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Linda Ronstadt「Prisoner in Disguise」(1975)

秋らしい季節になったので、ここ最近は女性ヴォーカリストをよく聴いてます。前回はオリビアをご紹介したので、次は当然リンダ・ロンシュタットということで…。もともとこのアルバムはご紹介したかったアルバムなんですよね。

1973年にリンダはアサイラムへ移籍したものの、契約上の関係から1974年に発表された前作「Heart Like a Wheel」は、キャピタルからリリースされました。キャピタルはこれを全く売れないと判断したのか、あまり宣伝活動もされなかったようですね。にも関わらず、見事に大ヒットを記録。リンダの黄金時代がスタートします。
本作はアサイラムから発売された2枚目、通算6作目の作品。プロデュースはピーター・アッシャー。この作品でも実に多彩なアーチストの楽曲を採り上げております。

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この作品で感じるのは、楽曲のアレンジが素晴らしいこと。アレンジのクレジットがないので、誰がアレンジしているのか、よく分かりませんが、恐らく昔からの仲間でもあるブリンドルのメンバー(アンドリュー・ゴールドケニー・エドワーズ)とリンダを中心にアレンジしているんだろうなあと推察しております。

特にそれを感じるのがニール・ヤング作の①「Love Is a Rose」。
ニールのバージョンは1974年にレコ―ディングされ、アルバム「Homegrown」に収録予定だったのですが、そのアルバムがお蔵入り。結局、先にリンダのバージョンがリリースされたわけです。この2曲を聴き比べれば、リンダの秀逸なアレンジ力がよく分かると思います。ニールのバージョンはアコギやハーモニカといった素朴なカントリーソングである一方、リンダのバージョンは力強いカントリーロックの世界。女性であるリンダの方がパワフル(笑)。ここで強調されているのはラス・カンケルのドラム。それからアンドリュー&ケニーのバック・コーラス(特に最後のアカペラは見事)。これは明らかにこのレコ―ディングのコアバンドが、ああでもない、こうでもないと和やかな雰囲気の中、スタジオでアレンジしていったんじゃないかなと(完全な妄想ですが)。
尚、アップしたライブ映像のバックのミュージシャンはドラムだけマイケル・ボッツ(ブレッドのドラマー)ですが、他はレコ―ディングのメンバーです。

私が大好きなジェームス・テイラー作の②「Hey Mister, That's Me Up on the Jukebox」。JT自身はこの曲はサードアルバム「Mud Slide Slim and the Blue Horizon」にて発表しております。このアルバムのプロデューサーもピーター・アッシャーでしたね。
アップした映像は1975年12月のライブ映像ですが、歌う前、妙にリンダが上機嫌で変な笑い声を発してますね。決して上品ではない笑い方(笑)。この辺りのざっくばらんな彼女に魅力を感じます。そして歌い始めると全く別人。パワフルでありながらも表現力が凄い。JTの繊細なメロディも巧みに歌いこなしてしまいます。

このアルバムは出だしの①~③に魅力が詰まってます。その③「Roll Um Easy」はローウェル・ジョージ作。リトル・フィートの名作「Dixie Chicken」に収録されてます。
もちろんローウェルもスライド・ギターで参加。ここでのドラムはナイジェル・オルソン。ヘビーでパワフルな演奏、パンチのあるリンダのヴォーカルが冴えてます。

エミルー・ハリスがギターとコーラスで参加した⑧「Sweetest Gift」は古いフォークソング。
こちらはリンダとエミルー、ドリー・パートンの3人で歌っている映像がありました。素晴らしいハーモニー、ドリーの高音が目立ちますね。後に3人でアルバムを発表するくらい仲がいいのですが、この当時から仲が良かったんですね。
ちなみにドリーがずっと年上かと思っていたのですが、実はドリーとリンダはなんと同い年。ドリーが早生まれで1つ学年は上ですが。エミルーは1つ下。

ちょっと渋いですが、フォーキーな⑨「You Tell Me That I'm Falling Down」は個人的にお気に入りの1曲。
キャロル・S・ホーランドとアンナ・マクギャリグルの共作。前作「Heart Like a Wheel」のタイトル・トラックはアンナが書いたもの。これでアンナは一躍有名となり、1976年に妹のケイトと組んだアンナ&ケイト・マクギャリグルでデビューを果たします。そのアンナの作品をリンダはまた採り上げたわけですね。
この曲にハーモニーを付けているのはマリア・マルダー。印象深いアコギはジェームス・テイラーのプレイ。

当時、恋人同士だったJ.D.サウザー作の⑪「Silver Blue」。
リンダは1970年頃からJ.D.と同棲生活を送ってました。彼のソングライティング能力に惹かれたらしいですね。私もJ.D.が大好き。特に彼の渋い声が大好きなんですよね。
この曲はJ.D.が自身のセカンドアルバム「Black Rose」でも発表してますが、リンダはJ.D.バージョンよりも聴きやすいアレンジにしております(J.D.バージョンは超渋いアレンジです)。ただ、この愁いのある曲は、やっぱりJ.D.の声質に合っているように感じます。ここではJ.D.がリンダに寄り添うようにコーラスを付けてくるんですが、それが実に素敵なんですよね。当時は恋人同士だったからかもしれませんが、この曲のリンダ&J.D.のハーモニーは絶品。

この頃のリンダのアルバムは味わい深いですね。楽曲重視でセレクトされた選曲、バックを固める信頼関係あるミュージシャン達、それにリンダが自由奔放に歌い上げる…、いいですね~。
もうちょっと寒くなってきたら、リンダのジャージーなオーケストラアルバムやクリスマスアルバムを堪能したくなってきました。


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