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【感想文置き場】

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映画、小説、マンガなどの感想をつらつら書きます。不定期更新。
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記事一覧

【読書感想文】阿刀田 高『ギリシア神話を知っていますか』

こんばんは、ゆのまると申します。 久々の読書感想文。今回ご紹介するのは阿刀田 高先生による、ギリシア神話入門書です。 「ギリシア神話を知っていますか」 こう問われれば、恥ずかしながら私は「いいえ」と答えざるを得ません。 古代の神々の物語、浮気者ゼウス、星座、英雄ヘラクレス等々、芸術分野やゲームなどから得た断片的な知識はあります。高校生の頃には世界史の授業でも習いました。しかし、それらが一体どんな物語なのか、体系的に学んだことはありませんでした。 そうして30年生きて

【考えたこと】斎藤環『「自傷的自己愛」の精神分析』

こんにちは、ゆのまると申します。 最近、「小説以外の本が読みたい!」という衝動に突き動かされまして、本屋さんの新書コーナーをぶらぶらしております。 というのも近日報じられるニュースは、これまであまり聞いたことがないような信じられないものが多く(日本の貧困化、「Z世代」テロetc)、「この国は一体どうしてしまったんだ」という疑問がよく浮かんでくるのです。お世辞にも社会に関心があるとは言えない私ですが、心理学・社会学・経済学と分野を問わず、その答えになりそうな本を読み漁る日が

【読書感想文】宮部みゆき『誰か』

こんばんは、ゆのまると申します。 積読を崩そうシリーズ第一弾。 部屋の隅に積まれていた本書を引っ張り出してきたものの……読み終えた今、正直戸惑いを覚えています。 のほほん婿殿・杉村三郎は、果たしてこの辛く厳しい社会で生きていけるのか?と。 これまで読んできた宮部作品には、思慮深く、忍耐強く、目的達成のためには多少強引な手を使っても構わないという人物が多く描かれていました。登場する人物も警察官や探偵が多く、彼らのストイックさに私は惹かれていました。 対して今作の主人公

『長い長い殺人』読了。 四人の被害者が出た保険金交換殺人。混迷を極めたこの事件を語るのは、登場人物各々の"財布"。 複数の視点が必要になるミステリーにおいて、財布にそれを語らせるアイデアがよい。普段持ち歩く物の中でも、財布って特別なアイテムですし。 今作も満足の読後感でした。

【読書感想文】宮部みゆき『あやし』

2003年に刊行された本書。この本の存在は、ほとんどリアルタイムで知っていました。 小学校高学年にさしかかっていた当時の私は、そろそろ「青い鳥文庫」を卒業して普通の文庫本も読んでみたいと背伸びをしたがっていた時期でした。書店に置かれた「カドブン」的な冊子に載っていたのが、宮部みゆきさんの『あやし』だったのです。 私なその頃、宮部さんの『ブレイブ・ストーリー』に夢中になっていて、『今夜は眠れない』『ステップファザー・ステップ』などにも挑戦していました。そして小学生の頃といえ

【読書感想文】島田荘司『占星術殺人事件』

こんばんは、ゆのまると申します。 占星術殺人事件。ついに、ついに読みました。 新本格の先駆けとして、多くのミステリーランキングに名を連ねる本書。そして綾辻ファンとしては、あの「館」シリーズの名探偵・島田 潔の名前の由来となったこともあまりに有名です。 いつかいつかと思いつつ部屋の隅に積まれていたのですけれど、今夏、とあるマンガがきっかけでまた話題になり(あまりいい話題ではないのですが……)、とうとう手を出しました。 ということで今回は、島田荘司作『占星術殺人事件』のネ

【短文感想】小野不由美『月の影 影の海』上下

おはようございます、ゆのまると申します。 こんなつぶやきをしてから早3週間。 多くの人に「十二国記ワールドへようこそ!」と背中を押され、あれよあれよと言う間に『月の影 影の海』の上下巻を読破しました。 そして昨日本屋さんで、次の『風の海 迷宮の岸』を購入してきたところ。 いつもより短めではありますが、感想を残しておきたいと思います。 「十二国記シリーズ」。その存在を知ったのはいつのことだったでしょうか。 私が産まれたのとほぼ同じ時期に刊行が始まり、それは冊子の「オ

