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The Rascals「See」(1969)

私の洋楽歴のスタートはモンキーズなんですが、当時からラスカルズの「Groovin'」は大好きなナンバーでした(達郎さんのラジオ番組でもお馴染みですね)。確かCDパッケージで購入した最初のアルバムもラスカルズのベスト盤だったような気が…。そこには本作収録の①「See」も収録されていましたが、当時は後期ラスカルズの楽曲は完全スルーでしたね(苦笑)。ブルー・アイド・ソウルの代表格のラスカルズの持ち味は、本来はそういったブルースをベースとした楽曲にあったんですが、当時の私には全く分かりませんでした。

ラスカルズはフェリックス・キャヴァリエ(Vo,key)、エディ・ブリガッティ(Vo,Per)、ジーン・コーニッシュ(G)、ディノ・ダネリ(Ds)の4人組で、フェリックスとエディの2人のリードヴォーカルが特徴的でした。ただ、もうこの頃はフェリックスの独壇場となっており、エディもやる気を失くしていたのではないでしょうか。フェリックスもインド・ヨガにハマっていた時期で、それがバンドの崩壊の一要因だったと思われます。

本作はラスカルズ6枚目のオリジナルアルバム。前作に続いてプロデュースはラスカルズとアリフ・マーディン。ラスカルズはベースレスのバンドですが、以前からチャック・レイニーがその役を務めてます。
全体的には時代背景なのか、サイケ感覚が強いような気がします。ただし、各々の曲にエッジが効いていて、かなり面白いんですね。若い頃であれば気付かないような面白さがこのアルバムにはあります。あ、もちろん「Groovin'」みたいな楽曲もいいんですが。

アルバムトップから早速ちょっとサイケ感覚のあるフェリックス作の①「See」。
イントロからシタールみたいな音が聴こえてきますね。でも曲そのものは彼等ならではのブルースをベースとしたロックンロール。しかもかなりアバンギャルドなアレンジ。フェリックスのオルガンは黒っぽいし、スライドギターみたいな音とか、サイケ感もバッチリ。エンディングにかけてのチャック・レイニーのベースがグルーヴィーですね。この良さは若い頃は全く理解出来なかったです。

本作中、一番大好きなトラックが②「I'd Like to Take You Home」。
名曲「Groovin」を彷彿させるようなナンバー。こちらが1曲目だとアルバムの印象も全く違うものになったかと思います。ただ、緊張感のある①「See」が最初に収められていることで、次のこの曲が、余計引き立つような気もします。こちらもフェリックス作ですが、こうした曲を作らせたらフェリックスって天才的ですね。

イントロからモロにインド音楽の⑤「Stop and Think」…。
もちろんこちらもフェリックス作。冗長的なラガロックかなと嫌な予感がしたのですが、この曲、ラガロック感覚が逆に曲の醸しだすサイケ感覚をうまく引き出してます。ディノのドラミングも効果的だし。私はあまりラガロックって好きじゃないのですが、この曲は例外。結構好みです…。不思議な魅力を持っている楽曲ですね。皆さんはどうお感じでしょうか。

⑥「Temptation's 'Bout to Get Me」はThe Knight Brothersという黒人デュオの1965年のヒット曲のカバー。
原曲はもうちょっとスローなナンバー。ここではフェリックスとエディの2人のリードヴォーカルが聴けます。原曲よりもゴージャス、かつメロウなアレンジ。2人の熱いヴォーカルとラスカルズらしいアレンジ。ライチャス・ブラザーズ風といえば分かり易いでしょうか。カバーとは云え、素晴らしいナンバーだと思います。

ちょっとジャージーな⑦「Nubia」。
イントロから印象的なベースはロン・カーター。この曲がジャージーに聴こえるのはロンのベースに拠るところが大きいですね。そして間奏のフルートはヒューバート・ロウ。かなり洒落た音楽です。「Nubia」のような曲から、サイケ、ロックまで、恐るべきラスカルズの(フェリックスの)才能。

ゴスペルタッチ風のR&Bロックの⑧「Carry Me Back」。
エディの黒いヴォーカルが炸裂します。この演奏シーンを見ていても分かりますが、彼等、結構上手いんですよね。ドラムのディノのバチ捌きもなかなか(いつ見てもポール・マッカートニーに似てます)。あと演奏がグルーヴィー。ノリがいいんですよね。

このアルバムはラスカルズの作品の中でも地味な存在ですが、よく聴くと味わい深い作品ばかりで結構いいんですよね。やっぱりラスカルズは奥が深いです(ドラムのディノは昨年12月にお亡くなりになられてましたね。R.I.P.)


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