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「アイカツ!」を20話見たら推しを見つけた話

※好きに書いた怪文書です。ご注意ください。なお、アイカツファンの方はどうか温かい目で読んでやってください。


夫いわく「一番落としたい沼」

「アイカツはいいぞ」

事あるごとに夫の口から出るこのセリフに、私は呆れ果てていた。あーはいはい、また始まった。

こちらの記事でも何度も登場している夫だが、主に好きなものが3つある。

ポケモン、カードゲーム、そして最後がアイカツだ。

いずれも彼の血肉となっているコンテンツだが、特に「アイカツ!」に対する思い入れはすごい。端的に言って、愛が重い。「アイカツは人生を支えてくれた」と滔々と語り始めるものだから、つい聞き流してしまう。

夫だけではない。私がこれまでに出会ったアイカツ好きは、尋常ではない愛を抱えている人が多かった。いかにアイカツに救われたか。どんなふうに人生のドン底から引っ張り上げてくれたのか。「アイカツはいいぞ」と始まり、どこがいいかと聞けば数千、数万字のレポートで溢れんばかりの愛を語ってくれる。

アニメ「アイカツ!」の放送が始まったのは2012年。一時期アニメから離れていた時期だ。本来のターゲットである女の子だけでなく大きなお友達にも人気で、衣装やアクセサリーが書かれたカードの売上げも好調。私がアイカツについて知っていたのはそれくらいだったが、「アイカツに近寄ってはならない」ーー本能レベルで、私はそう感じていた。


そしてその時は来た

しかし、そんな私にもついに、アイカツと向き合う時が来てしまった。ずっと夕食時にポケモンを見ていたのだが、オレンジ諸島編までの118話分、見終わってしまったのだ。平行して遊戯王も見ているが、もう一作品くらいはラインナップに入れたい。

そう、魔が差しただけなのだ。ふと思いついた私は、fire stick TVのリモコンを手に取り、アレクサに聞いてみた。

「アレクサ、アイカツが見たい」

ゆーねくすと

(全部あるやん……)と固まる私に、夫は耳元で優しくささやいた。

「アイカツはいいぞ」

こうして、アイカツと遊戯王を交互に見る日々が始まった。


夫から「アイカツは衝撃がすごいから、一日一話までね」とパパのようなことを言われ、はや一か月ほど。気付くと、アニメ第一部の20話まで来た。

ここまでの道のりは、まぁ正直に言えば長かった。

アニメは、主人公の「星宮いちご」がひょんなことから、超トップアイドル「神崎美月」のコンサートに行くところから始まる。美月の魅力に衝撃を受けたいちごは、親友の「霧矢あおい」と共にアイドル養成学校のスターライト学園の編入試験を受け、見事合格、アイカツ(アイドル活動)に励むこととなる。

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(下段真ん中がいちごちゃん、右があおいちゃん、左はユニットを組むことになる紫吹蘭ちゃん。そして上でオーラを放っているのが美月ちゃん)


こんなことを言うとファンから怒られるかもしれないが、初期のいちごちゃんには目指す目標がない。それがとにかく、見ていてつらかった。

アイドルになったのは美月ちゃんの影響に過ぎないし、編入オーディションでは才能の片りんを見せるものの、「なりたいアイドル像」があるわけではない。女優になりたい、モデルになりたい、などそれぞれ目指す道がある同級生たちと比べると、いちごちゃんはまるでスポンジ。周りに言われたことはなんでも受け入れ、「こうした方がいい」と言われた方にほいほい進んでしまう。そんな姿に、最初は「これが主人公……?」と違和感を覚えていた。

それが大きく化けたのが、第16、17話の「ドッキドキ!! スペシャルライブ」だ。

スターライト学園の学園長に「星宮には、何かがある」と見初められていたいちごちゃんは、美月ちゃんの単独ライブにゲストとして出演することになる。数々のオーディションはこなしてきたものの、プロ意識はまだ十分でないいちごちゃんの姿に、ずっと胃が痛かった。本番で大失敗してトラウマになるのではないか。そんな最悪の結末が、たやすく想像できた。

しかしさすがに女児向けアニメ、そんな鬱展開にはならない。いちごちゃんの努力が実を結び、目標だった3回のスペシャルアピールは成功、美月ちゃんはさらにその上をいく4回のスペシャルアピールを出して、ライブは大成功に終わった。

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(スペシャルアピール=ステージ上でしか見られないイリュージョン演出のこと)