作家の”中身”を知りたいか

こんにちは、ゆのまると申します。 週末は移動時間が結構ありまして、二冊、本を読み終えることができました。 読んだ本はこちら。 『7人の名探偵』は2017年9月刊行で、副題に「新本格30周年記念アンソロジー」とあります。1987年に『十角館の殺人』が発売されてから30年、いわゆる新本格ムーブメントの中核をなしてきた7人の作家が、それぞれの名探偵を描いています。しかも書き下ろしで! それぞれの作家をシルエットで表現した表紙も素敵ですよね。ちょっとした自慢ですが、私、このう

次の本までのインターバル

こんにちは、ゆのまると申します。 今朝起きたら雨模様。今日は一日すっきりしないお天気のようですね。四月に入ってからというもの、ぐずついたお天気の日が多く、青空が懐かしい今日この頃です。 先日、綾辻先生の『時計館の殺人』を読み終えました。 昨年の暮れから読み進めている館シリーズも、これで五作品目。すっかり綾辻ファンとなってしまった私は、「何を読んでも面白い」フェーズに移行しており、本当に幸せ者だなぁと思います。 ミーハー目線から申しますと、この新装改訂版の解説は大好きな

【読書感想文】宮部みゆき『クロスファイア』

こんにちは、ゆのまると申します。 先日つぶやいていた『クロスファイア』、ゆうべ読了しました。 宮部さんの小説は、どの作品も考えるきっかけをくれるものだと感じます。自分の中で消化しきれていない思いもあるのですが、今感じているままに残しておこうと思います。 あらすじ『クロスファイア』は、二人の人物の目を通して物語が進みます。 一人目は、念じるだけですべてを燃やす念力放火能力を持つ青木淳子。彼女はその力を持って、法の裁きを逃れた極悪人たちを秘密裏(でも結構派手)に「処刑」し

ふいうちのどんでん返しが好きだ

こんにちは、ゆのまると申します。 綾辻行人先生の『迷路館の殺人』、読了です。とっても面白かったー! ゆうべ寝る前に読んでいたのですが、その結末に大興奮でなかなか寝付けませんでした。読書していて「えっ?!」と声をあげてしまったことなんて、一体何年ぶりでしょうか……。 未読の方、ご安心ください。今回は感想記事ではありません。 というか、どんな遠回りな言い方をしてもヒントになってしまいそうで、私には何も語れません。これはぜひ事前情報を何も入れず、まっさらな気持ちで読んでもら

【読書感想文】宮部みゆき『R.P.G.』

こんばんは、ゆのまると申します。 久しぶりの宮部みゆきさん、読んだのは『R.P.G.』です。過去にドラマ化もされたこちら、また感想を記録していきたいと思います。 いつものごとく、ネタバレにはご注意ください。 あらすじ ざっくり感想 これまで、宮部さんの代表作は『火車』『ソロモンの偽証』『模倣犯』など、わりと読んできました(江戸モノを除く)。 そしてその多くが分冊になった長編であり、中でも『ブレイブ・ストーリー』は、主人公と同世代の頃に読んだこともあって私のバイブル

【読書感想文】恩田陸『Q&A』

こんにちは、ゆのまると申します。 2022年最初に読み終わったのは、恩田陸さんの『Q&A』でした。恩田陸さんの本は、『ドミノ』『六番目の小夜子』に続き三冊目です。 ということで、ざっくりネタバレ感想。未読の方はご注意くださいね。 あらすじ 舞台が日本とは思えないほど、設定はかなり派手ですね。この未曾有の大惨事に対して、どこかに所属するインタビュアーが被害者に当時の状況を聞く、という形で物語は進んでいきます。 感想 本書には地の文が一切なく、すべて対話形式で綴られて

【読書感想文】米澤穂信『さよなら妖精』ほかベルーフシリーズ

初めて『さよなら妖精』を読んだのは、穂信さんにハマった大学生の頃。 あの「古典部」シリーズと同じく、主人公は高校生。わくわくしながら手に取ったものの当時の私にはわからない部分も多く、「国際的でなんだか異色だなぁ」と、その程度の感想しか抱けませんでした。 時は流れて2021年。 ずっと気になっていた『王とサーカス』を読破した私は、同じ〈ベルーフ〉シリーズに分類される『真実の10メートル手前』、そして『さよなら妖精』を改めて読むこととしました。 ちなみに「ベルーフ」とは、