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Libby Titus「Libby Titus」(1977)

前回スティーリー・ダンをご紹介した流れから、この方、リビー・タイタスさんに繋げます。そう、ドナルド・フェイゲンの奥様ですね。

私は彼女のキュートな声を聴くと、なぜかキャロル・ベイヤー・セイガーを思い出しちゃいます。もちろんカラーは違いますが、声質やキャラ(もちろん会ったことも無いんですが)とか作風とか…、近しいものを感じます。
ちなみにリビーは後にキャロルの旦那様となるバート・バカラックとも本作発表後、コラボしておりますね。

リビーは恐らく2枚しかオリジナルアルバムを発表しておりません。1968年のファーストと本作のみ。そんな寡作なリビーですが、本作はなかなかの好盤。プロデューサーは曲に応じてポール・サイモン、カーリー・サイモン、フィル・ラモーン、ロビー・ロバートソンの4人が務めてます。全く音が想像出来ない(笑)。

本作はある意味、纏まりのないアルバムと云えるかもしれません。ただ全体的にはもの静かな印象。そこにリビー独特のヴォーカルが舞っている感じでしょうか。そしてニューヨーカーな雰囲気を感じさせるアルバム。

まずはアルバム・トップの①「Fool That I Am」。
こちらはなんとアル・クーパーとリビーの共作。トップなのにやたらと静かなイントロ、そしてメロウなドン・グロルニックのエレピが心地よい。バック・コーラスとプロデュースはポール・サイモン。フリューゲルホルンが如何にも都会の夜といった感じでいいですね。

今度は一転して4ビートジャズの②「Kansas City」。
しかもこの曲、ビートルズもカバーしていたあの「カンサスシティ」です…。原曲は1952年にリトル・ウィリー・リトルフィールドが歌ったR&Bソングなんですね。
こちらもポール・サイモンのプロデュース。見事なニューヨーク・ジャズに仕上げてます。
ベースはなんとチャック・イスラエル!ビル・エヴァンスとの共演でも著名なジャズベーシストです。これは聴き応えあります。ギターソロはジョー・ベック。なんと贅沢な作りでしょう…。

本作中、私の一番のお気に入りは④「The Night You Took Me To Barbados In My Dreams」。
ハース・マルティネスとリビーの共作。ロビー・ロバートソンのプロデュース。ハースは元々ロビーに見出された方なので、ロビーのプロデュースというのは自然な流れかもしれません。印象的なギターはハース自身。ハースらしい宙を舞うようなフワフワしたような感じが堪りません。
ドラムはジョン・ゲラン、ベースはマックス・ベネット。そしてキーボードはガース・ハドソン。ロビー、ガースとくればザ・バンド、そしてリヴォン・ヘルム。この当時、リビーはリヴォンの奥様でした…。リヴォンとリビーの間に生まれた娘がエイミー・ヘルム。SSWとしても活躍されてますね。

エリック・カズとリビーとの共作のあまりにも有名な⑤「Love Has No Pride」。
多くのアーチストに歌い継がれている名曲。やはりリンダ・ロンシュタットのバージョンが有名でしょうか。本家だけあって、リビーのバージョンも魅力的。この曲は女性ヴォーカルが映えますね。

コール・ポーターのジャージーな名曲をリアレンジした⑧「Miss Otis Regrets」。
これはやはりエラ・フィッツジェラルドのバージョンが有名でしょう。
それをロビー・ロバートソンがプロデュース、いぶし銀的なギターもロビーのプレイです。リビーの愛らしいヴォーカルがピッタリ合ってますね。
ここで詳しくは紹介しませんが、歌詞は結構悲劇的な内容なんですよね。

本作ではカーリー・サイモンの曲を4曲も採り上げてます(一部はリビーとの共作)。
その内の1曲をご紹介しておきます。それが⑨「Wish I Could」。
カーリーらしいキャッチーなメロディ。どことなくビートルズっぽい雰囲気もあったりする私好みのメロディです。
間奏の口笛が、ちょっと掠れ気味で素人臭く、ちょっと笑えます。もちろんリビー自身が吹いていると思われます。本作ではいろいろなタイプの曲が歌われてますが、一番カーリーの曲がリビーに似合っていると感じますね。

80年代のリビーは映画やミュージカルの分野に進出して、ロックンロールミュージカルなんかも制作されていたようです。これが後の「ニューヨーク・ロック・アンド・ソウル・レヴュー」に繋がり、ドナルド・フェイゲンとの接点が生まれ、結婚に至ったというわけですね。
もう難しいとは思いますが、彼女にはニューヨーカーらしいニューアルバムを期待したいものです。


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