ライブが終わり、数日経っても放心状態のいちごちゃん。周囲はそんないちごちゃんを心配するが、ライブが終わって燃え尽きてしまうほど、彼女はヤワではなかった。

「まだまだ足元にも及ばないけど、すっごく努力しても追いつけないかもしれないけど、私もあんなふうになりたい。みんなに笑顔と夢を届けられるような、本当のアイドルに!」

親友に誘われたから、楽しそうだから、美月ちゃんのようになりたいから。目指したいものがなかったいちごちゃんの中に、明確な「アイドルとしての目標」ができた瞬間だ。そして視聴者にとっては同時に、「ここから物語が始まるんだ」と確信する、そんな回だった。


ユリカ様を推せ

これから面白くなりそうだ、と思って続けてアニメを見ていると、ついに待ち望んだアイドルが出てきた。藤堂ユリカ様だ。

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以前、「まあとりあえず聞いてみてよ、CD全部あるからさ」と夫にアイカツ楽曲を聞かされた時に、気になった曲があった。これなんて曲、と聞くと「永遠の灯(ともしび)」だと教えてくれた。「ユリカ様っていう吸血鬼の女の子の曲なんだよ」とも。

ポップな曲が多い中、ひと際耳に残るメロディ。ダークでかっこいいこの曲は、私がアイカツで唯一好きな曲になった。

ユリカ様ーー藤堂ユリカは、「人間と吸血鬼の間に生まれ推定600歳、永遠の刻を共に旅してくれる下僕を探している」というキャラクターを徹底して演じている。もともとお人形遊びと吸血鬼が好きだったのに加え、ファッションブランド「Loli GoThiC(ロリゴシック)」との出会いが彼女を変える。

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アイカツには様々なファッションブランドが登場し、それらはリアルでもカード化されてアーケードゲームで遊ぶことができる。これまで、Angely Sugar(エンジェリーシュガー)、FUTURING GIRL(フューチャリングガール)、SPICY AGEHA(スパイシーアゲハ)などが登場したが、いずれもキュートでポップ、いかにも女の子が好きそうなかわいいデザインだった。

そんな中、「ロリゴシック」のテーマはずばりゴシック。黒い羽根、青薔薇、レースとリボンにクラウンアクセサリー。ここだけの話だが、いつかゴスロリを着てみたい私。ロリゴシックのコンセプト自体、惹かれるものがある。

ユリカ様もロリゴシックの世界観の大ファンで、そのファッションをまとい「吸血鬼」としてのイメージを確立し、人気アイドルとなっていく。しかし、素の彼女はツインテールをほどき眼鏡をかけた、真面目で控えめな女の子。ファンには知られまいとキャラ作りに徹する、健気な部分もある。

第20話では、アイドルとしてのイメージとかけ離れた私生活をスクープされたことで、アイドルを辞めようと思い悩んでしまう。しかし、いちごちゃんたちの協力や、大好きなブランド・ロリゴシックのために再び立ち上がる。

「今はまだプレミアムレアドレスにふさわしくないかもしれない……でも、きっとそうなる。そのためなら、どんな努力もする!私は、誰よりもLoli GoThiCのドレスにふさわしいアイドルになります!」

アイカツでは毎回ライブシーンがあるのだが、ロリゴシックのプレミアムレアドレスをまとい、堂々とパフォーマンスをするユリカ様のバックに流れるのは「硝子ドール」。存在感あるドラムがリードする、これまたかっこいい曲だ。

強く、毅然として、凛々しい。それは、アイドルでなく、一人の人間として私が憧れる姿だ。ユリカ様は、自分の好きなもののために、きっとこれからもそんなアイドルでいてくれるのだろう。

あまり「推し」という言葉は好きではないのだけど、アイカツでの推しができた。私にとってのそれは、強く美しい吸血鬼、ユリカ様だ。


おわりに

今回記事にしてみて感じたのだけど、アイカツのこととなると語りたいことが多くなる。だからこそ、アイカツ好きは口を揃えて「アイカツはいいぞ」と言うのかもしれない。

初代「アイカツ!」は、全178話。私もまだそのスタートラインに立ったばかりだ。

周りに勧められて、アイカツを見ようか迷っている人がいれば、どうか17話までは頑張って見てほしい。なんならそんなに真剣に見なくても、作業しながらの流し見でもいい。おそらく、美月ちゃんといちごちゃんのライブが始まった時、思わず作業の手が止まるだろうから。

そして、いつかあなたの「推し」が見つかるはずだ。スターライト学園には、私もまだ出会っていない、たくさんの個性あふれるアイドル達がいる。その時には、あなたも私も、きっとアイカツ沼の住人になっていることだろう。


「アイカツはいいぞ」


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