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Carpenters 「Voice of the Heart」 (1983)

管理人の音楽歴は、モンキーズを源流とするポップスに端を発していることから、メロディが美しいポップスが今でも大好きです。特にカーペンターズは今もこよなく愛しております。ちょうど音楽(=洋楽)を聴き始めた頃にカーペンターズの存在を知り、「あ、いいな~」と思っていた矢先に、カレンが亡くなってしまいました。それは1983年2月でした。
カーペンターズの全盛期は70年代初頭から半ばまででしょうか。以降も良作を発表していったものの、兄リチャードも薬物依存症、妹カレンも拒食症と、健康状態が思わしくなく、1981年に「Made In America」という佳作を発表しますが、突然、カレンは亡くなってしまいます。
本作はカレンの死後発表された、実質的にはカーペンターズ、最後の作品。

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カレンが1982年4月21日、生前最後にレコーディングしたのが①「Now」。永年の盟友であったロジャー・ニコルスの作品。ロジャーらしい、美しいメロディを持つバラードです。往年のカーペンターズサウンドとも言えますね。もうカレンは居ないと思いながら聴くと、涙を誘うような名曲。

前曲から一転、弾けるような明るいサウンドの②「Sailing on the Tide」。これまた彼らが得意としていた往年のサウンド。しかも作者はカーペンターズを支えたギタリスト、トニー・ペルーソであるところもファンには嬉しいですね。彼の明るくクリアなトーンのギターもしっかり聴けます。この曲、ドラムはエド・グリーン。確かに重たいドラムですね。

本作中、一番のお気に入りが④「Make Believe It's Your First Time」。作者はBob Morrison & Johnny Wilson。カントリー界のライターでしょうか。
この曲の歌詞、いろいろな解釈ができると思いますが、私としては、昔付き合っていた彼女と紆余曲折の末、再開を果たし、再び恋に落ちる、過去は過去、今は今、過去の悲しみは置いてきて、初恋のつもりで再び恋をしましょう…って解釈なのですが。
1979年にボビー・ヴィントンがヒットさせたナンバー。ボビーのバージョンとは1番と2番の歌詞が入れ替わり、一部歌詞も変わってますね。ボビーの歌詞サビに ♪ Leave your memory behind ♪ ってあるんですが、これがカーペンターズだと♪ Leave your sadness behind ♪ になっていたりと。メモリーでなくて、悲しみにしたところが、この曲の持つ前向きな姿勢をより一層引き立てると感じてます。
カレンは、兄リチャードの病気もあり、1980年にカーペンターズの活動が休止にあった頃、フィル・ラモーンのプロデュースの下、ソロアルバムを収録します。本作はその際に収録されたもの。当然、ボビー・ヴィントンのバージョンを耳にして、彼女なりの解釈をしたものと想像されます。

カーペンターズといえばポール・ウィリアムスの存在も忘れてはならないですね。ポールは作詞家の立場で、前述のロジャーとタッグを組み、名曲を輩出していきましたが、ここでは作詞作曲として⑦「Ordinary Fool」を提供。しっとりとカレンのヴォーカルを聴かせる、ちょっとジャージーな、落ち着いたサウンド。70年代前半のカーペンターズにはなかったようなサウンドかもしれません。

⑧「Prime Time Love」はちょっとAORテイストがかった佳曲。シンコペーションが心地いい。80年代らしいサウンド。サックスはトム・スコットです。

⑨「Your Baby Doesn't Love You Anymore」ははMORの雰囲気漂う落ち着いたポップス。こうした楽曲を歌わせたら、カレンの右に出るものはいないでしょう。華麗なオーケストラと洒落たチャック・フィンドレーのトランペットのソロも素敵です。

ちょっとジャケット写真のカレンは痛々しい雰囲気ではありますが、本作、未発表音源を集めたような駄作とは全く思わず、むしろオリジナルアルバムとしての、いつもカーペンターズ作品として楽しめます。リチャードのアレンジ能力、そしてカレンの素晴らしいアルト・ヴォイスには脱帽する思いです。

ちなみにエンディングトラックの⑩「Look to Your Dreams」、作詞:ジョン・ベディス、作曲:リチャード・カーペンターの作品。これからのクリスマスシーズンに向けてぴったりのハートウォームな作品です。リチャードの作曲能力も素晴らしい!


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