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Michael Jackson「Thriller」(1982)

香港出張からの帰路、マイケル・ジャクソンの映画「Thriller 40」を機内で観ました。あとで分かったのですが、これは昨年12月に公開された映画だったようですね。この映画の存在は全く知りませんでしたし、知っていたとしても興味なかったでしょうね(笑)。マイケルのアルバムは、もはや私の興味の対象外…。でも約4時間強のフライトは退屈だし、音楽映画だし、観てみるかって感じ拝見致しました。

でも実際に観て、マイケルが強い信念の下、このアルバムを制作したことが分かり、このアルバムに対する見方が変わりました。例えば、黒人のPVはオンエアしないポリシーだったMTVに対して、レコード会社から強烈に抗議させて「Billie Jean」のPVのオンエア実現に漕ぎつけたり、本作からの大ヒットシングルが続いた後、レコード関係者全員の反対を押し切り、あの「スリラー」のショートムービーの制作を決行したり…。
自分の音楽に対して強い信念を持ち、その行動により、後進のために道を切り開いた功績は非常に大きいと感じました。
メアリー・J・ブライジブライジ、マーク・ロンソン、スティーヴ・ルカサー等のインタビューも見応えありました。

それまでの制作サイド主導から、クインシー・ジョーンズのプロデュースの下、マイケル主導で大ヒットしたアルバム「Off The Wall」の第二段、1982年に発表されたのが本作。マイケルの力量もスケールアップして、いろいろな意味で時代に挑戦した歴史的名盤です。

当時は全く好きになれなかった①「Wanna Be Startin' Somethin'」。
もちろんこの曲の最大の聴き所は、エンディングのアカペラ、♪ mama-say mama-sa ♪ と連呼する豪快なコーラス部分。「Thriller 40」にもこのコーラスを担当したJulia Waters, Maxine Waters, Oren Watersの3人のWatersが登場しておりました。このコーラスの謎の「mama-say mama-sa」、彼女等がマイケルに意味を聴いたものの、意味なんてない…との回答だったらしい。マイケルにとってはリズムが大事で、そのリズムに乗った語感がピッタリだったのでしょうか。当時はこのアカペラの部分も全く意識していなかったのですが、このアカペラの圧倒的なコーラス、それに乗っかるマイケルの見事なヴォーカルとジェリー・ヘイのホーンが実にカッコいい。

大ヒットしたポール・マッカートニーとのデュエットの③「The Girl Is Mine」。
この時代の洋楽をリアルタイムで聴きかじっていた身としては、この曲と「Say Say Say」がワンセットで捉えられてますが、レコ―ディング自体は「Say Say Say」の方が早かったようです。
ダンスビートを強調したようなアルバム「スリラー」にあって、こうして聴くと、この曲ってアルバムの中の清涼剤みたいな感じです。すごくリラックスムード溢れる心地よいシャッフルビート。実はドラムはジェフ・ポーカロ。この曲の影の貢献者はジェフじゃないかなと感じます。よく聴くと「ロザーナ」風なフィルインを入れていたり、この心地よさはやっぱりジェフのビートに拠るものでした。
あとポールが書きそうなポップスですが、これはマイケルの単独作。「Thriller 40」でもマイケルとポールが実に楽しそうにレコ―ディングしている映像が印象的でした。あの雰囲気が、そのまま間奏の二人のやり取りに繋がってます。

リアルタイムにこのアルバムを聴いて、狂喜乱舞した曲が⑤「Beat It」。もちろん、我らがヒーローのエディ・ヴァン・ヘイレンがギターソロを弾いているからですが、スティーヴ・ルカサーが弾いている骨太なギターリフにも感動しましたね~。シンセドラム風なので全く気付きませんでしたが、ドラムはジェフ・ポーカロ。
当時、エディがマイケルとステージで共演したのは、1984年のジャクソンズとのVictory Tourでの、このアップした映像の時くらいじゃないでしょうか。しかもこの映像、めちゃくちゃ音も悪いし、映像も不鮮明。こんな映像しか残っていないんですね。ホント聞き苦しいのですが、エディが生でBeat Itを弾いているということでご容赦下さい。
出だしからエディはアドリブっぽく弾きまくってますね。ギターソロは2分40秒辺りから。マイケルも興奮しまくってます。エンディングで強烈なドラムソロを披露しているのは、長年マイケルのライヴでドラムを叩いていたジョナサン・モフェットかと思われます。

本作からのセカンドシングルが⑥「Billie Jean」。
ファーストシングルがポールとのデュエットの「The Girl Is Mine」でしたので、こちらが実質的なマイケル単独のファーストシングルと云えるかもしれません。
このPVでは、まだムーンウォークは披露していないんですね。

実際に世間一般にムーンウォークを披露したのが、1983年5月のテレビのスペシャル番組の「Motown 25: Yesterday, Today, Forever」でのステージだったと云われてます。その映像がこちらです。

観客の熱狂度合いが凄いです。このステージの後、マイケルが敬愛するフレッド・アステアから直接ダンスを称賛する連絡があったくらい、このステージは衝撃的でした。「Thriller 40」でも、BTSのダンスのすべての原点はマイケルであると言い切ってますが、確かにこのステージを見ると、そう感じます。このステージを経て、マイケルの人気は更に加速度的にパワーアップされ、いよいよ8月に「スリラー」のPVを制作することを決断するに至るのです。

こちらもシングルヒットした⑦「Human Nature」。
TOTOのスティーヴ・ポーカロとジョン・ベティス(リチャード・カーペンターとの共作で有名なあのジョン・ベティスです)の共作。こうしたシンセが鳴り響く曲は個人的嗜好の範囲外なんですが、この曲は今聴くと味わい深いですね。スティーヴ・ルカサー、ジェフ・ポーカロに加えて作者のスティーヴ・ポーカロ、そしてデヴィッド.ペイチまでシンセで参加。ベースはシンセで代用していますので、実はバックは完全にTOTOですね(笑)。確かに間奏のシンセとか、TOTO風にも聞こえます。

後のクワイエットストームを連想させるような⑨「The Lady in My Life」。
この曲を推す人は皆無でしょうね。本作からシングルカットもされていないし、マイケルの作品でもないし(作者はロッド・テンパートン)。当時はマイケルもこうした楽曲を歌っていたんですよね。エンディングの楽曲にしては地味ですが、随所に出てくるジェリー・ヘイのホーンアレンジとか、かなりAOR的なアプローチも見え隠れするいぶし銀的な隠れ名曲と思ってます。

個人的にはこれ以降のマイケルのアルバムはあまり聴いてません。3度クィンシーと組んだ「Bad」も悪くないですが、やっぱりクィンシーとの3部作の「Off The Wall」と本作のカッコ良さが際立ってますね。

当時よく耳にした80年代にヒットした数々のアルバム…、もっとじっくり聴き込むと違った見方が出来るかもしれません。

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