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J.D. Souther「Tenderness」(2015)

先週にリンダ・ロンシュタットを採り上げましたので、必然的にこの人…ということになるでしょう。J.D.サウザー…。
今回ご紹介するアルバムは現時点でのJ.D.の最新作ということになりますが、とにかく渋い1枚です。J.D.も本作発表当時は69歳。歳相応の音楽、いい感じに枯れております。

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24年振りに発表した2008年発表のアルバム「If The World Was You」がジャズに接近した作りになっておりましたが、本作もその延長線上にあるようなサウンドです。J.D.の父親はビッグ・バンドの歌手だった方で、その影響で幼少時からアメリカン・スタンダード・ナンバーに慣れ親しんでいたJ.D.。本作はそのスタンダード・ナンバーに挑戦したものですが、よくある往年カバー集ではありません。そこはJ.D.らしく全曲新曲を披露しております。
プロデュースはジャズ・ピアニストとしても有名なラリー・クライン。ラリーは一時期ジョニ・ミッチェルの旦那でしたね。

個人的にはジャズも大好きなので、①「Come What May」の渋い味わいに感激。
YouTubeにはコンテンツがなく、辛うじてFOX Businessの配信コンテンツにスタジオライブがありました(見れますかね??)。レコ―ディング音源では、この素敵なバラードをストリングスアレンジで盛り上げてくれてますが、このスタジオライブはピアノ、ベース、そしてJ.D.のスリーピースでかなり質素。でもだからこそメロディが引き立ちます。こうした別れの歌を歌わせたらJ.D.は天下一品。声は枯れてますし、ところどころ声が出ていないところもありますが、それもまた味わい深いです…。いい歳の取り方してますね。

本作からのリード・トラックが②「Something in the Dark」。こちらはJ.D.とラリー・クラインの共作。
ちょっとアーバン・ソウルな味付けです。淡々と歌われ、アレンジも割と質素な感じ。ストリングスはソウル風ですが、比較的古さを感じさせないアレンジですね。

ジャージーなリズムが心地いい④「Let's Take a Walk」。
この曲はひょっとしたらアコギだけで歌われたら往年のJ.D.らしい曲に聴こえたかもしれません。それを見事にジャージーにアレンジ。淡々と同じリズムを刻むリズム隊が特徴的ですがいい味出してます。またソプラノ・サックスが心地いいですね。

本作のハイライトとなるような楽曲の⑤「Dance Real Slow」。
ジャージーですね~。サビのメロディは如何にもJ.D.らしい感傷的なもの。
アップした映像は完全にジャズ・コンボ・スタイルで、サビに絡むサックスなんか、最高ですね。69歳のお爺ちゃんが「いつも優しく君を抱きしめるよ…」とサラッと歌えちゃう…J.D.…、素敵ですね。

この曲だけ聴くと、J.D.サウザーの曲とは分からないような⑥「Show Me What You Mean」。こちらもジャズですね。
ちょっとミステリアスな曲。本作はスタンダード・ナンバーに挑んだというJ.D.ですが、全体的にはジャズに近い。そしてこの曲も完全にジャズの世界。歳相応の渋さを感じさせます。

実は本作の日本盤のボートラには、リンダ・ロンシュタットに捧げられた⑩「All Your Wishes」という曲が収録されてます。この曲を収録するに当り、リンダの元へ出向き、リンダの許可を直接取ったとのこと。既にこの時、リンダは病気で歌手生活を引退していた状態でしたので、プライベートでも一時期パートナーであったJ.D.も複雑な心境だったと思われます。
例えばキャロル・キングとジェームス・テイラーもそうですが、歳を取っても異性といい関係でいられるというのは素敵なことですね。J.D.とリンダのデュエットはいくつかの音源が残されてますが、ここでは彼等らしいカントリータッチの曲、1980年の映画「Urban Cowboy」で使われた「Hearts Against the Wind」をアップしておきます。


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