッド・ドヒニー。彼はギターでも収録に参加してます。
ネッドの曲って、結構渋い曲が多いのですが、コレもメロウでクールなサウンドで、ジワジワと攻めてくる感じの楽曲です。いかにもですが、この曲、アヴェレイジ・ホワイト・バンドがカバーしてます。

素晴らしいアルバムですね。でも金澤さんのライナーノーツによると、このアルバムの完成直後に所属レーベルがアーチストをリストラしてしまい、レスリーもそのうちのひとりとなってしまった由。
この1982年って、70年代後半から続いたAORサウンドが、もうあまり気にされなくなった時代だったかもしれません。商業的なヒットとエバーグリーンなものって、なかなかリンクしないんですね。


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