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Carole Bayer Sager「Carole Bayer Sager」(1977)

キャロル・ベイヤー・セイガーというと1981年発表のサードアルバムSOMETIMES LATE AT NIGHTがあまりにも有名ですが、このデビューアルバムも素朴な音作りが堪らなくいいんですよね。

キャロルは学生時代にあのスクリーン・ジェムズのドン・カーシュナーに見出されて、同社へ入社。ドン・カーシュナーといえばモンキーズ(私だけ??)。そのモンキーズにも「When Love Comes Knockin'」、「The Girl I Left Behind Me」といった素晴らしい楽曲の詞を提供しています。ちなみにこの2曲、両方とも作曲はあのニール・セダカ。この2曲ともいい曲なんですよね。

70年代に入るとメリサ・マンチェスターやピーター・アレン、ブルース・ロバーツ等と共作するようになります。そんななかプロデューサーであるリチャード・ペリーが彼女自身で歌うことを勧め、本作制作に至ります。

彼女の詞は胸が切なくなるようなものもあれば、ユーモアたっぷりなものもあったりして、非常に楽しめます。本作はそれに伴うメロディが秀逸なものばかりなんですよね。
メリサとの共作①「Come in from the Rain」はオープニングナンバーとしては非常に地味な曲なんですが、アコースティック・ギターはリー・リトナーで、しっとり聴かせます。メリサのバージョンでも有名な1曲。

てっきりブルース・ロバーツの曲かと思ったらピーター・アレンが作った③「Don't Wish too Hard」。こうしたちょっとコミカルな感じの曲も、心許ないキャロルのヴォーカルには合っているような気がします(笑)。怪しげな男性ソロはトニー・オーランドです。トニーもスクリーン・ジェムズ所属ですね。

切ないメロディが大好きな④「Sweet Alibis」。
作曲は彼女の夫となるマーヴィン・ハムリッシュ。映画音楽の世界では御大ですね。
 ♪ Four in the morning and I hear you coming in
   I'm trying to pretend ♪
実は詞もかなり切ないんですよね。こうした詞を作らせたらキャロルは天下一品です。
そして燃え上がるようなギターソロはなんとリーリトナー。アコギが似合うリトナーなので、こうしたタイプのソロを珍しいのではないでしょうか?
そしてドラムはジム・ケルトナーです。

こうした切ないメロディと詞という組み合わせでいうと⑦「Steal Away Again」なんかは最高ですね。大好きです。
「Steal Away Again」・・・また駆け落ちする、といった意味でしょうか?
 ♪ Tell me how would you like it
   Say would you like it ♪
こんな感じで言われたら、相手は何て答えたらいいのでしょうか?
ブルース・ロバーツとベット・ミドラーとの共作。素晴らしい楽曲です。

この後に続く⑧「You're Moving Out Today」が、また⑦から一転、コミカルな曲でいいんですよね。しかも⑦と同じ作曲陣。ブルース・ロバーツって洒落っ気のある人です・・・。
コミカルなピアノとバックの追い出される男役(?)がブルース・ロバーツです。
この曲、1年居候された男を追い出す歌で、いちいち追い出すモノまで描写していく詞がユニークです。
印象的なスライド・ギターは名手ヒュー・マックラケン。

冒頭申し上げたとおり、次の旦那となるバート・バカラックとの共作アルバム「SOMETIMES LATE AT NIGHT」で彼女の詞の世界観が見事にメロディとともに結実したように思います。
その後バートとのコラボはクリストファー・クロスの「ニューヨークシティ・セレナーデ」やディオンヌ・ワーウィックの「愛のハーモニー(That's What Friends Are For)」で更に推し進められ、1986年「愛のハーモニー」で2人はグラミー賞を受賞します。

キャロルは歌がそれほどうまくないので、自分では「SOMETIMES LATE AT NIGHT」である程度やるべきことはやってしまったと思っているのかもしれません。以降彼女自身のアルバムは発表されてません。ちょっと新作も聴いてみたいですね。
キャロル、そして歌が下手といえば、もう1人のキャロル(笑)。実はキャロル・キングとのコラボが、あのキャロル・キングの2001年に発表された名作Love Makes the World。もともと顔見知りだったこの2人のキャロル。実はコラボはこれが初めてと思われます。この作品を作ろうと誘ったのはキャロル・ベイヤー・セイガーのほうだそうです。ですからこの作品のエグゼクティブ・プロデューサーは彼女なんですよね。

そうそう彼女の公式HP、なかなか読み応えがありますよ(もちろん英語ですが)。

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