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Frank Weber「As The Time Flies」(1978)

もう1人のピアノマン、フランク・ウェーバーのデビューアルバム

堪らなく大好きなフランク・ウェーバー。殆ど知る人も少ないと思いますが、私は彼のセカンドアルバムである「Frank Weber」が大好きで、よく聴いてました。
本作はそのフランクのデビューアルバムです。永らく入手困難で困っていたのですが、2007年11月に紙ジャケ化されたのを機に、購入しました。

まず驚いたのが、その豪華な参加ミュージシャンの面子です。リチャード・ティー(Key)にスティーヴ・ガッド(Ds)のスタッフコンビ。デヴィッド・スピノザ(G)、ウィル・リー(B)、マイク・マイニエリ(Vib)等。そうそうコーラスにはルーサー・ヴァンドロスまで参加してます。

フランクらしいミドルテンポのバラードが1曲目(①「’71」)。
彼のちょっと鼻にかかったような声が、こうした哀愁漂う楽曲には合ってますね。マイク・マイニエリのヴィブラフォンのソロが切なく響きます。いや~、いいですね。

続けて②「Regina」も甘いバラード。
後半、スティーブ・ガッドらしいリズムを刻んでいきます。デヴィッド・スピノザのアコギ・ソロが美しいです。

③「So Many Sides」はこれぞリチャード・ティーと思わせるフェンダー・ローズが終始漂っているメロウなバラード。ルー・マリーニのサックスもいいですね~。

アルバムタイトル曲である④「As The Time Flies」もフランクらしい胸に染み入るメロディが印象的なナンバー。
一部ボードヴィル調のアレンジが施されるなど、結構凝ってます。

①~④まで静かな曲が多いのですが、一転⑤「Complicated Times」のイントロで「ニヤッ」とした方も多いのではないでしょうか? タイトなドラムにシンコペーションが効いたピアノ。紛れもなくAORの香りを振りまいた楽曲ですね。一瞬、ビリー・ジョエル?とも思ってしまいました。
金澤氏のライナーノーツにもこの曲がキラートラックと表現されてますが、私もこの曲がとくに大好きです。特に曲の後半なんか、スティーヴ・ガッドのドラムとリチャード・ティーのピアノがもろにスタッフしていて最高です。AORというとウエストコーストサウンドの代表のように思われますが、この曲、これがニューヨークサウンドAORだッといわんばかりの迫力です。
エンディングのギターソロはデヴィッド・スピノザですが、(ライナーノーツにも書いてあるとおり)まるでスタッフのエリック・ゲイルを連想させるブルージーかつ熱いものがあります。
いや~、最高!!!

⑦「Straighten Up And Fly Right」はナット・キング・コールがヒットさせた曲。
本作中、唯一のカバー曲です。フランクがスウィングしてます。間奏のジャズタッチのピアノはフランク本人によるもの。この曲なんか聴くと、フランクってジャズが大好きなんだなあと思ってしまいます。

ニューヨーカーのピアノマンというとビリー・ジョエルが有名ですが、フランク・ウェーバーも非常に味わい深いものがあると思います。本作は静かな曲が多いのですが、彼のオリジナル曲には心に訴えかけるものが強くありますね。

本作は結局商業的には成功したとは言えず、予算を削られたなかで次作を発表。冒頭の通り、このセカンドアルバムもなかなかいいアルバムだったのですが、これもまたヒットには恵まれず…。
その後、サード・アルバム「Before You」は2010年にようやく発表されるに至ります。実はこの記事の素案は別ブログでサードアルバム発表前の2008年に起こしたものですが、その際にフランクのガールフレンドの方が、ブログを通じて、フランクがアルバムを発表したがっていると連絡があり、この話が私以外にもいろいろ通じていたらしく、無事に金澤さんのところのレーベルからアルバムが発表された…ということがありました。ご縁ですね~。

フランクは現在もジャズ・ミュージシャンとして地道に活動されているようです。


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