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ゴダイゴ「OUR DECADE」(1979)

ここ最近、出勤者が増えたためか、日本橋界隈のランチは大盛況の状況が続いておりましたが、昨日はかなり空いておりました。台風通過を見越して、在勤の方が多かったのかもしれません。そして今日も朝から大雨。皆様、どうかお気を付けてお過ごし下さい。

さて、私が敬愛する音楽評論家のスージー鈴木さんが、以前「自分の人生を決定付けた、自分の人生で最も重要なアルバム」として本作をご紹介されておりました。ゴダイゴのリーダーでもあったミッキー吉野さんも、自分の力量の全てを注ぎ込んで制作したという強い自負を持たれていたようで、このアルバムの充実度は他と違うと語っておりました。
とはいえ本作は所謂商業的にヒットしそうな曲が満載…というわけでもなく、何度か聴いて良さが分かってくるというような渋いアルバムと感じます。いろいろな意味で日本のロック史上、燦然と輝く名盤ですね。

本作は1979年発表のゴダイゴ4枚目のアルバム。作詞はすべてプロデューサーのジョニー野村の奥さんでもある奈良橋陽子。作曲は曲によってタケカワユキヒデとミッキー吉野が分け合ってます。
70年代のいろいろな出来事をテーマとしたコンセプトアルバムにもなっており、特にオープニングから4曲目までの流れが素晴らしい。

まずはオープニングの①「Progress and Harmony」。
70年代の万国博覧会のテーマが「人類の進歩と調和」というものでしたが、70年代の終わり、本作発表時点で振り返ると、果たしてそのテーマが実現していたのか、ある意味問題提起するような内容の楽曲。
アップしたのは当時発表されたライブ盤から。メンバーのアカペラからスタートするちょっとゴスペルタッチな楽曲です。タケカワユキヒデらしいポップなメロディとタイトな演奏が光ります。

②「Easy Rider」は洋楽テイスト溢れるいぶし銀的なナンバー。
あまりこの曲をご紹介する人もいないでしょうね(苦笑)。商業的なポップとは全く無縁のロックテイスト溢れるナンバーです。イントロとエンディングの怪しげなアレンジが、映画「イージーライダー」を彷彿させていいですね~。サビが来て、次の2番の歌詞が来るところを、浅野孝已がナチュラル・トーンのギターソロを奏でます。こういう洒落たセンスもミッキー吉野の企みでしょうか。それにしても当時こんな曲を演奏出来た日本のバンドって、ゴダイゴくらいだったんじゃないでしょうかね。

タケカワユキヒデの一人多重録音の③「Shock、Shock、Shock!」。
山下達郎とは全くタイプの違う一人アカペラ。歌詞は70年代のショック、ドル・オイル・エレクトリックのショックを歌ったもの。ポップな曲調とシリアスな歌詞のギャップが面白いですね。

④「Try To Wake Up To A Morning」はミッキー吉野作曲・アレンジの名バラード(①~③はタケカワユキヒデ作曲)。
アップした映像はスタジオ・ライブです。ゴダイゴ・ホーンズも参加しております。バラードですが、メリハリの付いたタイトな演奏が楽しめます。こうして聴くと、スティーヴ・フォックスのベース、いいですね~。
アメリカ仕込みのミッキー吉野に、東京外国語大学卒の英語が得意なタケカワユキヒデ(海外には行ったことがなかったらしい)、外国人2人のリズム隊のゴダイゴだからこそ、こうしたバラードまで洋楽的に聞こえるんですね。

⑤「Close-Ups」~⑦「Purple Poison」まではミッキー吉野が作曲した小作品が、まるでメドレーのように連なっていきます。ビートルズのアビーロードのB面のような感じですね。そして本作でのミッキー吉野の作品は、意図的なのか分かりませんが④~⑨まで続きます。個人的にはその中でのハイライトが⑧「Lighting Man」じゃないかなと思ってます。
この曲、2部構成になっており、前半がピアノを主体としたミディアム・テンポのナンバーで、ミッキーのキーボードソロもちょっと愛らしい感じ。後半はゴダイゴらしいポップチューンにテンポアップします。曲調は「ホーリー&ブライト」みたいな感じ。ここでもミッキーのキーボードソロがカッコいい。
曲調からは想像が付かないのですが、実はこの曲、スターの末路を歌ったナンバー。最後の歌詞は「どうかゆっくりと照明を消して下さい」と切実に歌ってます。

シングルとしてもリリースされた⑬「Where'll We Go from Now」。
こちらはゴダイゴのシングルらしいキャッチーなナンバー。アップした映像は「夜のヒットスタジオ」での出演シーン。浅野孝已が凄く楽しそうにギターを弾いてます。また結構ロックなギターソロ、しかもアーミングを効かせてますね~。生演奏と思いますが、バンド全体の演奏も上手いです。それにタケカワユキヒデのリズム感も抜群。やっぱり素晴らしいバンドですね。

アルバム全体を通して聴くと、起承転結のような形にしっかり纏め上げており、素晴らしいと感じます。当時、ゴダイゴは「銀河鉄道999」が大ヒットし、商業的な成功も収めておりました。レコード会社からの「売れ線」アルバム制作のプレッシャーも相当あったと思われますが、ゴダイゴは全くそれに動じることもなく、こうしたアルバム(もちろん全曲が英語)を確り制作出来た訳で、本作は彼等の強い意志も感じさせる名盤です。

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