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Van Morrison「Moondance」(1970)

ヴァン・モリソンといえば、60年代のブリティッシュ系ブルー・アイド・ソウルのバンドとして名を馳せたゼムのリードヴォーカルとして有名。ストーンズをもっとソウルフルにしたような、そしてヴァンのヴォーカルもダミ声で迫力があるバンドでした(「Gloria」なんて、今聴いてもカッコいいですね)。
アメリカン・ツアー中だった1966年、ヴァンはゼムを脱退し、ソロ活動をスタートさせます。ファーストアルバムはゼム時代からの付き合いのプロデューサー(バート・バーンズ)が、ヴァンの意向を無視した形で発表。ただしそのプロデューサーが急死したことから、心機一転、ワーナーと契約を交わし、1968年「Astral Weeks」を発表も、商業的には失敗に終わってしまいます(但し、そのセカンドも今では誉れ高き名盤扱いされてますが)。そして直ぐに本作のレコーディングを開始し、1970年、本作が発表されました。

本作発表当時、ヴァンは若干21歳。正直、早熟というか…、老齢な声なので、その年齢に驚かされます。もちろん本作のハイライトはアルバムタイトルトラックの②「Moondance」。洋楽ファンであれば、多くの方がご存知の曲と思いますが、一応アップしておきます。完全な4ビートジャズで、メロディを奏でるフルートやジャージーなピアノが実にクール。ソウルフルなヴァンの、ちょっと投げやりにも聞こえるヴォーカルがセンス抜群ですね。このサウンドとグルーヴィーなセンス、若干21歳、そして1969年という時代背景を考えると、この曲がいかに斬新か、ご理解頂けるかと思います。

本作、実は②「Moondance」が異色のトラックであり、他9曲はスワンプなサウンドなんです。明らかにザ・バンドから影響を受けたようなサウンド…、そして楽器の使い方。アルバムトップの①「And It Stoned Me」から、かなり濃厚なスワンプですね。それに続くのが前述の「Moondance」。これでジョーカーは出し尽くしたのかと思いきや、キラートラックの③「Crazy Love」が控えております。スワンプ好きであれば、この曲名ですぐピンと来ると思いますが、Rita Coolidgeがカバーした曲です。ヴァンが歌うと余計に心に染みてくるバラードとなりますね。ヴァン、一世一代の名バラード。素晴らしい1曲です。歌詞の ♪ Love Love Love… ♪ ってフレーズは、ドリカムの「Love Love Love」を連想させます(個人的にはドリカムは「Crazy Love」からインスパイアされて作ったのでは??と思ってます)。

もう素晴らしい曲はないだろうと思っていたら、④「Caravan」もまた素晴らしい!これもザ・バンドのような、コクのあるサウンドですが、サビの ♪ La La La ~ ♪ のような一緒に口ずさみたくなるような、ポップな一面もあったり、ヴァンの情熱的なヴォーカルを煽るようなホーンとか、どれも素晴らしいのです。
アップしたライブはザ・バンドとの共演!ラスト・ワルツからの映像です。ヴァンの熱いヴォーカル…、絶品です。

勇気と希望の賛歌、⑧「Brand New Day」。これもクラシック・ソウルの1曲。女性コーラスがゴスペルチックに曲を盛り上げます。アップしたのはアルバムとは別バージョンの、ちょっとフォーキーなヴァージョン。ヴァンの声は実にソウルフルですね。

エンディングの⑩「Glad Tidings」はベースが曲を引っ張っていく、R&B色の濃い曲。アルバムの中ではアップテンポな曲でもあります。モータウンっぽいサウンド。それでもヴァンのヴォーカルにはコクがあるので、じっくり聞かせてくれますね。

全曲捨て曲なしの名盤。もともとR&Bをルーツとしたサウンドだったのが、ザ・バンド等、スワンプに影響され、それが独自の音楽へ開花していった本作。アルバムタイトルトラックだけは異色のジャズ系ですが、それすら本作には違和感なく収まってます。

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