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Eric Clapton 「No Reason To Cry」 (1976)

今回は久しぶりにエリック・クラプトンのアルバムをどうぞ。ちょっと地味なソロ4枚目のアルバム「No Reason To Cry」。
クラプトンのソロアルバムというと、1970年発表のファースト「Eric Clapton」、1974年発表のセカンド「461 Ocean Boulevard」辺りが有名ですが、こちらもいいアルバムです。
本作の最大の特徴は、クラプトンが憧れていたザ・バンドやボブ・ディランとの共演が実現、実にレイドバックした味わい深い作品に仕上がっていることです。クラプトンは「ザ・バンドのメンバーになりたかった」と述べる程に、ザ・バンドの音に憧れていたようです。

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プロデューサーはザ・バンドを手掛けたロブ・フラボ二が名を連ねてますが、本作制作当初はクラプトンと盟友のカール・レイドルが中心となって手掛けたもの。過去3作のプロデューサーはトム・ダウドですが、彼はアトランティック専属プロデューサーでもあり、そういった大人の事情で、最終的にはロブに落ち着いていったようです。
本作はクラプトンの作品の中でも、かなり地味な印象のアルバムかもしれません。キャッチーな名曲も、ヒットした楽曲も、ハードなギターソロも収録されてませんし。但し個人的にはスワンプなんかが大好きなので、本作、結構気に入っております。

アルバムトップの①「Beautiful Thing」はザ・バンドのリチャード・マニュエルリック・ダンコの作品。いきなりザ・バンドの世界です。アルバムトップに相応しい曲とは思えないスロースタートな楽曲ですが、このいぶし銀的なナンバーこそが、クラプトンがやりたかった音楽なのでしょう。スライド・ギターを駆使したギターソロも渋い。

個人的にはトップナンバーにはこっちが相応しいと思ったリズミカルな自作のナンバーの②「Carnival」。ドラムはジム・ゴードンっぽい音ですが、クレジットからすると、クラプトンとは交流の深いジェイミー・オールデーカーでしょうか。パーカッションが賑やかだし、カーニバルの雰囲気を盛り上げるイヴォンヌ・エリマンマーシー・レヴィ(多分)等の女性コーラスも素敵です。

本作の白眉、ボブ・ディランの作品、そしてボブ・ディランとの共演が素晴らしい③「Sign Language」。カントリータッチのレイドバック感がいいですね。ディランのヴォーカル、ワンアンドオンリーで一聴してディランと分かります。途中のマンドリン風のギターソロはクラプトンでしょうか。各楽曲のクレジットがないので分かりませんが、本作にはロン・ウッドやジェシ・エド・デイヴィス等がギターで参加してますから、誰が弾いているんだろうって想像するのも悪くないですね。

原点回帰したようなブルースソングもしっかり収録されてます。それが④「County Jail Blues」、⑦「Double Trouble」とCDのみボートラで追加された⑪「Last Night」の3曲。正直ブルースはそれほど好きではないのですが、本作のようにスワンプっぽい楽曲群のなかに収まっていると、結構味わい深く聞こえます。④はアルフレッド・フレーズ、⑦はオーティス・ラッシュ、⑪はリトル・ウォルターのスタンダード・ブルース。

マーシー・レヴィをフューチャーした⑧「Innocent Times」。マーシー・レヴィは1974年にクラプトン・バンドに加入、スワンプ系の楽曲に彼女のコーラスは妙に合ってました。彼女、後にマルセラ・デトロイトと改名しております。この「Innocent Times」はクラプトンと彼女が共作したナンバー。完全にマーシーにリードヴォーカルを任せたゴスペルタッチの楽曲。朗々と歌い上げるマーシー、貫録ありますね。リンダ・ロンシュタットが歌いそうな、哀愁漂うカントリーバラード。

泣きのバラードの⑩「Black Summer Rain」は、後の「Wonderful Tonight」の原型とも云われている楽曲。クラプトンの自作。メロウなギターが堪りませんね。

こうして聴いてみると、なかなかの名盤…ですよね。70年代のクラプトンも悪くないです。

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