タチバナキョウコの独白②

2036年4月9日

結果から書こう。大成功だった。
確信はあった。けれど、不安が全くなかったというと嘘になる。
興味を惹かれるような雰囲気づくり。話しかけやすそうな佇まい。問いかけからの返し方。契約への誘惑。全てが完璧だったと自負している。

正直に言おう。私好みの女の子だった。
容姿の問題ではない。もちろん見た目がいいことに越したことはないけれど、そこは重要ではない。でも顔が可愛いのは好都合だった。
ギャルのように不良ではなく、かといって寡黙な文系でもない。
極めて普通で、けれど危ないことに興味がある。人並み以上の欲望がある好奇心旺盛な性格。
私の求める同志の条件にぴったりだった。
彼女の眼は濁っていない澄んだ瞳だった。知能もアホ過ぎずバカ過ぎず、且つ賢過ぎることもない。私の言うことを鵜呑みにはせず、疑いながらも納得してから理解を示す。
自分の欲求に正直で素直で、純粋。
そして優しい。
まさしく我が同志に相応しい人材だった。

一時、私が直情的になった瞬間があった。
出会って二日目の相手にぶつけるには激し過ぎる感情だった。
今でも反省している。
それでも彼女は、私の憤りを受け止めてくれた。
優しく抱きしめるように手を握りしめてくれた。
その彼女の温かさが、私にはとても心地よいものに感じられた。

なんにせよ、私にとって人生最初の同志であり、友達ができた。
元々人付き合いの馴れ合いが嫌だった私が自分から友達になりたいと思うようになるとは。
やはり通説通り、人間は一人では生きられない生き物であるということなのか。
悔しいが、認めざるを得ない。
おそらく私独りのままでは願うだけで行動には移せないまま人生を終えていただろう。
私のような孤独を愛する人間にこそ、心情を吐露できる相手というのが必要なのかもしれない。

今日の帰り際、彼女の言った言葉が今も胸の中で木霊している。

「わたし、キョウコが友達になってくれてよかった」

彼女にそう言ってもらえて、私はとても嬉しかった。

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