McGuinn, Clark & Hillman「McGuinn, Clark & Hillman」(1979)
とても寒くなってきましたが、この時期になると妙にJ.D.サウザーの歌声が聴きたくなってきます。なので今回はサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド(以下SHHB)のセカンド辺りをチョイスしようと思ったのですが、似たようなバンドの貴重な映像を発見し、それがなかなか興味深いものでしたので、今回はそちらをご紹介致します。タイトルに記載の通り、マッギン、クラーク&ヒルマン(以下MC&H)です。
SHHBとMC&Hに共通メンバーはクリス・ヒルマンですね。SHHBが、アサイラムのデヴィッド・ゲフィンによるJ.D.サウザーを売り出すために仕掛けられたバンドだとすると、MC&Hは純粋に一緒にやろう…と自然発生的に結成されたバンドです。SHHBは1975年にセカンドアルバムを発表後に空中分解。J.D.サウザーは翌年「Black Rose」という名盤を発表。クリス・ヒルマンもファースト、セカンドソロ作を発表。リッチー・フューレイはリッチー・フューレイ・バンドを結成と、三者三様の活動をしておりました。
一方その頃、ロジャー・マッギンはソロでローカルクラブを巡るような音楽活動をしており、ある公演でたまたまジーン・クラークと共演したことがキッカケで2人での活動を開始。それが1977年頃の話。バーズはもともとはロジャーとジーンが出会ったことが結成の発端でしたから、もともと気が合う2人だったのでしょうね。
そしてクリスは前述の通り、アサイラムとの契約が残っていたことから、ソロ2枚発表後にこの2人に合流。ここにMC&Hが誕生しました。この3人はそもそも1973年のバーズの再結成アルバム「Byrds」でも顔を合わせてましたからね。
実はこのスーパーグループ、当時日本での来日公演を行っております。YouTubeを見ておりましたら、なんと当時彼等がTV出演した映像がアップされておりました。出演した番組は東京12チャンネルで放送されていた「ステレオ音楽館」。加藤和彦がインタビューしているシーンもあります。この番組で、本作から数曲、そして3人の持ち歌も披露されているんですよね。
ちなみに本作の収録曲は以下の通りで、太字の曲が以下にアップした映像で演奏されてます。
1. Long Long Time (Hillman)
2. Little Mama (Clark)
3. Don't You Write Her Off (McGuinn)
4. Surrender To Me (R.Vito~ロジャー・マッギンに近しいギタリスト)
5. Backstage Pass (Clark)
6. Stopping Traffic (Hillman)
7. Feelin' Higher (Clark)
8. Sad Boy (Hillman)
9 .Release Me Girl (Clark)
10.Bye Bye, Baby (McGuinn)
映像を繋ぎ合わせていたり、音が伸びてしまったりして、聞き苦しいシーンはあるものの、貴重な映像であることは間違いありません。まずは映像をご覧ください。
どうですか。個人的にはジーンの「Backstage Pass」(5分45秒辺り)が大好き。各個人のパートはロジャーが「イージーライダーのバラード」、ジーンが1974年に発表したアルバム「No Other」から「Silver Raven」、クリスは1976年に発表した「Slippin' Away」から「Step On Out」を披露。ここで一緒にギターを弾いているのはクリスのソロでも本作でもギターで参加しているジョージ・テリーと思われます。
この映像が面白いのは、ジーンやクリスが単独で自己紹介している点や、加藤和彦が「デヴィッド・クロスビーはなぜ参加しなかったのか」といった鋭いツッコミを入れている点等。こんな素晴らしいTV番組があったとは…、ちょっと驚きです。3人も結構仲が良かったんでしょうね。
せっかくなのでスタジオ録音音源もご紹介しておきます。まずはロジャー・マッギンとR.J. Hippardの共作の③「Don't You Write Her Off」。
カリプソ的なリズムや大胆なホーンアレンジが光る佳曲。ロジャーの哀愁漂うヴォーカル、爽やかななメンバーのコーラス、結構お気に入りの1曲です。アップした映像はスタジオでの演奏シーンですが、口パク&レコード音源です。
本作の曲のクオリティは、やはりジーン・クラークが頭ひとつ抜けているような気がします。当時のロジャーは曲作りがあまり進まなかったのか、2曲しか楽曲提供されてませんしね。そのジーンの名曲が⑤「Backstage Pass」。
イントロからタイトなドラムがカッコいい。ドラムはグレッグ・トーマス。アップした映像はまたしても口パク(笑)。この音源では後半、歓声が巻き起こります(スタジオ録音の音源も同様です)。以下のサビのコーラスは、この音源のように盛り上がるでしょうね。
♪ Hey O', does she know that she's a star in the show
Hey O'(Hey O') Hey O'(Hey O') Hey O' ♪
クリス・ヒルマンにもフォーカスしておきましょう。彼は3曲提供しておりますが、どれも軽快なカントリーロックです。そのなかでも⑥「Stopping Traffic」が好トラック。
スライドギターはジョージ・テリー。クリスのベースは結構手数が多いですよね。よく動くベースラインです。初期イーグルス(特に3枚目の「On The Border」辺り)や、ポコのようなサウンドで、個人的には結構好きな音ですね~。
最後はジーンの楽曲の⑦「Feelin' Higher」。
ラテンタッチな味付けですが、ジーンらしいどことなく哀愁漂う楽曲。サビのコーラスも美しいですね。ロジャーとは違う作風でもあり、ロジャーとジーンの違った個性が初期バーズの良さだったのかもしれません。なんとなくこの曲を聴きながら、そんなことを考えておりました。
バーズ時代からの仲ですからもっと続いても良かったバンドですが、ジーンが麻薬による体調不良で脱退。ジーンはゲスト扱いとなりましたが、1980年にセカンドアルバム「City」を発表。ロジャーとクリスのデュオでもう1枚アルバムを発表して、それぞれソロとして活動していきます。
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